36 推測の後の……変貌
「とりあえず、これ」
そう言って、スカレアは一枚の乾いた肉の様な物を渡してくる。
「なんだ?これ」
「保存食として作った味付き肉なの。こんなところだから、そこまで美味しい物ができていないけど……どう?」
とりあえず、俺は受け取った肉にかじりついてみる。
「これは……旨いな」
「そう!?よかったぁ……一つ作るのに結構時間がかかったから、頑張ったかいがあったかな……これもどう?これも頑張って作ったものなの!」
そう言って、スカレアはポンポンといろいろな物を出してくる。
「ストップ。保存食なんだから、一気に食べたらダメだろ……とりあえず仕舞って……って、なんでその袋にそんなに入るんだ?」
「え?これは……一個の技能だよ。圧縮という技能を使っているの!」
「圧縮……袋の中にはいるときに自動的に圧縮されて小さくなるようになってるのか?」
「そういうこと!やっぱりソラはすごいよ!これだけで分かるなんて!」
「いや、圧縮という単語だけでなんとなく概要はつかめたんだが……というか、お前も結構能力を持っているんだな……」
「うん!頑張って集めてきたものなの!」
そう言った後、スカレアは袋から水筒と二つのコップを取り出して、水を注ぐ。
「……」
とぷとぷと注がれていく水を見ながら……俺はスカレアを観察する。
スカレアの言っている事が全て本当だったと仮定しよう。本人の言う限りでは、両親は血の呪縛という物にはかかっていなかった。
だが、生まれてからしばらくした後に、スカレアのみが血の呪縛にかかっている事が判明したというわけだ。
血を取り入れて力にする種族。これから……吸血鬼というのが連想できる。図鑑で書いてあった吸血鬼は……吸血した者を吸血鬼の眷属に変えるという事だ。
これから考えられるのはいくつかある。
一つは、小さな頃に吸血鬼に襲われて……スカレアが吸血鬼になったという説。
両親が血の呪縛にかかっていない理由も説明できる。だが、一つだけ浮かぶ疑問が……俺は吸血鬼になったのだろうか。
特に体に代わった点は……あるかもしれないが、目立った変化もない。牙が生えたわけでもないし、翼が生えたわけでもない。
意識して吸血しないかぎり、吸血鬼になる事はないとかかもしれないが、こればっかりは分からない。
二つ目は……先祖がえり。
吸血鬼だった祖先がいて……その能力が飛ばされてきたという説。
こればっかりは、起こりうるかもわからない現象だ。でも、可能性はゼロではない。
家族が呪縛にかかっていないという保証にもなるし、先祖がえりの影響で、ある程度効果が薄くなっているから、俺には感染しなかったという説明も可能だ。
三つめは……吸血鬼も何もかも関係ない可能性l。
今は……結構これの可能性が高いだろう。第三者によってかけられた……ただの呪いという可能性。
「ま、考えてもしかたないか」
「ん?どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
差し出されたコップを受け取り、喉に水を流し込む。体の熱がとけるように抜けていき、涼しさが喉を通過していく。
そこで……頭に軽い刺激が走る。
「きたか……」
「……どうしたの?」
頭の中を一瞬だけ通過する予感。技能の『気配察知』に敵をとらえたのだ。
場所は……スカレアの……後ろ十数メートル。
「スカレア!後ろだ!」
「……!?」
一瞬でスカレアが跳び上がり、こっち側に背中を向ける。
敵の姿を視認して……直後、強大な感覚がふくれあがった。
「敵……倒すだけ……」
俺が顔を覗き込むと、スカレアの青かった目が少しずつくすみ……赤くなっていく。
やさしそうな顔は少しずつ勇ましく変わっていき……これまでになかったような好戦的な笑みを浮かべる。
「あはは!あはははははは!」
狂気に満ちたような笑い声が……鼓膜を盛大に叩いた。




