5 激痛と共に
異世界の料理……どんな物が出るかワクワクしてくる。どうせ、多めに用意されているだろうからたらふく食べても大丈夫だろうし、何より味が気になる。
先導するフェリスさんに着いていった先には、たくさんの食事が皿に乗って準備されていた。これは、バイキング形式というところだろう。
よし……食べるか……
皿と食器を掴んで……食べ物の山へ僕らは直撃した。
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「食べた食べた……」
僕は、自分しかいない部屋で横になりながら呟く。宴の中では、国の重鎮らしき人々の紹介があったが食事に集中していてほとんど聞いていなかった。
異世界ならではの変わった色の飲み物や、不思議な食感の食べ物。
どれも興味深いものばかりで、とりあえず手当たり次第に食べて行ったらさすがに途中で限界が来てしまった。こんなに満腹になったのは久しぶりだなと思いながらも、食べたものの味を思い浮かべる。
今、僕がいるのは一人ひとりに割り当てられた部屋で、大きなベットに机、綺麗に装飾された灯篭に本棚まであった。本棚にあった本は知らない文字で書いてあったから読めなかったけど、少しずつ解読していけばいいかと思い一応文字の形だけは覚えた。
学習は得意だからな……
悲しい特技と思いながらも、本を解読しようとするものの何の手掛かりも得られずに挫折する。
「明日から訓練か……」
詳しい流れは明日説明すると言われたけど、何があるかは事前に知りたかった。
ちなみに、現状この世界で把握している事は少ないが一つだけ確定できた事がある。
『魔法』というものが存在する事だ。普通ではありえない事を『魔力』を消費して行えるらしい。
宴の時に、端っこで見守っていた兵士からこれだけの事は聞きだす事に成功した。詳しい事までは聞くのを忘れていたが、期待してもいいだろう。
ベットに倒れ込むものの、魔法に対する高揚感でなかなか睡魔がやってこない。暇つぶしの様に部屋の中を右往左往していろいろ調べてみる。
この灯篭もどうやって光っているか分からないからな……
どこからか電力とかを持ってきているようにも見えないし、全くの謎だ。
そこで、ふと机の下に違和感を感じた。その感覚にしたがって僕は机の下を探ると、布の袋が出てきた。
「なんだこれ?」
呟きながら、布の袋の中身をベットの上に出してみる。入っていたのは握りこぶしより少し大きいぐらいの金で装飾された二本の瓶。ピンク色の液体が入っている物と、水色の液体が入っている物だ。
中身は透き通っていて、少し輝いているようにも見える。
「なんだこれ?」
もう一度同じ言葉が口から洩れる。みるからに怪しい液体。
でも、異世界だからこういうのが常識なのかも知れないからな……
そう思いながら、僕はピンク色の方の瓶のふたを開けて匂いを嗅いでみる。ほんのり甘い香り……美味しい物だろうか。
「えぇい!物は試し!」
僕は瓶を傾けて喉に流し込む。ほんのり甘い味が口の中に広がり、僕の喉をとくとくと通っていく。それと同時に、体の芯がほのかに熱くなるような感覚がする。
美味しい。
気が付いたら瓶は空になっていて、口の中にも無くなっていた。
「飲み物だったのかな……」
体に特に変わった事はなく……と思ったところで一つの違和感に気が付く。
腕の痛みは?
ずっとジンジンと左腕から響いていた痛みが嘘のように消えている。僕は右手でかるく左腕を押したりしてみるものの、痛みは感じない。
試しに包帯を外してみると、僕のうでには傷跡一つ残っていなかった。
これは……回復薬という物なのかな。
腕を動かしてみても、痛みは全く頭に届かず完全にあの時の傷は治っているようだ。
「偶然にしても、こんなものを拾うなんて運が良かったかな」
そう思いながら、もう一度包帯を手に巻きつける。急に怪我が治っていたら、なんか抜け駆けして使っただろとか思われかねない。
――まぁ、何かを封印しているみたいでかっこいいというのもあるけど。
巻き終わり、ベットに倒れこもうとするともう一つの瓶が残っている事を僕は思い出す。水色の瓶が置いてあるところまで移動し、開けて匂いを嗅いでみる。
さわやかな感じの匂いが僕の鼻の中に入ってきた。
とりあえず、試してみるか。
そう、思って水色の液体を口に含む。すると、今度はさわやかな感じが口の中に広がる。
スポーツドリンクみたいだな。
そう思いながら一気に液体を飲み干す。口の中の液体も飲み込み、体の中に取り込む。
「さて、何が変わっているかな……」
僕は意識を集中させて、何か変わっているところがないかを探す。だが、その直後。
「ぐっ……な、何だ……」
体が中から強引に焼き尽くされるような感覚に、僕は口から悲鳴じみた声を出してしまう。
体中が燃え上がり、視界が赤く染まっていくのを感じる。さらに、体の中で新しい回路が強制的に肉を引き裂きながら繋がれ、四肢ごと引き裂かれそうな感覚が脳に届き、僕は声が抑えきれなくなる。
「グワァァァああァぁアぁアあァ!」
外まで余裕で響く声が僕の喉から悲鳴がほとばしり、喉が潰れそうになるものの、悲鳴は止まらない。
四肢を引き裂くように感じていた痛みは体内を燃やしつくすように胸や腹の辺りをなぶり続けている。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い
僕の頭の中が痛みだけで占領され、思考も完全に停止する。僕の手が机をたたき、足がイスを蹴り飛ばす。
痛みはどんどん奥底まで潜っていき、これが最後と言わんばかりに僕の心臓の辺りで強烈な痛みが走った。
「ウガァァァァギャァァァァァァァ!!!」
ひときわ大きい声は喉からほとばしる。永遠に続くかと思われた痛みは最後の強烈な痛みを残して突然消え、満身創痍の僕だけが取り残される。
何だったんだ……
少しだけ正常に動くようになった頭から、疑問が浮かび上がる。だが、そんな事を考えている暇もなく、部屋の扉が急に開かれる。
「だ、大丈夫ですか!?悲鳴が外まで響いていましたけれど!?」
入ってきたのは、メイド服をまとった女性。慌てた感じに僕を見ている。
「な、なんかこれを飲んだら急に痛みが……」
そう言いながら、僕はぎこちない動きで手に持っていた瓶をほおり投げる。ぎりぎり確認したところ、底にはまだ少しだけ液体が残っていた。
「これは……急いで、治療を!人を呼んでくるので少し待っていてください!」
そう言って、メイドは慌てた様子で人を呼びに行った。取り残された僕は、今の状況を改めて認識する。
こんな格好……無様だな……
地面に体を押し付けた状態から脱出するために、うまく動かない体を無理やり動かしてベットのふちにもたれかかる体勢になる。
そこで、慌てて出て行ったメイドがヒェライさんを連れて戻ってきた。
「こ、これは……あなた、これを飲んだんですか!?自殺行為ですよ!緊急治療の準備を!」
慌てたヒェライさんに担がれ、僕はベットに寝かされる。直後、唐突に睡魔に襲われ、僕の意識は闇に消えていった。
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