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ホーム  作者: 佐倉ゆき
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出会い

 乃愛たち四人は、食堂に向かって歩いていた。そんな乃愛たちが進む先にローブをつけ、フードを頭からかぶった人が二人、何かを話し合っていた。すると、乃愛たちに気づき、少し視線を交わすと一人が乃愛たちに近寄ってきた。


 「少し聞きてぇんだけどいいか?」


 180センチはある身長と目深にかぶったフードのせいで顔も見えず、ものすごく関わりたくない怪しい雰囲気の人だった。その証拠にルースは無意識に乃愛の袖をつかみ、ミックはルースと乃愛の後ろに隠れ、ケントも乃愛の手を離すまいと、ぎゅっと手を握った。乃愛も警戒しながら答えた。


 「なんでしょうか?」


 「そんなに警戒しなくても何もしなねぇって。そろそろ昼飯時だからどこか良い食堂を知らねぇと思ってな」


 「それなら、うちの食堂がこの先にありますけど」


 「そうなのか?その食堂に案内してくれねぇか?腹ペコなんだ」


 「えっ?でも…」


 乃愛は困ってしまい、ルースたちは不安そうに乃愛を見上げた。話しかけてきた男も乃愛たちの躊躇う雰囲気にこまってしまったようで、後ろに待たせてある連れに視線を向けた。すると後ろにいた人が近寄ってきた。そして諭すように話しかけてきた。


 「別に俺たちは怪しい人間じゃない。ただ、腹が減ったからメシを食いたいだけだ。だからお前たちは素直に食堂まで案内しろ」


 「それなら、なぜそんなフードをかぶっているのですか?こんな怪しい雰囲気の人たちを案内なんてできません」


 乃愛は男の偉そうな言い方にムッとしてキッパリと言いきった。そんな乃愛を見て、男の方も気に障ったようだが、相手は子どもということで気を落ち着けていた。だが、乃愛も男たちも一歩も引かず、膠着状態が続いた。そんな空気を破ったのはミックだった。知らない人の側にあまりいたくなかったようで、ミックは乃愛の陰から顔を出さずに言った。


 「ノア~、はやくかえろう?」


 「ミック、ごめんね。そうだね、早く帰ろうか。…これから食堂に向かうところなので、ついてくるならどうぞ」


 怯えるルースたちには悪いが、このままでは引きそうにない男たちの様子を見て、仕方なく乃愛の方が折れた。そして乃愛たちは食堂へと歩き出し、二人の男たちも乃愛たちの後をついてきた。ルースたちは不安そうに男たちに視線を向けつつも乃愛の傍を離れないようにと足を進めた。


 ちなみに男たちの方はというと、前の四人から警戒されているのを知りつつも、のんきにこそこそと会話を交わしていた。


 「すげー、警戒されてるよな」


 「ま、当然だな。怪しいのに変わりない」


 「でもよぉ、一応、お前この国の王様なのにな」


 「仕方ねぇよ、顔はフードで隠してるし、相手は子どもだからな。それにこんなところに国のトップがいるとは思わないだろ?」


 「そうだな。それにしても、あの四人って姉弟なのかね?」


 「さぁな、だがそうだとしたらあんまり似てないな」


 「だよな~。というか、あの一番大きい子ってホントに男の子か?女の子みたいな顔だよな」


 「…いや、みたいというよりは本当にそうかもしれないな」


 男は少し考える素振りを見せて、ひとりごとの様にぼそっとつぶやいた。


 「なんか言った?」


 「いや、何でもない」


 側にいる男には聞こえていなかったようで確証が得られるまでは、と誤魔化しておいた。何人もの女を相手にしてきた男の勘が訴えていた男の中にあったあの『ノア』という子どもを見た時からあった違和感が、男ではなく実は女、というふうに考えればどこかしっくりくるように思えた。


 (ま、なんにしても面白いな、あの子ども。俺の正体を知らないとはいえ、不審な人間に歯向ってきたことといい、暇つぶしの相手くらいにはなるかもな。それにもしかしたら、『探し物』ということも考えられるだろうしな)


 乃愛の自分へと向けられた真っ直ぐな眼差しを思い出して、乃愛が聞いたら激しく抗議するだろうことを男は楽しそうに考えていた。



 乃愛がマンセル家の一員になって、一週間経ったが、乃愛は自分がこの世界ではなく別の世界から来たことや性別が女であること、本当は今年17歳であること、という自分の素性に関することについて話せずにいた。乃愛も最初は家族同然に接してくれる優しい人たちに本当のことを話すことも考えたが、マンセル家に初めて案内された日に街で聞いた話がそれを止めた。


 あの日乃愛たちが食堂を出て歩いていると、街のあちこちである噂が流れていた。それを聞くともなしに聞いていた乃愛は愕然とした。聞こえてくる噂は『神子』に関することだったのだ。神が再び神子をこの国の王に授けられたとか、王の妃は神子様で間違いないとか、自警団も王の近衛兵も神子の行方を探し回っているとか、王に気に入られたのなら帰ることは叶わなくなるだろう、といった噂が飛び交っていたのだ。そして、過去にこの国に来た神子たちがもれなく黒髪黒目であること、当時の王の妻となったことも聞いた。


 その話を聞いた乃愛は、誰にも話さないことを決めた。とりあえず、今の格好は男の子に見えるようだから間違っても、神子と思われることもないだろうし、、神子とばれたら親切にしてくれるマンセル家に迷惑がかかる。それに、まだ元の世界に帰ることを諦めたわけではないのに一生を王のもとで暮らさなければならないというのは冗談ではなく、帰るという望みを絶たれてしまうだろう。なので、身寄りも行くところもない子どもということにしてある。ちなみに年は11歳と言ってあり、最初のころ、ジェナに「10,11歳くらい?」と聞かれたからなのだが、11歳と言ったのはなるべく実年齢に近づけたかった乃愛の小さなプライドの結果である。

編集してます。


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