悪魔と必死な町長さん
なんで呪われてるかというと、悪魔がいる・・・らしい。その悪魔に嫌われると、なぜか住んでいられなくなる。との噂があり、誰も買わないそうだ。
ここ10年で5回ほど持ち主が代わっているのは事実らしい。
もう、普通の家より安いけど、誰も買わず、荒れ放題。
でも、伝統的なお城なので、このままでは・・・との迷いもあり、町が地方のくじの景品にごり押したらしい。
1等は、1億円位の現金だそうなので、これはもっとずっと下のランクだとか。
・・・ちょっと感覚が分からない。
そういえば、悪魔ってどんなのだろう?やっぱりイメージとしては、黒くて、槍とか持ってる?それはバイキンマンっていうか、虫歯菌か。
角とか尻尾とか生えてて、後は、えーと・・・ちょっと思いつかないな。
でも、おととしこっそり探検した時、悪魔出なかったけどな。
あっ噴水におっきい黒いのが居たけど、別に何もされなかったし。あれが悪魔?にしては、のんびりしてたような・・・
勝手にクロちゃんって名付けたっけ。
そういえば、『クロちゃん、お城に住んでるなんていいな。』とか言った様な気がするけど。
『また来るね』とか言ったけど、まさかお城でそんなこと言ったから飛ばされたのかな?
橋の手前で眺めていると、後ろから車が来る。飛び出て来たのは、蝶ネクタイをした蝶々さん・・・じゃない、町長さんだ。
目と手を回しながら喋り倒す町長さんにちょっと圧倒されてしまった。
『あの~もっとゆっくり・・・ちょっとだけドイツ語を習ってるけど、なかなか聞き取れなくて。』
おばさんの「ドイツ語習って遊びに来なさいよー!」という言葉に乗せられて、選んどいてよかった。
「ああー失礼。お城?お城当てましたね?住んで下さるんですよね?」
そんな涙目で詰め寄られても。
『悪魔が出るんですか?』
「でま、出ませんよ。そんなもの。単なるうわさですって。」
目が泳いでますけど。噛んでるし。
まあ、とりあえず中を見せてくれることになった。・・・町長さん、鍵押し付けないで。
「マダムバタフライの親戚なら安心だ。あれも逃げて行くだろう。」
『あれって・・・』
「いえ・・・ネズミとか・・・」
『・・・ところでマダムバタフライっておばさんの事?』
「そうよ。蝶々の付いたアクセサリーや帽子が好きだから。そう呼ばれてるの。」
うん。今日も宝石キラキラの蝶々のブローチだもんね。さすが宝石商(引退)
確かにこっちの方が蝶々さんだ。
逃げてくとか言われてるのを見ると、結構いろいろやったんだろうな。勢いあるから。この人。
今も、影薄いけど大おじさんは黙って運転手させられてるしね。
「このお城は、貴族が住むために作られて、首都からは離れてるんですけど、町に電車の駅もありますし、不便なところではありませんよ~いい所ですよ~」
『住んでた貴族はどうなったんですか?』
「別の国で仕事を持っているので、お城を売って出て行きました。最近はそういうお城がたくさんありまして、ほとんどが持ち主がなく、荒れてます。でも、この町には1つしかなくて、観光に使うにも、ホテルにするにも、・・・いろいろと、まあ・・・」
『悪魔が出るんじゃあね』
「出ませんよ!迷信です!」
その割にさっきからビクビクしてるじゃん。
ガタッ「!!!ウギャー!!!」
丸い割には逃げ足が速い。