世界で起きたこと
20XX年。ある日突然、地球が震えた。
震度で言えば3程。でも、地震とは決定的に違う事が。
「はい、震源地がなかった事です。どこのプレートも移動しなかったし、火山の噴火もありませんでした。津波も全くありませんでした。」
そう、まるで、地球が身ぶるいした様な、武者震いをした様な、奇妙な振動だった。
地球にいた人全員が感じたのではと言われている。
そして、その後から不思議な事・・・ただ一つ不思議な事が起こりだした。
・・・人が消える。
それを目撃した人達は、衝撃を受けた。
今目の前にいる人が、スーッと、あるいは、パッと、消えてしまうのだ。
手を繋いでいても、一人だけがいなくなる。
瞬間移動か?宇宙人に攫われたのか?
大騒ぎになったが、次の日にはもっと大騒ぎになった。
いなくなった人が、出てきたのだ。
いや、移動先が分かったというべきか・・・
ある人は隣町、ある人は隣の国、ある人は山の反対側・・・などなど、距離はバラバラだった。
遠い人は、地球の裏側にいたそうだ。
最初は各国も、スパイかもしれない、超能力では?と疑い、調べていたが、そうも言ってはいられなくなった。
「この現象が初めて公で認められたのは、どんな事件だったでしょうか?」
「はい、2年前、世界一若い首相と言われた人が、就任演説をしている時に銃で襲われ、テレビの前から消えた事です。」
「そうでしたね、この首相は、次の瞬間、隣の国の国境付近にある、小さな町の役場にいたそうです。」
町役場の人達の目の前に突然現れたとか。テレビは大騒ぎなのに、本人は無傷で目の前に立っていたそうだ。
さて、この事件から、国際的な機関がとうとう調査に乗り出し、各国も情報を出し始めた。
そして、今分かっていることが・・・
①国、人種、年齢、性別、などは全く関係ない。
②同じ時間に同じ場所では1人しか消えない。
(乗り物は、運転手さんが2人以上乗ることが決まった)
③おおむね大人が多いが、たまに子供も移動する。
④本人に全く関係ない所ではない。
⑤とりあえず移動した時は安全。
⑥本人に不利益になるようなことは今まで報告がない。
⑦移動する時は、何かの物理的な力が働いているようだ。
(銃で撃たれる、崖から落ちる、ドアにぶつかって消えた人や、太鼓を叩いたら移動した人もいる)
⑧移動した人はなぜか納得するそうだ。
首相のおじいさんは昔その町役場で働いていて、小さい頃遊びに行った事があると報道されていた。
「そうですね。そして日本では、お寺、神社、教会周辺、民家では神棚の下・・・などが多めの為、神様の力が働いているという人達も多いですが、原因は分かっていません。遺跡や山の中なども多いようです。みなさん、GPS付の携帯電話は放さないようにしてくださいね。連絡さえつけば、国内ならすぐに迎えが駆けつけてくれますからね。」
「「「はーい」」」
その他にも、車に轢かれた子が(当たった瞬間に)近所の神社の前に現れたり、
酔っぱらった人が近くにいた人を殴ったら、酔っ払いの方が山小屋にいた、とか、
いろいろある。
それでリュックだ。
常に自分の身の回りの物を持っていないと、いつどこへ飛ばされるか分からない。
授業が終わり、「お風呂に入ってる時はいやだー」「トイレも困るよー」「プールは大丈夫かな?」
など、みんなで言っている。でも、お風呂はおぼれそうになった人が1人、トイレはおやじ狩りのおやじの方が飛んじゃったのが1人だけで、あとは報告はないそうだ。ひとまず安心。
プールは・・・幸運を祈る。
夕方、ホームルーム。
天気が悪くなってきたのを気にしながら、起立をする。
「れーい!」
バリバリッ!!
青い稲光と同時にすごい音が!
雷のスゴイ振動が伝わって来る。目がチカチカする!目の前が青い!
・・・うん。青いな・・・空が
バランスを崩して、リュックを枕にひっくり返っている自分に気付きました。