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1 学校での現状

拙い文章ですが宜しくお願いしいます。

ハラガヘッタ。


体の中で空腹という感情だけが永遠に渦巻き、体の四肢に力がまったく入らない。

地面に這いつくばり、傍から見たら惨めな姿だろうがそんな事を気にしている暇はない。


ナニカタベタイ。


お腹の虫も完全に死んで、何の反応もない。


ニク、サカナ、ヤサイ……

ナンデモイイ……

ハラガヘッタ……


意識が体から抜けていき、視界が赤く染まっていく。


ナンデモイイ……

バケモノデモイイ……

ヒト(・・)デモイイ……


喰うというだけの欲望がバケモノを生み出す。

人間性という……大事な物を奥底に仕舞い込んで。



~~~~~~~~~~~~~~~~~



かちゃかちゃと食器がぶつかる音が響く教室。楽しそうな声があちらこちらでわき続け収まるところを知らない、給食の時間。

だが、学校には当たり前の様に仲間はずれが存在する。もちろん、この教室も例外ではない。

陰でいじめられ、表でも冷たい扱いを受ける、俗に言ういじめられっ子。自分なら偽善みたいでも救いの手を差し伸べてあげたいと思うが、それはできない。なぜなら、それは自分(・・)がいじめられているからだ。いじめられている子は、いじめられているという事実に気がつきにくいというが、それでも気づいてしまうぐらいの酷いもの。


端っこで誰とも会話をせずに、黙々と食事を口の中にほおりこんでいく。

面倒事を呼び起こしたくないので、誰ともかかわりたくないという感じのオーラを僕の体から出しておく。

だが、それにも気がつかない鈍感で面倒な人はやっぱり動き出すようだ。


「あれ、ソラは一人なの?私と一緒に食べる?」


そう言って、一人の女子が机を近づけてくる。

数少ない、僕に対して優しくしてくれる人の一人で、いじめられている原因の一つ。それが、この女子だ。名を森 花菜(カナ)

優しそうな感じに調った顔つきに、流れる様にサラサラで背中まで伸びている艶のある黒髪。

学校の中でも一二を争う可愛い子として有名な女子だ。

正確も、慈母の様に優しく、学校の天使とさえいわれている存在。


そんな子が、さえない僕に対して良く接してくるのだ。反感を買うのも当たり前だろう。

また面倒な事になったな……

この場所で同意しても、「てめぇ、なに花菜さんと同席しているんだ?ふざけんな!」という視線が突き刺さる。また断っても、この女子は止まる事がないから、逆にぐいぐい来る。

やっぱり、いつものように同席を許可するしかないか。

僕は手で許可の意を伝える。


花菜は最初から嬉しそうだった顔をさらに綻ばせ、「ありがとう」という言葉と共に机をくっつけてくる。

そして、いつも通り、「てめぇ、なに花菜さんと同席しているんだ?ふざけんな!」という視線があちらこちらから突き刺さる。

はぁ……やっぱり面倒だ……

だが、これだけで終わらない。


「なら、私もいい?」


そう言って、もう一人の女子が机を運んでくる。同じ様に数少ない僕に対して優しくしてくれる人の一人で、二つ目のいじめられている原因。

名前を、白崎 涼香。茶髪のショートカットに、低い身長。少し幼げな顔つきで、基本は冷静だ。いつも花菜と一緒にいて、少しばかりおっちょこちょいの花菜を援護している存在でもある。少しばかり変なところもあるけど……知っている人は少ない。

クラスの二大女子と言われるほど、花菜と並んで人気が高い。

もちろん、「てめぇは涼香さんまで連れていくのか!」という呪いの視線が突き刺さるというわけで、真にいこごちが悪くなるのだ。

いつも通りとはいえ、面倒だな……


給食の味もいつもと同じで、美味しく感じられない。

ただ空腹を満たすために口の中に入れているようなものだ。

量も全然足りないし……お代わりをしようにも、意地悪に他の人が全て先に持って行ってしまう。

別に争う気もないから、ボーとしているが。


適当に二人の会話を、頷きや短い言葉でやり過ごしていく。

そろそろ片付けようかなと、僕は席を立とうとする。だが、飛んでくる会話の弾丸のせいでタイミングがつかめない。どうしようかと頭の中で考えていた直後、救世主が現れた。


「相変わらず、優しいね。そんな奴にまで話しかけるなんて。でも、付き合いは考えた方がいいよ」


少しばかりイライラするセリフを堂々と公言してくる少しばかりキザな男は正上慎太。

温和ながら勇ましい顔つきに、何の違和感もなくキザなセリフも言うため女子からの人気は相当高い。

だが、その半面正義感が異常に強く、よく変な方向に働いてしまう。

俗に言う、悪を勝手に決めて自分が正義と思い続けるというやつだ。

確か、正義病とか言った覚えがある。

キザすぎてものすごい殴りたい。


今回のは、僕が悪っぽくなってる気がする。

まぁ、こういうのがこいつの性格だからもう慣れている。

ちなみに、表でいじめが起きていないのは慎太の存在のおかげでもある。


「ちょっと、その言い方はないと思う」


涼香さんが少しばかり嫌な顔をしながら、声を出す。


「でも、そいつは君たちの話を聞き流して、全く聞いてないみたいだったけど?そんなんだったら僕が話を聞いてあげてもいいけど。」


サラリとキザなセリフが入っているところから、完全に女子との会話慣れしているのが分かる。まぁ、彼女とかは作った事がないらしいが。


「そんなことはないよ。少しだけど会話にも参加していたし。ね?」

「う、うん。話はしっかり聞いていたよ」


突然流された話に僕は慌てて答える。少しだけ戸惑ってしまったけど大丈夫だろう。

慎太の顔も、少したじろいた様に感じられたが、すぐさま持ち直した。


「せめて、もう少し会話に入ってあげたら?花菜の優しさもいつまで君に対して使われるかわからないんだから」

「はいはい」


もう面倒になって、慎太の忠告を僕は適当に流して食器を片づけに行く。

やっぱり、食べ足りないな……

片付け終わり、そのまま席に戻って自由席は片付けが面倒だなと思いながら、机を元の場所にもっていき、そのまま机の中から一冊の本を掴んで教室から出ていく。

普通は、掃除の時間になるまで給食の後は外に出てはいけないが、いつもの事なので止める人もいない。もちろん、掃除もサボっている。

だれも気にしないのが少し寂しいが。

僕は近くの階段を上って、屋上への扉の前まで行く。この扉はいつも鍵が掛かっているが、僕には関係ない。すでに、お気に入りの場所なので合い鍵を作ってあるのだ。


やっぱり、屋上から出た瞬間は涼しくていいな……


扉を開けた瞬間に僕はそう思ってしまう。余計な手が入らずにゆったりとできる場所だからだ。

僕は扉の鍵を閉め、屋上の中心らへんまでは歩き、そのまま上を向いてゴロンと寝転がる。背中に冷たいコンクリートの感触が伝わり、秋のゆったりとした日差しによる暖かさと相殺してちょうどよくなる。

寝転んだ状態で、僕は持ってきた本を広げる。

この本は、今日の授業中にほとんど読み切って、読んでいない部分はあと少ししか残っていない。

今日の昼放課は図書室に本を借りに行かなきゃなと思った時、後ろの方からカチャリという音が響く。

扉はさきほど閉めたから、鍵を持っていない人は入ってこれないはず。

だから、必然的に本当の鍵か、合い鍵を持っている人。

誰が来たかは分かっているけど。


「遅かったね」

「あんたが早すぎるのよ。ソラ」


凛とした声と共に入ってきたのは、同じクラスの女子。そして幼馴染の……鈴木リナだ。


「私は変な事を疑われない様にタイミングをみて来てるのよ。なかなか大変なんだから」

「それは御苦労さん」


リナは、黒髪ぱっつんの、低身長系女子だ。行動も活発で、運動が得意で、力も強い。けど、料理が旨いという家庭的な面もある。

リナとは古くからの付き合いという事もあり、遠慮なく接する事ができる。

この関係は、いまだに誰にもばれていないだろう。ばれたら、いじめがもっと悪化するのは目に見えている。


「それで、はい。いつもの」

「おぉ、ありがとう」


リナが僕に向かって大きな箱を突き出してくるので、それを手のひらで受け取る。ずっしりとした感触が、腕に伝わり少しばかり高揚感が出てくる。

早速、僕は箱を開けて何段かになっている物を一つ一つ並べていく。全部で三段になっている。


「私がいつも作ってあげているんだから感謝しなさいよ。まぁ、慣れれば簡単だし、訓練にもなるけど」

「リナの作る料理は、いつも旨いからね。さすが、料理の道を進もうとしているだけはあるよ」


リナから渡された箱の正体は弁当。学校の給食だけでは満足できない僕の為にわざわざ作ってくれているのだ。

これぐらいの量があれば僕の胃袋は満足できるかな。


「最近は親の手伝いなしでそれだけ作れるようにもなったわよ」

「……料理人ってすごい……」

「そんなにすごくないわよ。噂だけど、何本もの包丁を同時に操って料理する事ができる人もいるらしいし」


いくつもの包丁を同時に操るというところにいつも僕の心の中にいる厨二心が刺激されるものの、意思で抑え込む。

厨二病を患っているとか思われたら、リナの事だから周りに言いふらすとかはしないと思うが、からかわれることは間違いないだろう。

僕は箸を掴んで、パクパクと口の中に放りこんでいく。本当は味わって食べたいのだが、掃除の時間にも限りがある。

もったいないな……

でも、僕はどんどん口の中に放りこんでいく。すると、気が付いたら一段目が無くなっていた。


「ほら、いつものお茶。まったく、良く食べるわね……」

「本とご飯があればあとはどうでもいい!」

「いつになっても変わらないわね……暴食ってレベルじゃないぐらい大食いだわね」


リナから差し出された水筒を受け取る。このリナが作ったお茶もまた美味なのだ。

ぐいっと一杯目を呷り、少し乾いた喉がうるおされる。

やっぱりこの味がまたいいんだよな。

そのまま、二段目の弁当に手を出す。


気が付いたら、あっという間に三段目も食べつくし、のこされたのは綺麗に空っぽになった箱。


「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」


最後に、僕はお茶を一杯、喉に流し込む。

いつも通り、美味しかったな……

食べ終わった後は大抵、虚無感が残るのだが、リナの作る弁当は食べ終わった後も満足感が残っているのがいい。


「そう言えば、最近レパートリーが増えた?」

「気付いた?それはね……じゃじゃーん!」


リナが自分で効果音を言いながら、ポケットからスマートフォンを取り出す。意外と新しい物だ。

傷一つなく、つやつやとした輝きが目にまぶしい。


「ついに!スマホデビュー!」

「持ってなかったのか……」


リナがだれかとメールとか電話をしているのを僕は見たことがなかったので、友達がいないのかと思っていた。

まぁ、僕の様にいじめられているわけでもないから友達は普通にいるのだろう。


「一応、連絡先を交換しておく?」


そう言って、僕もスマートフォンを取り出す。リナと同じ世代のものだけど、色違いだ。

ちゃちゃっと僕らの連絡先を交換して、電池を消耗しないうちにしまう。後でも使うから、充電が切れると大変だからだ。


「じゃぁ、今日もありがとうね」

「分かってるわよ。じゃぁ、また明日……っていうのも変だわね。教室でも一応会うんだし」

「じゃぁ、また後で」

「ま、それがいいわね」


別れはいつもあっさりとしたものなので、簡単に挨拶を済ませて屋上から立ち去る。

あんまり長くいて、見回りの先生とかが来たら大変だからだ。まぁ、だれもこないと思っているが。


この後の目的地は、学校の図書室。あらかじめ新しい本を借りると決めていたたからだ。

僕は、少し速足で図書室へ向かう。既に掃除の時間は終わっていて、昼放課となっている。

反対側に進む人々の間を僕は潜り抜け、やっとの事で図書室の前にたどり着く。


学校の図書室には多種多様な本がそろっているから、小さな人気スポットだ。有名な小説とか文庫本から、大量の辞典。さらには、参考書とかマニアックな神話系の本まで置いてある。

個人的には、神話系の本があるのが一番うれしい。厨二病時代は本当にお世話になった記憶がある。今もお世話になっているが。


とりあえず、いつものルートで図書室の中を僕は巡る。まずは、新刊コーナー。最近入った本の中で、まだ読んでいない本は……ないようだ。


次はいつ来るかな……


わずかな期待と共に、次の棚に向かう。小説、文庫本コーナーだ。推理本はほとんど読みつくしたし……まだ読んでいない本が少しだけあるファンタジー系の本から適当に一冊選ぶ。


とりあえず、この本を借りよう。


そう思って、僕はカウンターへ向かう。だが、途中で足が止まる。なんだか、どこかに引き寄せられるような感覚。特に、時間がないわけでもないのでふとした感覚に沿って、図書室の中を歩く。たどり着いた先は……黒歴史の溜まり場、神話系のコーナー……


なんでこんなところに!


自分の感を呪いながら、その場から立ち去ろうとする。しかし……頭の中に小さな予感がふと生じる。……後ろに面白い本があると!

周りに知り合いが誰もいないのを確認し、僕は恐る恐る近づいて棚を眺める。いつも通りの、厨二病丸出しの魔法陣が刻まれた本に、皮製のいかにもという感じの本。その中の一つに……とてつもない興味が惹かれる。ここの棚の本は読破した記憶があるが……一冊だけ見覚えのない物が混じっている。

同じようにいかにもという感じの本だが、ガチの物みたいに感じる。とりあえず、取り出して表紙を見てみる。


これは……


どこかで見た事がある生物が真ん中に描かれている。名前を……思いだそうとするものの、なかなか出てこない。蚊の様な風体の生き物が、金色に掘られている。題名もどこの国か分からない言葉で刻まれていて読む事が出来ない。

隠してある厨二病の心をとてつもなく刺激される。


これは……読んでみるしかない……意外と分厚い本を手に持ってみると、予想以上の重みが手にかかり、落としてしまいそうになる。


よろめきそうになったまま二冊の本を持って、僕はカウンターへ足を運ぶ。


「これをお願いします」

「はい」


貸し出し用のカードを本と一緒に差し出す。今日の担当の人は、厨二病時代の時から一緒で、僕の借りている本がどんな物かは把握されている。簡単の言うと、厨二病だったという事を知っている人だ。

ピッという音と共に、小説の貸し出しが完了する。残ったもう一冊の本を貸し出し処理をしようと、担当の人が本をひっくり返し、さらにひっくり返す。さらにひっくり返して、さらにひっくり返す。


「……貸し出し用のタグが見当たりません。これは、あなたの本ですか?」

「え?」


学校の本ではないという事だろうか。

おとなしく戻した方がいいのかもしれないけど……少しばかり読んでみたい気がする。

少しだけ借りても……いいよね?


「すみません、間違いでした」

「以後、お気をつけください」


二冊の本を手に持って、図書室から出る。家でパソコンを使ってこの言語とかをしらべれば、どんな物か調べられるだろう。

とりあえずやることも無くなったので、教室に向けて僕は歩み始める。だが、最悪の相手と遭遇してしまう。

僕をいじめている集団……その中の5人組だ。

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