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神代の英雄  作者: 朧 夕映
西側諸国
3/22

パーティ結成

「ねえねえ、そのガントレット見せてくれない?」


 まず、ライナが興味を引かれたのは、ディオンの腰にかけられた真っ赤なガントレットだ。ところどころに傷がついているがきちんと磨かれていて、とてもきれいだった。


「いいよ。はい。」


 ほいっと渡されたガントレットは見た目の割に重くなかった。シンプルな作りで、無駄なものを取り払った無骨な印象を受ける。表面には何本かの線がはしっていて、ライナがはめてみるとぶかぶかで、ディオン専用の大きさになっていた。


「きれいだね。長く使ってるの?」

「まあ、それなりに。愛着はあるな。」


 優しい手つきでガントレットを腰に戻すディオン。その姿をみてそういえば、と思い出す。


「そういえば、ディオンは荷物どうしてるの?最初見たときに思ったんだ。旅、してるんだよね?」

「ああ。人生のほとんどを旅している。荷物はほら、これに全部入ってる。」


 ディオンが右手を見せてくれる。手には何も持っていなくて、言ってる意味がわからない。


「...なんにもないけど?」

「これだよ。」


 ディオンが見せていたのは、指輪だった。褐色の肌に映える、細くて飾りも何も無い銀の指輪。これまたきちんと磨かれていて、とてもきれいだ。


「この指輪には収納魔法が付与されているんだ。ここに食料や武器も入ってる。」


 ライナのリュックの上位互換みたいなものだろか?想像もできないが、この指輪が魔法具だと言うことは理解した


「え?!じゃあこれって魔法具?!めっちゃ貴重なやつじゃんか!」

「魔法具...そうそう、魔法具。珍しいのかな?」

「珍しいとかじゃないよ、超貴重なやつだよ!いいな〜。どこかで発掘したの?」

「あ、いや、そういうんじゃないんだけど...なんていうか、貰い物、かな。」


 何だがふわふわした回答を続けるディオン。ますます不思議な人だと感じた。


「指輪してたらガントレットを装備したとき邪魔にならない?」

「この指輪はちょっと特殊なんだ。ガントレットを装備すると、指輪とガントレットが一体化する。だから戦ってる間は気にならない。」


 頭がくらくらした。そんな小細工が施された指輪とガントレットの値段を想像しただけでめまいがする。


...もしやディオンは王族とかそっち系のお貴族様の家系なのだろうか?


「言っておくが、どちらも貰い物だ。」


そんなライナを見て苦笑したディオンがそう付け足した。



 野営の夜。静かに焚き火が揺れている。少し距離を置いて、ライナはディオンの隣に座った。


「ねえディオン。どうして旅をしているの?」


 そう聞くと、ディオンはそっと指輪を撫でながら静かに言った。


「...探し物を、してるんだ。」

「探し物?」

「ああ。昔、果たせなかった約束があってな。...俺は、その約束を果たすために、歩き続けているんだ。」


 約束。それはきっと、ディオンにとって大切なものなのだろう。言葉を紡ぐディオンの横顔には、後悔の色が滲んでいる。焚き火の薪がパチっと爆ぜ、炎が揺れた。


「ディオンは、これからどこに行くの?」

「...俺の目的地は西の果ての魔王の城。そこで、約束をしているんだ。」

「え?!私達、目的地は一緒なんだ。」

「...ライナも?」


 驚いて目を丸くするディオンに、ライナは少しの沈黙の後、ポツリと言った。


「...私はね、英雄になりたいんだ。」

「英雄...。」

「小さい頃からの憧れなんだ。人を助けたり、強い魔族を倒したり、みんなの平和を守る。それって、かっこよくない?」


 ライナは膝を抱えて、真剣な表情で呟いた。

 昔、夢を笑われた記憶が蘇って怖かった。けど、この人はきっと、大丈夫。


「私も、誰かの平和を、笑顔を、守れる存在になりたい。......笑わない?」


 そう言うと、ディオンは静かに目を細める。


「笑わない。誰かを守りたいと言えるのは、強さの証だ。誇れ。」

「な...ありがと...。」


 自分の言葉を否定せずに、まっすぐ見つめるディオンの瞳がなんだかこそばゆくって...。ほんのり頬を染めながら、照れ隠しで言葉を紡いだ。


「だ、だからね、私は強くなりたいの!これから沢山修行して、最後は魔王を倒すんだ!」


 ぐっと拳を握ったライナを、ディオンはどこか懐かしむような瞳で見ていた。

 がばっとライナは立ち上がる。そしてまっすぐ、ディオンを見た。


「よかったら、ディオンの力を貸してほしい。ディオンは強い。魔王を倒すためには、ディオンの力が絶対に必要になると思う。もちろん、ディオンの探し物も手伝う。」

「...どうして、俺が必要だと思うんだ?」


 腕を伸ばして、手を差し出す。


「ディオンは、私が今まで見てきた人の誰よりも強い。根拠はないけど、私の感が、ディオンを連れて行けって、言ってるんだ。」


 ディオンからはただならぬ気配を感じた。昔から感が良かったライナは、自分の直感が正しい事を知っている。


「それに、自分の夢を笑わない人を好ましく思うのは当然でしょ?」


 きっぱりと言い切ってディオンを勧誘するライナ。それをみたディオンは小さく笑って立ち上がる。眩しいものを見るような表情のディオンが、すっとライナに手を差し出した。


「...ありがとう。」


 そして、ライナは大きくて硬い手とぎゅっと握手した。


「一緒に行こう、ライナ。お前が目指す、英雄のところへ。」




「ねえ、本当にいいの?私のテントに入ってもいいんだよ?」


 夜、テントを出して寝る準備を整えていたライナは、ディオンがなんの準備もしていないことに気付いた。聞けばディオンは毛布一枚で地面に横になって寝るんだと。


「もうずっと、こうやって寝ているから。危険はない。」

「流石に結界は張ってるんだよね?」


 ディオンが寝ようとしている地面は、ライナの結界の魔術具の効果範囲の外だ。流石に心配すぎる。朝起きたら出会ったばかりのパーティメンバーが死んでいる、なんてことはやめてほしい。


「もちろん。」


 そう言っているが、実際のところ、結界の魔術具は見当たらない。本当に大丈夫なんだろうか?さっさと毛布にくるまってしまったディオンを放ってはおけず、ライナは自分の結界の魔術具を動かして、ギリギリ自分とディオンは結界内に入るようにして寝た。



 

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