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35 新しい始まり

俺は慌てて駆け寄って……そこで自分が失策を犯した事にようやく気が付いた。

これは……演技かもしれない。心配して近づいたところで襲う……という可能性も否定はできない。


だが、スカレアは襲ってくる事もなく、ただひたすらに泣き続けていた。攻撃の意思とかは……ないだろう。

ここは……


「ちょっと!泣きすぎ!ストップ!」


泣いている少女も声をかけ続けたら、少しずつ収まっていった。その間に要した時間は約十分。


「とりあえず、お前も苦労したという事だな」

「う、うん」


まだ、目が少し充血しているスカレアは頷きと小さな言葉で返す。


「とりあえず、俺も似たようなもんだから。冤罪をかけられてここに逃げてきたって言ったはずだ」

「で、でも……いきなり攻撃してきたし……」

「あぁぁぁぁ!あれは、警戒していたからで、今はもう微塵も警戒……って涙をためるな!泣くようなことじゃないだろう!」


アワアワとしてしまう。普段は大丈夫だけど、一度涙腺が決壊すると収まらなくなるタイプだろうか。とりあえず……今はこの子に危険はないだろう。


「ふぅ……ありがとう。ソラ」

「そういたしましてっと。お前も大変だったんだな」

「うん……詳しく話した方がいいかな?」

「じゃぁ、頼む」


スカレアは……悲しそうな顔をしながら、過去を言葉で紡いでいった。

生まれたのはごく普通の獣人の家らしい。

獣人は人間からは忌み嫌われているが、普通に獣人の国は存在しているらしい。そこに、スカレアは住んでいたと言った。

だが、彼女の異変に気が付いたのは生まれてから二年ぐらいたった時で、高いところから落ちてしまったらしい。その時に、本能がなせる業かわからないが体から黒い翼が生えて怪我する事なく着地できたという。

その時に、異端だという事を親が気が付き、それを必死に隠そうとしたらしい。変異種だとばれると、迫害といいうレベルじゃないほど忌み嫌われ、最悪の人生を歩むと言っていた。


能力が分かってくるものの、彼女はそれをひた隠しにしてきた。だが、ある一つの事件をきっかけにすべてが回りにばれてしまったという。

そこからいろいろな罪をなすりつけられ、親は処刑。子はもっと残酷にとダンジョン下層に転移結晶で転送されたらしい。


そこからは、命からがら生きてきたらしい。血をすすり、力を得て、食料を確保しここまで生き延びてきたらしい。


「でも……一つだけ分からない事があるの」

「何がだ?」

「戦闘中の記憶……どんなふうに戦って……どんな風に倒した記憶が……全く無いの。気が付いたら……体に少しの傷と、魔物の死体だけ。能力の使い方は無意識のうちに刻まれているのに……どうやってそれに気が付いたか、どうやって倒したかがまったく覚えていないの」

「……理由は分からないが、普通の事じゃないよな……」

「これは、私も考えたんだけど……全然結論が出なかったの。とりあえず……私の話はここまで」


スカレアも……相当苦労したのだろう。これまでコップ代わりに使っていた、錬金術製のコップを魔空間の袋から取り出して、中に魔空間の瓶から液体を注ぐ。


「これ、飲むか?」

「何?これ」

「回復効果のある水って物。とりあえず、飲んでみたら?」

「う、うん」


そういって、スカレアはコップを受け取り中身を一気に喉に流しこんだ」


「あ、甘い」

「よかった……改良には成功していたようだな」


これは、とある魔物の体の一部を入れたものだ。別に、凶悪な肉の塊などではなく、木の形をした魔物が付けていたただひたすらに甘すぎるだけの果実をいくつか瓶の中に突っ込んだだけだ。

単品だと甘すぎるどころか、味覚が破壊されそうになるようなものだから、大量どころではないぐらいの大量の水に溶かせばちょうどよくなるかとおもったのだ。


「とりあえず……お前はどうするんだ?」

「私は……これ以上一人はいや。もう、一人ぼっちでここを彷徨うのはいやなの」

「じゃあ……俺といっしょに行くか?」


とりあえず、仲間にならないか交渉してみる。生き残る可能性を上げるためにも、仲間は多い方がいい。


「……ソラの目的って何?」

「ここから出て……リヒテンを弔ってやる事……だな」

「私の目的は復讐よりも……お父さんとお母さんを弔ってあげたいの。遺骨がなくても……せめてお墓だけは立ててあげたいし」

「じゃぁ、目的は一種だな」

「うん。えっと……これからよろしくお願いします?」

「おう。よろしく」


こうして……初めての仲間ができたのだった。

二部作同時更新はきつい為、二日に一日更新。簡単に言うと、交互更新に変更します。

宜しくお願い致します。

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