41 苦肉の闘い
如意剣は、刀身の長さだけしか変える事しかできない。太さも、大きさもだ。重量も変わらない。
だが、習得している技能の『神器一時変更』で自由にカスタムした。
如意剣は、あの白骨の書いた手紙には書いてなかったが、分類上神器に入るという事だった。
魔力を使ったカスタムだと、何になるかを決める事ができない。伸ばせる距離が長くなるだけかもしれないし、全く関係ないものが変わるかもしれない。
しかも、一度変更したら戻すことができず、さらに複数のカスタムを施す事はできないという難点もある。
だが、『神器一時変更』はある程度制限はあるものの、自由にカスタムする事ができ、しかも一定時間で元に戻ってくれる。
難点と言えば、おなじように複数のカスタムを同時に施す事ができないことと、十秒という短時間しか機能しない事だ。再使用には五分ほどかかるため連続使用はできないという難点もある
この技能は、如意剣が半分に割れてしまったときにその半分をかじってみたら習得できた。我ながら馬鹿な発想だとも思ったが、何より今役に立っている。
如意剣が半分に割れたとはいえ、伸ばしたらすぐに戻った。というか、自動で修復された。
「とりゃっ!」
如意剣を俺は前に突き出す。そのまま、カスタム機能を起動させる。思ったままに如意剣の刀身の形は変わる。
カスタムしたのは……刀身の変形条件。直線上にしか伸ばせなかった刀身が自由に動かせるようになるのだ。さらには、太さ、近くの刀身との連結も可能にする。
俺はそれを利用して……刀身を円を描くように変形させて一つの大きな盾のような物を作り出したのだ。名付けて『剣盾』。
刀身は繋がって綺麗な円盤になっているとはいえ、縁はしっかりと刃になっている。
一秒にも満たない間に完成させた『剣盾』をしっかりと構えて光に備える。
直後、魔物の目の辺りから光が周りに降り注ぎ視界が一瞬だけ白く染まる。だが、体に異変はなく完全に防ぐ事ができたと判断して、ふたたび攻撃に意識を向ける。
「ギャァァァァァアアァァッァ!」
叫び声とともに魔物が突撃してくる。鉤爪を使った攻撃だ。一瞬で判断を下し、地面を蹴って宙に舞う。
そのまま一瞬だけ『浮遊』を使って滞空時間を強制的に伸ばす。突撃してきた魔物の目の位置とほぼ同じ高さに体を持っていき、そのまま元の形に時間切れで戻った剣を構えて、一気に伸ばす。
如意剣がのびるスピードと魔物の突撃スピードのおかげか、魔物が反応したものの、わずかに逸れただけで魔物の目に直撃した。
「ギャァァァァァァァァギャギャギャギャギャァァァァァ!!!」
これまでよりもさらに大きな喚き声と共に魔物がバランスを崩して地面に倒れ伏せる。
そこを一気に狙って剣を持ったまま突撃し、その最中に『炎纏』を使って如意剣に炎を纏わせる。
敵までの距離をしっかりと測り、敵のもがき方から時間の猶予はまだあると判断する。
そのまま突撃体勢を取り続けて、一気に距離を詰める。そのまま魔物に向かって剣を振りおろそうとした瞬間……剣にものすごい負荷がかかった。
顔を動かして確認すると、虹色の薄い膜が剣を拒むように立ちはだかっていた。
「邪魔だ!」
俺は全力で剣を中に引き込もうとする。虹色のフィールドはわずかにたわみ……そのまま剣を通した。だが、纏っていた炎は消滅している。
「魔法を通さねぇって事かよ!」
魔法は使えないと選択肢から瞬間で除外し、そのまま羽の付け根に向かって刀身を伸ばした剣を振り下ろす。
だが、血が周りに飛び散り、少しばかり肉に剣が切り込んだだけで、分厚い骨に阻まれる。
「切れろよ!切れろよ!」
俺は力任せに叩きつけるものの、骨であろうところに少しだけ傷が付いただけで大した痛手にはならなかった。
「ってやばっ!?」
攻撃に気を取られていて敵の動きの事を忘れていた。即座にその場から離れようとするものの、倒れた状態から横なぎに振られた鉤爪は……俺の横腹に叩きつけられた。
「ぐはぁっ!」
体がものすごいスピードで壁に叩きつけられる。全身に強烈な痛みが襲い、右半身にものすごい熱が宿る。恐る恐る横目で体をみると……血まみれになった腕と横腹があった。
「くっ……」
右腕は動かないほどではないが、戦闘での使用は不可能と判断。冷静になって状況を把握しようとするものの、痛みという危険信号で思考回路がかき乱される。
どうにかこうにか思考を紡ぎ……目の前に見えた光景に反応して俺は即座に行動を移した。壁を足で蹴り、体を動かす。直後、さきほどまで俺がいた場所に大きな岩が衝突した。
破片が飛び散り、怪我をした部分に当たって軽い痛みが走る。それで……電撃の様なものが頭に走り……大きな博打の案が頭に思い浮かんだ。




