プロローグ
プロローグ
どうして結婚をすれば幸せなのか。誰が決めたのだろうか。
たぶん、私は幼馴染の林太郎のことは好きだと思う。なぜなら、この村で一番私を応援してくれて、わかってくれるからだ。
でも、結婚したら、何かが終わってしまう気がした。
何が終わるのか。
私自身が変わるのか。それとも、社会的に私に求められるものが変わるのか。よくわからない。けれど、それは鎖のようなもので、私が飛び立つのを阻むような気がした。
結婚するって、何なんだろう。私が結婚すると家が繋がる? 私がしたいことなんだろうか。
自問自答する。
結婚しても私は私であるはずだ。
でも……。私が私である可能性がなくなる気がしているから、こんなに胸が晴れないにちがいない。どこかで納得していないのだ。
村の女性のように、結婚して、子どもを産んで、育てて、家事をして……。
それって、私のやりたいこと?
違っていると頭の中で警告音が鳴っていた。
それならば、一体どうしたらいいのか。それもわからない。
逃げればいいのか?
たぶん、だめだ。普通に逃げても、村からも、九州からも逃げられないだろう。
もっと遠くへ。もっと遠くに行かないと。
たくさん本が読めるところがいい。
できたら、もっと勉強ができるところに行きたい。
どうして父は結婚を決めてしまったのだろう。
使用人がどんどん私の顔に化粧を施していく。
この顔は私ではない。
鏡に映る自分が気持ち悪かった。
婚礼衣装の重さで自分が潰れてしまいそうだった。
陸で溺れそうなくらい胸が苦しい。
もしも海の向こうに行けたら、きっと私らしく生きられる。
口を一文字に閉じる。
頭の飾りも、高価な着物も、お父さんや兄さんたちの期待も、全部重かった。
やっぱりこのまま結婚するのは無理だ。
できない。
「林太郎。私、結婚できない。今、結婚したら、何か変わってしまう気がするの」
頭を下げた。
林太郎は傷ついた顔をしていた。
そんな顔をさせるつもりはなかった。
林太郎のことは、好きだった。
でも、本当に申し訳ない。
林太郎、ごめん。
お父さん、兄さんたち、ごめん。
美緒は必死に走った。
青い海は穏やかで遠い地平線に雲が浮かんでいた。
どこに行ったらいいのだろう。
遠くに行きたい。
とりあえず逃げないと。
逃げられる場所は……。
一つしかない。
「あれ、石田さんちの美緒ちゃんじゃねえか?」
「結婚式はどぎゃんなったと?」
「でも、あれは……、花嫁、逃げたっちゃなかと?」
村人たちは指さした。




