54 無意識と意識の狭間
「げほっ……」
休息の地にたどり着く。
そこは、入り口とおなじように泡の様な物で包まれていて、中では普通に呼吸できるようになっているようだ。
俺は、『変身』を解除し元の人間の体に戻る。
正常な呼吸ができるようになり、思いっきり息を肺に入れ込む。
「大丈夫……かな?」
「おう、大丈夫だ。」
スカレアも安堵の声を上げ、地面にぐだりと身を投げた。
あのトラップ部屋があってから、部屋ひとつを調べるのにも神経を使った。
そこまで多くないと頭と理性では理解していても、感情はそうはいかず、最大限の警戒を払ってしまった。
おかげで、技能をフル活用し、脳に相当な負荷がかかった。
長らくの戦闘でだいぶ脳が鍛え上げられているとはいえ、多重使用に永続使用、即時展開を繰り返していると許容量をオーバーしかける。
軽い頭痛を覚えながら、俺も地面に体を投げる。
「……ソラ」
「ん?」
スカレアが何かを問いかけるような声を出す。
何を意図しているのか読み切れず、俺は一言だけ返した。
「このダンジョンに……終わりってあるのかな……」
「……あるかもしれないし……ないかもしれないな。無限迷宮みたいな物の可能性もあるからな」
横になっている状態だが、腰にある違和感が邪魔。
腰にずっと付けているリヒテンの形見のナイフを地面に置く。
昔はあんなに大変に感じていた重みも、すでに大したものではなく軽々と使う事ができる。
「どこまで下りれば……終わるのかな……」
「それは分からないな……」
部屋に横たわっていると……何か違和感を感じる。
なんというか……なんというか。どうにも言い表せない様な感覚だ。
横たわった状態で、俺は魔空間の袋から肉を取り出しナイフを鞘から抜く。
肉を切断しようとして、がくりと腕に軽い衝撃が走る。
「引っかかったか……」
ナイフには小さな欠損がある。
気が付いたのは、結構前だが、いつついたのかは大体予測ができた。
というか、技能の『歴史道具』を使って調べた。
欠損したのは、あの始まりの層。
『風纏』を使って壁を切り裂いたときに、『風纏』が少しだけかかっていなかった場所があったようで、少しだけかけてしまったようだ。
「……とりゃっ!」
俺は力を込めて、肉を切り裂こうとする。
だが、まったくナイフは進まず、ミシリと嫌な音がなり……ナイフはポキリと折れてしまった。
「……はぁ……」
「ソラ……」
スカレアの心配そうな声にもこたえる事ができなかった。
形見の一つ……壊れてしまったナイフに心が痛む。
あっけない最後は……リヒテンの最後のようで……
いや、リヒテンは最後まで抗った。
それでいいんだ。
砕けたナイフの破片と大きな欠片を集め、適当な袋に入れていく。
砕けた後でも、置いていくような事はできなかった。
黙々と、スカレアも手伝ってくれている。
「これで全部だな……」
最後の確認に顔を見上げ、周りを確認する。
そこで、壁にきらりと光る物を見つけた。
俺はゆったりと腰を上げ、そこに近づく。
直後……思考回路が加速した。




