クラスメイトside04 ソラとの想い出と現実
「なにか……行く方法があるんですか?」
涼香の問いに、ヒェライさんは無言の頷きで答える。
「少し、そこをどいてもらっていいですか?」
言われるがまま、私達は腰掛けていたベットから立ち上がる。
誰もいなくなったベットに、ヒェライさんは近づき、そして縁を掴んだ。
そして、足をたわめて思いっきり引っ張ろうとする。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫……です。これでも元冒険者……ですから!」
それと同時に、ヒェライさんからものすごいプレッシャーの様な物が発せられ、ベットが思いっきり移動する。
このプレッシャー……私達よりも圧倒的に強いわね……
「これは……」
涼香がついと言った感じに声を漏らす。ベットが移動した後にあったのは……鉄のふた……だわよね。
「よいしょっと!」
掛け声一発と共に、ヒェライさんはギギギと言いながら動く蓋を押し上げる。中には……底が見えない穴と梯子。
「ここは、ソラと見つけた隠し通路です。まぁ、少ししか探索していないんですが……地下につながる事は確かなようです」
「こんなところが……」
こういう、RPG的要素に慣れていないのか、先生は小さな戸惑いの声を漏らす。
こういうのは、普通にあるわよね……ベットの下の隠し通路とか、棚を動かすとそこには隠し扉とか。
私の部屋にもあるかなと、わずかな期待が浮かんだが、今は関係ないと振り払う。
「とりあえず、入ってください。中の方が防音で安心なので」
言われるがままに私達は梯子を使って穴に下りる。中は暗く、下りてきた穴からくる光しかない。一段一段踏み外さないように歩んでいく。
「きゃっ!」
「あぶない!」
お約束と言わんばかりに、先陣を切った先生が脚を踏み外して落ちて行った。偶然ながら、底が近かったらしく尻もちを突いただけで助かったが、もしまだ下があったら大変な事になっていたわよね。
「大丈夫ですか?」
「お尻が……痛いです」
先生が涙目になっているのは見えるが、暗くて他の場所がどうなっているかはわからない。とりあえず、警戒しながら地面に足を下ろし、梯子から離れる。
続いて、涼香のような軽い足音が響き、そのあとに硬質な足音が響く。
硬質な足音は止まることなく、繰り返され、そして少し浮いたところから光が発生する。
直後、天井が光り、あたりを照らし出した。
「迷子にならなくてよかったです……前に来た時は照明の場所が分からなくて右往左往してましたから」
なにか過去を懐かしんでいるような顔のヒエライさん。手で触れている壁には……黄色の魔法陣。
たしか、私の部屋にもあった照明用の魔法陣……だわよね。
「ここからは、いろいろなところに行けるそうです。一応、食堂とか、中央広場とか、庭までの通路もありましたね。まだ、半分も探索は終わってないですから、まだまだいけるところはあると期待していいでしょう」
ヒエライさんが一通り説明を終える。確かに、周りには何本も通路がのびている。壁も武骨だけど、結界が張ってあるところとは違って、何か温かみの様な物を感じる。
でも、お城になんでこんなところが……
「ここは、謎が多いんですよ。お城にこんな場所があったら簡単に気が付きそうなのに、だれも気が付いている人はいないんです。しかも、ここだけ空間が別になっているような感じなんです。あり得るはずはないですのに……」
確かに、こんな場所を作ったら、簡単にばれそうだわね……考えられるのは……漫画とかでよくある人避けの魔法とかが使われている……とかかしら。
「まぁ、ソラ君はそんな事は気にしていませんでしたね。こっそり厨房にこの通路を使って忍びこんでつまみ食いとかしていましたからね……」
「ソラなら……やりかねない」
「それには全面的に同意」
涼香の声に一瞬で同意の意を示す。先生は、ついてこれていないのか、目をマルマルとしている。ハムスターみたいだわね。
「よく、料理人が材料がないって嘆いてましたよ……ソラ君の胃は鉄だったのでしょうか……」
「いや、金だと思う」
「いや、そこはオリハルコンでしょ」
突っ込みの連鎖に、先生の目がさらにマルマルとなる。
「って、こんなところで想い出話している時間は無いですよ!ソラ君を助けにいかないと!」
先生の声で一気に想い出話から引き戻される。たしかに、こんなところで道草を食べている暇はなかったわね。
「って、助けるのですか?」
「え、違うのですか?」
「たぶん、無理だろうと思います。檻から出すには、鍵を使うか、結界を通り抜けるか、破壊用の道具がないと全然できませんよ」
私の代わりにヒエライさんが答える。
「とりあえず、できるのは話を聞くことぐらいですかね」
「でも……行かないと始まらないですからね」
簡潔に私は答え、道を進みだそうとして……即座に止まる。
「……どの道に行けばいいんですか?」
「それが、私も悩んでいるのです」
神父の表情が一気に暗くなる。見たところ、この道は複雑そうだわね。最悪の場合……迷子で帰ってこられない可能性も……
「まぁ、迷子になる事は無いでしょうね。どこかの場所から出れば城中のどこかなので」
「そういえばそうでした……」
自分がうかつだったと、少し反省するものの、重要な事に気が付いた。
「どれぐらい……見つけるまで時間がかかるでしょうか」
私よりも先に涼香が問いかける。神父は……悲しそうな顔をした後に、
「一日や二日では終わりそうにないですね……」
「それは……」
「非常にまずい状態ですね……」
ヒエライさんの顔は、すでに暗く染まり切り、苦しそうな表情だ。
「最悪だと……処刑という可能性も……」
「処刑!?」
驚愕の声が……こだました。




