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20 RPGは夢と共に

「まったく……ソラはまだまだ弱いな……」

「お父さんが強すぎるんだよ……」


僕は、手に持った駒をパチリと盤上に置く。お父さんの王手までは一歩手前の絶体絶命。


「そういえば、またクラスの子に消しゴムを取られたのか?」

「……うん」


お父さんは、質問をしながら冷静に駒を盤上に置く。


「盗られたなら取り返さないと。奪い返さないと、いつまでも奪われる側だぞ」

「でも……なかなか言い出せないから……」


そう言いながら、僕は王を守るように駒を動かす。


「怯えていても仕方ないぞ。いつか、やらなきゃ始まらないんだ。なら、早めに取った方がいいだろう?」


そう言って、お父さんは僕が少し前に取って、今は盤上に置いた駒を取り返す。

そして、取った駒を手の平で転がし始める。


「また、お父さんもやってるの?いつもだわね……」

「あ、お母さん。お帰りなさい」

「ただいま、ソラ」


いつもの様なやわらかい笑みと共に、お母さんは手に持っている荷物を地面に置く。


「そうだ、ほら。新しい消しゴム」

「わぁ!ありがとう!」

「もう、取られたりしないようにね。一度取られたら、そのまま戻ってくる事はほとんどないのだから」

「うん!分かった!」


受け取った消しゴムを、僕は抱きしめるように腕の中に持つ。


「母さん母さん。取られた物は取り返さないといかんだろう」

「そんな、簡単に行く話でもないでしょう。取られたら戻ってこない事が多いのは事実だし」


僕の前で、軽い喧嘩が始まる。だが、他の家とは違って、言論の食い違いによる軽い喧嘩。


「じゃぁ、どうすればいいんだよ」

「簡単よ。家に突撃して、消しゴム分の何かを弁償してもらえばいいのよ」

「うわ……えげつない」

「こっちの方が、確実でしょう。まぁ、もっと簡単な方法もあるんだけどね」


一瞬だけ、悪い顔に染まったお母さんも、一瞬で真面目な顔に戻る。


「奪われないようにすればいいのよ。それも、強く、相手をねじ伏せられるように」

「なんか野蛮な気もするけどな……間違ってはいないと思うぞ」

「この子も、しっかりと強くなってほしいわね……」

「そうだな……これから辛い思いとかをしなくても済むように」

「ねぇねぇ!お父さんとお母さんは何を話しているの?」

「大事なお話よ。ソラは、あっちで遊んでらっしゃい」


笑顔で問いかける僕に、お母さんも笑顔で答える。

僕は……そのまま体を動かして扉に向かい……視界がブラックアウトした。


これは……俺の小さい頃の夢。

弱かったころの……当の昔に失ってしまった暖かい家族の想い出。











「くっ……」


呻きながら俺は起き上がる。


「久しぶりの……夢だな」


幸せの夢の裏にある、嫌な現実を頭を振る事で振りはらい、俺は現状の把握に頭を全て使う。

俺は立ち上がり、凝っていて固まっている肩を動かす事でほぐし、首も動かす。

……足?


慌てて、足を俺は確認する。寝る前までは痛くて全く動かせなかった。でも、今は鈍い痛みだけが残っているだけだ。


……これが自動身体回復……


とんでもない物を手に入れてしまったなと乾いた笑いが漏れる。

これを極めたら……相当のものだろう。


「って……いったい俺の体に何が起きているんだよ……」


一気に起きすぎた出来事に頭が混乱を起こす。

幸い、時間という物はここでは価値がないだろう。

俺は存分に考える事にした。


「えっと、この瓶を飲んだら、敏捷のステータスがバグったと。あのゴブリンと戦ったときの異常な速度もこれが原因か……」


床に落ちていた瓶を手に持ってころころと転がす。サラは嘘をついていなかった。これだけは事実として認めてもいいだろう。


敏捷のステータスにかいてある、韋駄天はたしか速さを代表する神だったはずだ。

だが、ここで問題が出てきた。敏捷……とはなんだ?

身体の移動速度が上がるのだろうか、それとも頭の認識速度だけが上がるのか。


俺が加速した時に足が痛んだという事は、瞬発力が上がったという事も考えられる。

だが、瞬発力が上がっただけで、停止のグリップ力が上がっているかはわからない。


「こればっかりは、実際に戦わないと分からないよな……」


一旦、この話をやめ、別の事を考え始める。


新しい技能が増えている。

これは、非常に喜ばしい事だ。自動身体回復はとてつもなく便利だろう。

そして……さらに新しい技能。『風纏』


確か、技能で『』が付いているのは固有技能と呼ばれて、その人独自の物が多いらしい。

……これって、いいものじゃないか?

少しだけ歓喜する心を抑えながら、『風纏』を使おうとして……壁にぶつかる。


「……どうやって使うんだ?」


いくら強い能力を持っていても、使いこなせなければ意味がない。

と、悩み始めた俺は、ふと思い出した。


左手の紋章を叩き、本を出現させる。心なしか、少しばかり分厚くなって豪華になっている。

頭の中で技能一覧と念じ、技能辞書の様な場所まで自動でめくらせる。


自分の技能の、名前、効果などが細かく記載されていて、少しばかりお世話になった場所だ。

ここからは、手でめくらないといけないのでパラパラとめくり、『風纏』のページを表示する。


「えっと……風の力を何にでも纏わせる事ができる。武器だろうと自分の体だろうと可能……効果は、軽量化、切れ味、鋭さの上昇、使い続ける事によってできる事も増える……か」


単体でも、少しばかり使える物みたいだ。期待がさらに膨らみ始める。


「使い方は……頭の中で、風を纏うイメージを纏わせたい物に対して思い浮かべ続ける……良くわからないけどやってみるか」


そう思い立ち、俺は右手を突き出して、頭の中に風を纏うイメージを思い浮かべる。

すると、腕に緑色のベールのような物が現れ、腕がものすごく軽く動くようになった。


「おぉ……これは便利だな……」


実際には攻撃力も少なく使いにくい手刀も、これを使えば武器が無くても使える攻撃手段になるだろう。


「あとは……軽量化か……なら、これが使えるようになるかもな」


地面にポツリと落ちているナイフを持ち上げようとして、重すぎて持てない事を実感する。

今度は、手をナイフに添えて頭の中にナイフが風を纏うイメージを思い浮かべる。

すると、ナイフが緑のベールをかぶる。


一旦、心の準備をするために、俺はナイフから手を放した。

すると、緑のベールは少しずつ薄くなって消えてしまった。


「触れていないとだめってとこだろうか……」


そう思いながら、もう一度ナイフに風を纏わせ、手で握る。


「せーの!」


掛け声と共に、力を込めてナイフを持ち上げる。

これまで全く持てなかったナイフが想像以上に簡単に持ち上げられるようになり、技能の効き目に驚きが現れる。

相変わらず、うでには重みが掛かり、高速で振りまわすのは難しそうだが、持てるようになっただけで上出来だろう。


「とりゃっっと」


ためしに、ナイフを使って壁を切りつけてみる。

硬い抵抗があったものの、力を込めたら切り込む事ができ、一本の鋭い線が現れる。


「あはっ……ダンジョンの壁ってめったに壊れないんじゃなかったっけ……」


ダンジョンの壁は、時間経過で戻っていくものの……あまりにも強い力に笑いが止まらなかった。

ひとしきり、俺は笑い、そして頭をリセットする。

笑うのもいいが、まだまだ調べたい事がある。


「後は……あの紙か……」


俺は頭の中であの紙に書いてあった事を思い出す。

基本機能に……カスタム機能。

そして、『憤怒』が……なんだっただろうか。


「思い出せるわけねぇだろ!あんなの全部覚えられるなんて不可能だ!」


ひとしきり、鬱憤ばらしに喚く。

すると、本が勝手にめくられ始めた。


「……またなにかあるのか?」


そう思った瞬間、いつものようにページが止まる。普通の枠が描かれたページで上には、履歴と書かれている。



==================================


『憤怒』の解放に成功しました。

特定の状況下のみの使用が可能になりました。


連鎖によって『暴食』の上級解放に成功しました。

基本機能が全開放されました。

カスタム機能が追加されました。

暴食機能の一部がオート解放されました。


『暴食』によって身体が変化しました。

新たな技能『風纏』の獲得に成功しました。

新たな技能「自動身体回復」の獲得に成功しました。


『暴食』によって獲得したものに、条件を満たしていないものがあります。

条件を満たすまでの間、体内で封印します。


==================================


「……便利すぎだろ」


口からその言葉だけがポロリと漏れる。履歴とは……なんて便利な物だ。


「とりあえず、『憤怒』は放っておいてもいいだろうな。あとは……基本機能とカスタム機能……か」


頭の中で、とりあえず基本機能と念じてみる。

すると、ページがめくれ……ない。


おい!めくれないのかよ!と心の中で絶叫しながら、考えてみる。

基本機能か……基本というぐらいだから、当たり前の物なのだろうか。

例えば、これまで合って、無かった物。

思い当るのは……あの宙に浮いていた紙だろうか。


「まぁ、放っておこう。後は、あれしかないな」


頭の中でカスタムと念じる。すると、今度こそは自動で本がめくれて謎のページが出現する。

……RPGだ。


その言葉しか漏れなかった。RPGに良くある、スキルツリー。そのまんまだった。

中心の四角には、暴食とはっきりとした文字で書かれていて、その周りには一つ一つにいろいろな文字が書かれている。

そして、左右に真ん中からのびている線は二つの四角形に繋がっていて、その二つの四角形の中の文字もはっきりと書かれている。

だが、その周りの四角形には数字が書かれていて、全くわからない状況。

完全完璧なスキルツリー。

二つに書かれているのは変わった言葉。

取込、能力の二つ。

そして、その下には数字が書かれていた。

取込の下には10という数字が。能力には1という数字が書かれていた。


「……何だこれ」


とりあえず、取込の四角形をつついてみる。すると、光を散らしながら宙に浮く紙が再び現れた。


==================================


『取込』


食べるなどの手段で取り込んだ物を、力に変えることができる。

生き物の肉を食べるとその生き物が持っていた技能などを取り込む事ができる。

また、生き物の身体情報も保存されるため、多種多様な活用が可能になる。

アイテムを取り込むと、そのアイテムの効果も引き継ぐ可能性がある。


成功確率 10% 『強化』


==================================


「……RPGだ」


つい、そう呟きが漏れる。

ここに書いてある事を読み取ると……俺は一つの結論が思い浮かんだ。


「この力があったから……魔物の肉を食べても大丈夫だったのかな……」


体を破壊する、変質した魔力を『取り込んだ』。

だから、体は破壊されなかった。


そして、新しく増えた技能。

どこかで、この緑色のベールを見た事があると思ったら……ゴブリンが持っていたククリも同じように緑色のベールを纏っていたはずだ。


「ゴブリンの力を取り込んだってところか」


という事は、ゴブリンも自動身体回復を持っていたというところだろう。

体の中の折れていたであろう骨さえも治していた力だ。頭を破壊したから治らなかったのだろうが、腕ぐらいなら治しそうだ。


「そして、この強化って何なんだ?」


そう思い立ち、俺は強化の部分をつつく。すると、『強化』の文字が消しゴムで消されるように消えていき、代わりにその上から新しい文字が一つ一つ自動で書かれていく。


==================================


『取込』


食べるなどの手段で取り込んだ物を、力に変えることができる。

生き物の肉を食べるとその生き物が持っていた技能などを取り込む事ができる。

また、生き物の身体情報も保存されるため、多種多様な活用が可能になる。

アイテムを取り込むと、そのアイテムの効果も引き継ぐ可能性がある。


成功確率 10%⇒12%(ポイント消費 1) 『決定』


==================================


「……完全にRPGだ」


こういうものは、慎重に選んだほうが得だろう。RPGの経験談から、俺は紙の『決定』以外の場所をつつく。

すると、紙は前とおなじように光のチリになって消えていった。


そして、本の方に目を移す。端っこの方には、見逃していたがしっかりとポイントの表記があった。

54という数字がしっかりと書かれている。


「54……レベルの数値と全く一緒だな」


そういえば、レベルもゴブリンを倒してから一気に上昇している。

こんな深いところの魔物だから、経験値もさぞかし豊富なのだろう。これを考えれば少しばかり無駄遣いしてもいいだろう。


「とりあえず、こっちの『能力』も見てみるか……」


そう思い、俺は能力の駒をつつく。


==================================


『能力』


????????????????????????????????

????????????????????????????????

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???? 1 % 『強化』


==================================


「……完全に謎の力だ」


???で完全に覆い尽くされている場所。

絶対に怪しい。どうせ強い力とかが隠されているとかそんなところだろう。


「えいや!」


気合を込めて強化というところを俺はつつく。同じように、文字が消しゴムのように消え、新しい文字が書かれていく。



==================================


『能力』


????????????????????????????????

????????????????????????????????

????????????????????????????????


???? 1 %⇒2% (ポイント消費 10 強化成功確率 1%)


==================================


「あ、だめなもんだ。こりゃぁ」


ポイント消費が取込の十倍に、強化成功確率が1%。

100%の持ってくるのに必要なポイントが単純計算で大体……99000。


「うん。無理だ」


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