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42 炎獄の炎

あけましておめでとうございます。

魔物の結界の様な物は魔物から少しだけ離れた場所に発生していた。魔物の体自体に魔法の耐性があるわけではないと判断していいだろう。

魔物から少し離れた場所で魔法を遮断するという事。しかも、魔法を遮断する膜自体が少しだけ動いた気もした。という事は、常設型の魔法を遮断する膜が魔物の近くに浮いているという事を考えてもいいだろう。


だが、ここで一つの疑問が生じる。あの、膜の中で魔法を起こすことはできるのだろうか。中で魔法が発動できない……という可能性もゼロではない。だが、中でスカレアを石化させた光を発生させる事ができたという事から、中で発生させる事は可能という事かもしれない。


「くっそが……もっと、速く気がつけば良かったじゃねぇか……」


動かない右腕は放置。残った左腕を使って体を持ち上げ、魔物をじっと見つめる。

狙うは……行動直後の硬直時間。


「今!」


魔物が俺に向かって飛ばしてきた岩を回避して、足に力を込める。

そのまま、魔物に向かって足を蹴りだし、一気に距離を詰める。大丈夫だ……いける!


魔物が発生させている魔法耐性の膜があったのは、だいたい魔物から1mぐらい離れたところ。

魔物の攻撃まではまだ時間があるだろう。

変化を使って背中から二本の触手を出す。左腕だけでは安定しないからだ。触手を旨く操って腰に着けている魔法銃を抜いて、銃口を魔物の頭蓋骨に着きつける。


「消えろっ!」


叫び声一つ。魔法弾をゼロ距離で打ち込む。推測は当たった様で、確かな手ごたえと共に、魔物の頭がぐらりと揺れる。鮮血が飛び散り、俺の頬を濡らす。


「消えろっ!消えろっ!消えろっっ!」


リロードしては発射。リロードしては発射。敵の頭を攻撃し続けて、反撃ができないように押さえるづける。


「ギャァァァァアアァァァ!!!」


だが、これでも致命傷にはなりえないのか、叫び声をあげて魔物の体がのたうちまわる。

ついには、頭を暴れる様に動かして銃口がずれ、一発の弾丸が薄い膜にに突き刺さって砕けてしまう。


「くそがっ!」


頭の中に自分の頭が鉤爪で吹き飛ばされるイメージが流れ込む。

死んだら元も子もない。速攻で判断にしたがって、背を逸らして緊急回避を取る。

だが、攻撃直後の行動でスムーズにできず、やって来た鉤爪に頬を軽く裂かれる。小さな痛みがはじけ、死の風が頬を撫でる。


……さっき何が起きた?

小さな痛みによって思い出されたひとつの記憶。時間が止まったような感覚と共に思考回路が加速して新たな方法を導き出していく。

銃口が逸れて飛んで行った弾はどこに行った?あの弾は……魔法の膜に突き刺さって砕けた。

ということは……あの膜は外からだけでなく、中にでも通用するという事。

そして、膜の効果として推測できる限り一番確率が高いものは……魔力によって作り出された物、または魔力を伴った物は通過する事ができないという効果。

魔物が使った石化の光が膜を通ったのは今は無視すべきだろう。自分の魔力で作り出された物は通す事ができるという可能性が高いからだ。


「これだ!」


頭の中で現在持っている能力を洗いざらい出して、そのまま現状に最適な技能を選びぬいていく。

『水流』……致命傷にはならない。『氷塊』……氷漬けにしても、そのあとどうするかだ。

最後まで残ったのは……『地獄炎ヘルフレイム


地獄炎ヘルフレイム』は、効果は強い。地獄の炎と言っていいぐらいの高火力な火を手の平から一直線に発生させ続けるという単純明快な技能だ。

炎が物体に当たると、その物体を包み込むように炎が変形して、そのまま燃やしてしまうという、さながらガスバーナーが強力になったような物だ。

だが、難点として俺の腕も犠牲になる。手の平から発生するとはいえ、熱波は俺にも容赦なく届き、体中が熱風にさらされる事になる。熱いというレベルじゃないぐらいに熱い。

しかも、手のひらは燃え尽きるように痛みが襲う。火傷はしないのだが、痛みに耐えながらどれぐらい持つかは分からない。


「代償……そんなものしるかよっ!」


魔物から少しだけ離れて……左腕を突き出す。


「『地獄炎ヘルフレイム』!」


叫び声と共に、左腕が灼熱に包まれ、炎の線が手のひらからのびていく。魔物の体は炎に包みこまれ、断末魔の様な叫び声をあげ始める。


「ギャァアアァァァアアアァアア!!!」

「くっ!」


本来なら辺りに飛び散るはずの炎の大きな欠片なども、膜に阻まれて中にとどまり続ける。体だけは膜があるであろう場所から出ているが、左腕は膜の中。

手から出ている炎だけでなく、膜の中を占領した炎が左腕を直接舐めてくる。


「ぐわぁぁぁぁぁっ!」


叫び声がほとばしるのを、歯を食いしばるので強制的に止めて、炎を放出し続ける。

永遠とも思える時間が……過ぎた。

これからも宜しくお願い致します。

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