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クラスメイトside05 牢と廃人に絶望を

「うっ……」


耳をふさぎたくなるような声。だけど、手を放したらハンカチが落ちてしまう。


「これは……衛生環境のかけらもないですね……」


見える牢の中にはトイレ一つだけ。ベットも毛布も何もない。

空調管理されているわけでもないのか、気温も妙に低い……

壁にはあちらこちらに血の様な染みがあり、牢の中では倒れたまま動かない人もいる。


「だ、大丈夫ですか!?」


先生が慌てて牢に駆け寄って、回復魔法をかけようとする。

先生はとある分野に特化しているが、他の魔法も初級の物なら全部使えたわね……


「あれ……効いていない!」


倒れている人を薄い光が包み込むものの、倒れている人はピクリとも動かない。

これは……


「回復魔法は……死んでいる人には効きません……」


ヒエライさんの絞り出すような声。ヒエライさんもこんなところがあるとしらなかったのか、驚愕の表情をあらわにしている。


「……ッ!ソラ!」


涼香がこのありさまを見て、居てもたってもいられなくなったのか、床を思いっきり蹴って駆けだした。

あわてて、私も追いかける。


「ま、待って下さい!」

「愛香先生。私達はこっちからソラ君を探しましょう。あちら側はあの二人に任せた方がいいでしょう」


辺りを見渡しながら、駆けだすものの、酷いありさましか見えない。こんな場所が……ずっと私達の足元にあったなんて……


「ソラ!いるなら返事して!」

「あんまり大声を出したらだめ。衛兵に見つかるかも」


涼香の注意で慌てて声を沈める。衛兵の気配はないが、用心に越したことは無いわね。

あちらこちらを走り回ってみるものの、ソラの場所が見当たらない。

処刑するなら、するで準備するのに時間が掛かるはず。さすがに、即座に処刑……という事はないだろう。

あらかじめ計画されてなかったら……


最悪の予感が頭をよぎる。国が……本当に一番の悪だとしたら……私達は何を信じたらいいのだろうか。


「こんな事を考えていても仕方がない!」


掛け声と共に、私は自分の頬を両手で軽く叩く。パチンという音と共に、思考を切り替えてソラを探す事に集中する。


「これは……他の人に聞いた方がいいかも」

「そうだわね。だれか、応答ができそうな人は……すみません」


定めたのは近くの牢にいた男の人。犯罪を犯したとは思えないすっきりとした感じの人だが、髪は乱れ、顔には大きな一本の傷跡がある。そして、服には血の跡の様な物まで……


「なんだ?また拷問か?お前らなんかに話す事はないんだが」

「えっと……そういうわけじゃないけど……って拷問?」


よく、男の人の体をみると……本来爪があるべき場所が真っ赤にそまっている……

むごい……それしか思えない。爪を……はがされたという事だろう。


「なんだ?看守じゃねぇのか。そんな身なりのいい服が一端の看守のわけねぇからな。で、お偉いさんが何の用だ?無様な民を笑いに来たのか?拷問を道楽として見に来たのか?」

「いや、そういうわけでは……」


涼香の戸惑いの声。


「いや……それにしては子供すぎるな。こんなところに何の用だ?心が壊れていないのは俺ぐらいだから話ぐらいは聞いてやるぜ。貴族の自慢話でもな。おだてるのは得意なんだぜ」

「そういうわけじゃないんです……とある人を探していて……」

「人?お前は何者なんだ?偉そうにしているわけでもないから、貴族っぽくはねぇな」


好奇の様な光が男の目に宿る。


「私達は……友人を救いに来たんです」

「へぇ、こんなところまで来たのか……国の者じゃなさそうだから……侵入者というところだろうな。実力者ってところか?まぁ、牢を破壊するのは無理だろうがな」


物は試しと、私は腰から短剣を抜き、勢いに任せて叩きつける。だが、鉄格子の様な物にぶつかる前に何かに阻まれて、武器だけが後ろに思いっきり弾き飛ばされる。その武器も、反対側の鉄格子の隙間から中に入りそうになるものの、やはり何か結界の様な物によって弾かれ、地面にカランと音を立てて落ちる。


「な、なによこれ……」

「ただの、結界だ。物が通らないように厳重警戒されているということだけどな。簡単には出られるものじゃねぇよ。まぁ、はなから捕まった時点で人生は諦めてんだ。別にいいだろう」


落ちた短剣を私は拾い上げて腰に戻す。

……ひどすぎる。


「で、だれを探しているんだ?」

「一人の私達と同じぐらいの少年。今日、ここに入れられたはず」

「おぉ、そんなやつなら見たぜ」

「本当!?」


男の言葉で一気に希望がわき上がる。ソラが……いる!


「たしか、ここから10個右に進んだところの俺の方面の牢にいるはずだ。娯楽もなにもないここではそれぐらいしか覚える事がねぇからな」

「ありがとうございます!」

「気を付けて行けよ。まだ未来があるんだから」


礼儀として一言言ってから、言われた場所に駆けだす。

ソラ……ソラ!


「ソラッ!」


中を覗き込むと……中には……濁った色の液体が入った悪臭漂う器と……


「うっ……」


部屋の端には……血だまりが広がっていた。

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