約束
遅くなりました。読んでいただいてありがとうございます。これからも精進いたしますのでよろしくお願いします。
ミックたちの行動に乃愛はびっくりして、ぱちくりと目を見開いた。
「ルース、ケント、ミックどうかしたの?」
「ノアくん、行っちゃやだー!!」
「ノア、行くなよっ!!」
「ノアー、ヤダよー!!」
乃愛は三人の言葉に戸惑った。そして、三人の前に屈んで視線を合わせて言った。
「ごめんね、それはできないんだ。私、もうここにはいられないの。ほんとはずっと一緒にいたかったんだけど、私がここにいたらみんなに迷惑がかかっちゃう。ごめんね、本当にごめんね」
「ヤダよ、行かないで、ノアくん。迷惑なんかじゃないよ。これからも一緒に遊ぼうよ」
「そうだよ、またノアとたくさん遊びたいのに、何でどっか行っちゃうんだよ」
「ノアー、どこいくの?ぼくもいくー!!」
そう言うと、ミックは乃愛にぎゅうっと抱きついた。ミックの必死な様子やルースたちの言葉に乃愛も切なくなり、そっとミックを抱き締め返していた。すると、ますますミックは強い力で抱き着いてきて、ルースたちもそれを見て、乃愛にくっついてきた。
一方、その頃のライたちはというと、乃愛にしがみつくルースたちを見て不機嫌になっている者とそれを宥めている者がいた。
「ラ~イ。相手は子どもだぞ。しかも10歳にも満たないガキで、三人のうち一人は神子サマと同じ女の子なんだけど」
「っんなの関係あるか!あいつは俺のものなのに、大人だろうが子供だろうが男だろうが女だろうが俺の目の前であいつにベタベタ触られて黙ってられるかっつーの!!」
「あ~、はいはい。あんまり独占欲が強いと嫌われるよ?ただでさえ、嫌われてるっていうのに、さらに嫌われてもいいの?」
「煩い!俺のものにあいつらが勝手に触ってるのが悪いんだよっ」
「お前、ホントに我儘っていうか天上天下唯我独尊だな。けど、その割にクライド様には掌の上で転がさられるし、フィオナ様には頭上がらない、リリアン様とルーク様には敵わないんだもんな。本当に面白いな」
「リック、てめぇ、人のことからかって楽しいのか?」
「ホントのこと言っただけじゃん。このぐらいで怒るなんて、心狭い」
「いや、普通怒るだろ。というか、あの不快な光景はいつまで待ったら終わるんだ?」
「そうだな、そろそろ時間も無くなってきてるし、急いだ方がいいかもな」
「けど、どうするんだ?あれじゃあ、簡単には離れないだろう?」
「そうだな、だったらこういうのはどう?」
そう言って、リックはライに耳打ちした。
「…はぁ?!、嫌だ。なんで俺のものなのに、そんな事しなきゃなんねぇんだよ!!」
「そうしたら、この場はとりあえず収まるし、神子サマの中のお前の株が上がるかもよ?」
「…チッ、お前、後で覚えとけよっ」
「わかった、わかった。ガンバってねぇ」
リックの言葉にますますいらいらとした様子のライが乃愛の方に視線をやると、先ほどと同じ光景が目に入ってきた。
乃愛はというと、いつまでも抱きしめているわけにもいかず、かといって突き放すこともできず、ルースたちをどうしようかと困っていると、自分の背後から不穏な空気が漂ってきた。疑問に思って首を捻って後ろを振り返ると、ライがこちらを面白くなさそうに見ていた。リックはそんな様子のライとこちらを面白そうに見比べていた。何故そんなにライが不機嫌になっているのか、不思議に思って乃愛が問いかけた。
「えっと、なんでライはそんなにイライラしてるんでしょう?」
「イライラしているように見えるか?」
「うん、わりと」
乃愛の質問に質問で返したライに向かって頷くと、ライは何か企んでる顔で聞いてきた。
「俺がイラついてる理由知りたいか?」
「…全っ然、知りたくない!」
「なんだ、残念だな」
「おい、ライ?本気でさっさとしないといつまでも帰れなくなるんだけど。そうなったら、待ってるのはエルの雷だろうな」
「…チッ、わかった」
ライの顔を見て、本能的に危機を察知した乃愛は思いっきり否定をした。ライは乃愛の様子につまらなさそうな反応をしたが、リックの言葉に嫌そうな顔で舌打ちをしてからこの話を終わらせた。そして、早く城に帰るために乃愛に提案をした。
「ノア、そんなにそいつらと別れるのが嫌なら、そのうち会えるように算段をつけてやるから、今日はもう行くぞ」
「?、どういう風の吹き回し?さっきまで一生会えない、とか言ってたのに」
「別に、そんなに別れがたいなら、と思ったから言ってみただけだ」
「また『お礼』、とか後で言い出さないよね?」
「嫌なら別にいい。お前を引きずって、ここから出ていくだけだからな」
「ま、待って。本当にいいの?これからもみんなに会える?」
「さっきからそう言ってる。それで、お前はどうしたいんだ?」
「…みんなが良いなら、お城に行ってからも、時々、会いたい。ダメ、かな?」
乃愛は言葉を探すように紡いでから、ジェナやダグラスの方を向いて聞いた。ルースたち三人は乃愛たちのやり取りを大人しく聞いていたが、話の内容から二度と会えなくなる、ということはなくなると知るとぱっと表情を明るくした。
「ノアくんとまた会ってもいいの?」
「ホントにこれからも会えるんだよな?!」
「またいっしょにあそべるの?」
三人の嬉しそうな声に、ダグラスとジェナを窺うように見た。
「えっと、あの・・・」
「もう二度と会えなくなると思ってたから、また会えるって聞いて嬉しいよ」
「そうだよ。あんたは私たちの家族なんだから、また会えるのを楽しみにしているよ」
「ダグラスさん、ジェナさん。…ありがとう」
そう言って、乃愛は二人に抱きつき、ぽろぽろと涙をこぼした。そんな三人の様子を見ていた子どもたちは、乃愛とまた会うことができるということを喜んで手を取り合ってはしゃいでいた。
次回はやっとお城に向かいます。なかなか進まない。すみません。頑張ります。