初夢
ある朝目を覚ました幸子は、自分が一匹の子猫になっていることに気がついた。
とても嬉しかった。
常から猫になりたいと望んでいたからか、あっさり猫である自分を受け入れて丸くなる。
窓際の暖かい陽だまりで日光浴を満喫しながら幸せを噛みしめる。
もう衣食住や将来の心配はいらない。優しいご主人さまにあまえて毎日を過ごすのだ。
そう確信して満ち足りた気分でまどろむ幸子。
ふと、視界の端で何かが動いた。反射的に目で追う。素早い。黒い。例のアレだ。
体が勝手に動いてソレに飛びかかる。爪を立てて一閃。確かな手応え。弾き飛ばしたソレに向かって、流れるような動きで肉薄。キャッチ。カリッとした歯ざわり。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
自分の悲鳴で目が覚めた。
妙にリアルな夢だった。
猫になりたいという夢が叶った夢だった。
「叶わなければ良かったのに」
重い足取りで歯ブラシを求めて洗面所へ向かう幸子は、この悪夢が2015年の初夢であったことに気付き肩を落とした。