旅の途中
途中でカルディアを観光して、1日かけてアストラディアの国境付近の村、エルデに着いた。国境付近だからか、中々に大きな村だ。
「うひー、寒いっ!」
到着が早朝なので、まだ太陽が登りきっていないために寒い。冷たい風が頬を刺す。
地面には霜が降りていて、吐く息が少し白い。南の方しか知らないライナは初めて見るのでとても気分が上がる。土を踏むと何かがサクサクしていてとても楽しい。
「流石に寒いな。」
「首になんか巻くとあったけえぞ〜。」
ゼルンは深緑色のマフラーを巻いている。ライナもそれに倣って、購入した赤いマフラーをぐるぐると巻いた。ハルデンクライスで買った防寒具を着込めば、動きにくいが暖かい。
「ここから針葉樹林を抜けた所に帝都・ヴァルミアがあります。街道を歩いていけば1週間程で着くでしょう。」
「よし、じゃあなんかあったけえもん胃に入れて出発するか。」
「そうだね。お腹空いてきたかもー。」
腹ごしらえをして、ライナ達は帝都を目指して街道を歩き始めた。
整えられた街道を1日歩いて、火が傾く前に今夜の野宿の場所を決めた。街道を逸れて、少し開けた場所に荷物を置く。ゼルンがカバンから釣り竿と桶を取り出した。
「っしゃ、んじゃあ俺とディオンはそこの川で釣りしてくる。」
ゼルンとディオンがいつもの役割分担で動き始めると、フィオが居場所を無くしたような困った顔をした。
「...あの、ここで寝るのですか?」
「うん。」
「......地面に?」
ライナは1人用のテントを立てているが、ゼルンとディオンは寝袋を出しただけだ。それを見たフィオは開いた口が塞がらない。一時期は2人ともテントを使っていたが、毎回出すのが面倒になったようで、いつの間にかやめていた。
「ああ、フィオは野宿初めて?」
「はい。...私は、どこで寝れば...?」
「ディオンのテント...は危ないから、ゼルンのテント借りればいいよ。フィオは結界を張ってくれる?」
「わかりました。」
もしものために、結界は欠かせない。ライナの結界の魔術具は結局修理不可だったので、それ以来ディオンが結界を張る係だった。これからはフィオもいるのでありがたい。
「ディオン達が帰って来る前に火を起こして、調理の準備をしよっか。」
「ちょ、調理?」
「そう。やったことない?」
「ええ...。」
フィオはずっと、各国の宮廷や貴族の屋敷を転々としていたので、調理をしたことがないらしい。昔に旅を少ししていたが、ずっと宿に止まっていたのでまともにキャンプをしたことがないそう。ライナは旅をした頃を思い出した。何をしたら良いのかわからない不安は、よく分かる。
「最初は慣れない事ばっかりだろうけど、ちょっと経てば楽しいよ。まずは一緒に火起こし、やってみよう?」
「分かりました。」
ディオン達が釣りから帰ってきた。ゼルンが満面の笑みで桶をライナとフィオの足元に置く。
「嬢ちゃーん。魚6匹も釣れた〜!」
「釣りのコツを掴んできた。ゼルンは筋がいい。」
ディオンが嬉しそうに笑う横で、ゼルンが置いた木の桶を、フィオが覗き込む。水の中を泳ぐ魚を見たフィオがひっと息を飲んだ。
「んだお前、見たことねえの?」
その様子を見たゼルンがちょっと意地悪な笑みを浮かべて、桶をつついてフィオをおどかして笑う。そんなゼルンの背中をライナはポンポンと叩いた。
「フィオ、キャンプ初めてなんだって。ゼルンのテント貸してくれない?フィオが使うの。」
「あいよ。」
ディオンに教えられながらフィオがテントを立てているうちに、ゼルンとライナは調理を始める。魚を〆て、ライナは野菜と調理器具をリュックから取り出した。
「フィオが初めてだし、シンプルに塩焼きかな。よくやるし。」
「そうだな。2匹は干物にしよう。」
頭がついたままで串に刺さった魚の塩焼きを、フィオは眉を寄せてつついた。見たことない物を注意深く観察しているようだ。
まだ見慣れたスープから口を付けるあたり、フィオらしいなと思う。
「これ...食べ物ですか?」
「おいしいよ。魚の塩焼き。内臓は苦いから、残してもいいよ。」
ゼルンとディオンは慣れた様子でもぐもぐ食べている。ライナは子どもの頃から食べているので、内蔵もほろ苦くて美味しいと思うが、初めて食べるフィオは無理かもしれない。
「ん、うまいな。越冬のためか?脂乗ってんなあ。」
「レモンでも絞れば良かったね。ちょっとくどいかも。」
「いい焼き加減だ。」
3人が美味しそうに食べる様子を見ていたフィオも思い切って魚を一口食べた。すると食べる前の苦々しい顔が、一瞬で輝いた。目を丸くして、魚を見つめる。
「っ...!......美味しい...。」
「でしょ?」
「塩だけなのに...。どうしてこんなに旨味が?身もふっくらしているし...。」
どうやら宮廷暮らしだったフィオにも魚の塩焼きは気に入って貰えたようだ。ぶつぶつ何かをいいながら、観察して食べている。
ライナは2人と目を合わせてくすっと笑った。
食後、フィオが唐突にお湯を沸かし始めた。
「フィオ?」
「何してんだ?」
何をやっているのかわからないライナとゼルンと、同じように戸惑いを浮かべたフィオも首をかしげた。
「食後の紅茶と甘味の準備ですが...?」
「はあ?」
ゼルンが呆れた声をあげる。ライナも同じ気持ちだ。フィオもキョトンとしてこちらを見ている。
「食後に甘味だあ?何言ってんだお前。」
「そちらこそ。食後は紅茶と甘味で一息着くのが普通です。」
ゼルンとフィオが言い合いになりそうなのを見たディオンが両者の間に入って肩をポンと叩いて止めた。
「2人とも、落ち着け。フィオのそれは上流階級の常識だな。ハルデンクライスの王宮の朝食後に紅茶が出てきただろう?甘味と紅茶は、上流階級ではあって当たり前のものなんだ。しかし、王宮に居たフィオは知らなくて当然だが、砂糖はとても高価なもので冒険者の甘味は主に蜂蜜なんだ。」
ディオンの言葉を聞いたフィオが目を見張った。驚くフィオに、ディオンがフィオを落ち着かせるように静かな声で説明する。
「蜂蜜だって、そう簡単に手に入らないし、高価なものだ。特に北側諸国では養蜂なんてできないから、余計に甘味は手に入らなくなる。紅茶の茶葉も、同じく高価なものだ。...リュンフェルトで買ったクッキーは、食べてしまったのだったか?」
精製されていない黒糖とはいえ、普通に平民の店でクッキーが買えたリュンフェルトは、ある意味裕福といえるかもしれない。
「あ、うん。ていうか、ディオンがほとんど食べちゃったんだよ。」
「...そうか。...まあ、そういう事だ。」
「そんな...。甘味も、紅茶すら手に入らないと...。」
沸かしたお湯を見つめて絶望的な顔で落ち込むフィオの背中を笑顔のゼルンがバシッと叩く。
「手に入らないわけじゃねえ。高価だっつってんの。毎日は食べれねえが、日々の楽しみとして買っとくのは悪くない。依頼をこなして、金貯めて買えばいいんだよ。」
以前は甘味なんてお金の無駄だと思っていたが、クッキーを買った時に、甘味はお腹だけではなく心も満たしてくれる事を知った。なんだかんだみんな甘味は好きだし、蜂蜜くらいなら、買ってもいいと思う。
「紅茶はヴァルミアでも親しまれていた。今でも、帝都に行けば売っているのではないか?」
「そうだね。私もあのいい香りのお茶は好きだから、あったら買っとこうね。」
「...はい。」
フィオが沸かしたお湯は、布を温めて体を拭くために使われた。
「クシュン!!」
帝都を目指して歩いて2日。ライナはくしゃみが増えた。3人には言っていないが、実は朝から喉が少し痛い。フィオとディオンが地図を見ながら前を歩いてくれているのでライナはそれについて歩くだけだが、寒いと体力が削られるし、ライナが長く暮らしていた国はずっと暖かい気候なので単純に慣れていない。
時々咳をしながら歩いていると、横を歩いていたゼルンが心配そうに顔を覗き込んできた。
「嬢ちゃん、調子わりい?今日は早めに休憩にするか?」
「ううん、大丈夫だよ。もうちょっとで村だから、そこまで行こう。」
そう言っても、心配そうな顔のゼルンは自分が被っていた毛糸の帽子をライナに被せた。寒さで痛い耳も帽子が覆ってくれて、とても暖かい。
「しんどくなったら言えよ。」
「ありがと、ゼルン。」
「こりゃあ、だめだな。とりあえず寝とけ。」
野宿をして、寝て起きたら嬢ちゃんはしっかり熱が出ていた。今はテントの中で寝袋に入って、その上から何枚か上着を被って寝ている。冷たい布を額に乗せているが、顔は火照って苦しそうだ。
「そっちは?」
「ディオンも無理そうです。」
そしてもう1人、嬢ちゃんの他に寝込んでいる奴が。今まで全く具合悪い素振りを見せなかったディオンだ。ディオンは、地面に寝袋1枚で横になっている。顔色が悪いが、よくわからない体調不良だ。
「おいディオン。お前はなんで倒れてんだ?」
「ん〜......なんか、気持ち悪い。 ...変な感じ。」
「熱はなさそうです。咳もありませんし...。」
ディオンの熱を計っていたフィオが首を傾げる。
「風邪ではありませんね。何か食べ物に当たったのでしょうか?」
「んー。なんにせよ、熱出てる嬢ちゃんを、んなさみいとこに寝かせとくわけにはいかねえ。村に急ぐぞ。」
「そうですね。2人を背負って...半日歩けば着くでしょうか?」
それを聞いて、ゼルンは眉を寄せてフィオを見る。戦闘に加わらないフィオに体力があるとは思えない。
「お前、人背負って長時間歩ける体力あんの?」
「う......。が、頑張ります。」
ゼルンはため息をつき、テントの片付けをしから寝ているディオンを背負った。
「俺がディオン。お前は嬢ちゃんな。とりあえず歩くぞ。」
「は、はい。」
ディオンは自分と同じくらいの身長で、ガタイがいい。故に、結構重い。
ゼルンは軽量の魔術具をディオンに持たせた。いくらか軽くなったので、持っていけそうだ。
もたついていたフィオもなんとか嬢ちゃんを背負えたから、2人は街道を歩き始めた。
「...ゼルンは、どうしてこの旅をしているのですか?」
「急に何だ。」
街道を淡々と歩いていると、隣を少し遅れて歩くフィオが話しかけてきた。こちらを探るような視線を送ってくる。
「...ライナが持っている剣からは、妙な魔力を感じます。会話から察するに、このパーティの中心は彼女なのでしょう。彼女が魔王討伐のためにディオンやゼルンをこの旅に誘ったのでは?」
なるほど、中々に頭が回るようだ。
けれど、フィオの質問の意図がよくわからない。少し警戒しながら答える。
「当たりだ。俺は嬢ちゃんとディオンに誘われた。俺にも目的があるからな。」
「利害の一致、ということですか?」
「んー、まあ。」
最初はそうだった。エルフであるディオンの知識が欲しくてダンジョンの深部へついて行った。その深部で英雄の剣を見つけて、自分の生い立ちを話して、「自分と同じ思いをする人を増やしたくない」と言って一緒に旅に出た。
けど今は、自分のことだけじゃない。2人の事が大切だ。今まで自分勝手に生きてきたゼルンにとって、2人はかけがえのない友になった。これから魔族との戦闘が増えて、命の危険もあるだろう。そんな時に、自分が彼らの側で共に戦わないなんて考えられない。
要するに...
「...俺はディオンとライナが好きなんだ。」
気付いた時にはポロッと本音がこぼれていた。
ゼルンの背中で、フィオとゼルンの会話に耳をすませているディオンに、ゼルンは気付かない。
「......よくもまあ、そんな恥ずかしい事を...。」
自分から聞いたくせに、ゼルンの言葉を聞いたフィオが顔を反らした。その反応に、ゼルンは一瞬で顔が赤くなる。ブワッと体中の血が沸騰したようだ。寒さで赤らんだでは済まされない色になっている。
「っ、お前っ!」
今すぐぶっ飛ばしてやりたいが、互いに病人を背負っているのでそれはできない。フィオの反応で恥ずかしさが大爆発だ。
「くそっ!」
結局その場で悪態をつくだけに留まった。いつか絶対に仕返ししようと心に決める。フィオを睨みつけて、恥ずかしさを紛らわせるためにやや早足で歩いていると、背後から低い、少し掠れた声が聞こえてきた。
「俺は嬉しいぞ、ゼルン。」
「ひっ!!」
不意に耳元に聞こえたディオンの声にゼルンがビクッと体を震わせた。恐る恐る首をひねると、少しニヤけたディオンと目があった。1回冷めた熱が、また上がってくる。
「ディオン、お前っ、聞いてやがったのか?!」
「...聞こえてしまっただけだ。」
「聞いてたのかよ!」
恥ずかしすぎてゼルンはまた耳まで真っ赤になる。それを見たディオンにも伝染して長い耳がほんのりと赤くなる。そして赤くなる2人を見ていたフィオもなんだか恥ずかしくなって頬が赤くなる。
一瞬で、男3人が照れていると言う意味不明で気持ち悪い空間が出来上がってしまった。
「くそっ。くそすぎるっ!」
結局、フィオの質問の意図はわからないままだし、醜態を晒しただけなような気がする。ゼルンは悪態をつく事しかできなくなった。
変な空気は、瞬く間に冷たい空気によって霧散した。歩いている途中で雪が振り始めたからだ。嬢ちゃんが元気だったら、飛び跳ねて喜んでいただろう。
早足で淡々と街道を歩いていると、やっと村に到着した。宿場村のようで、街道沿いに宿と食事処が多く立ち並んでいる。
「こんばんは。旅の者なのですが、仲間が熱を出してしまって...。」
フィオが受付でそう言って、氷水やら暖かい布団やらを用意して貰った。暖かい室内にディオンと嬢ちゃんを下ろすと、肩の荷が降りた気がする。
とりあえず、体調を整えられる場所に来る事ができた。後は2人の体調が回復するのを待つだけだ。
「よーし、んじゃあ今夜はよろしく。」
看病は交代制にして、妙な反応をしやがったフィオにその日の看病は任せた。何か言いたげなフィオを無視して、ゼルンは1階にある酒場に向かった。
「ん〜。」
熱で倒れたライナが目を覚ますと、暖かいベッドの中にいた。背負われて村に向かったのは覚えているが、どうやら無事に着いたようだ。カーテンの隙間から差し込む細い光を見ていると、反対からディオンの声がする。
「おはよう、ライナ。」
「はよ〜。」
隣のベッドで本を読んでいたディオンが、カーテンを開けてくれた。外は天気が良くて、とても明るい。
ちょうど第2時鐘が村に響いた。
部屋には質素で、ベッドが2つ並んでいるだけで、他は椅子が一脚あるのみ。荷物は床にまとめて置かれていて、ディオンのベッドには魔導書が沢山散らかっている。
「体調はどうだ?」
「まだちょっとだるいかも...。」
「フィオを呼んでくる。確か薬を調合してたはずだ。ああ、なにか食べられそうか?」
「うん...。」
ディオンに呼ばれて来たフィオが、調合した薬を飲ませてくれる。ほんのりと苦みのある薬を飲んで、柔らかく煮た大麦の粥を食べて、ライナは再びベッドに横になった。
「お粥と薬も飲んだのでしばらく休んでいれば、いずれ回復します。」
「ありがと。ごめんね、こんな時に。早くアストラディアに行かないといけないのに...。」
「気にしなくていい。ここからまた歩くから、しっかり休め。」
「ありがと〜。」
再び眠りから覚めた時、フィオがベッドの横に居た。ライナが目を開けると、顔を覗き込んでくる。ヒヤリとしたフィオの手が額に当てらた。
「熱は...下がってきましたね。少し待っていて下さい。」
「え、あ、フィオ?」
引き止める間も無く、フィオは部屋を出て行ってしまった。外はすっかり日が落ちて暗くなっている。ひどく静かな部屋に1人で寝ていると、なんだか心細くなってくる。なんだか久しぶりに感じた気持ちだ。最近はずっと、近くに誰かがいたから...。
何をするわけもなく、天井をぼーっと見つめていると、木のお盆に食事を乗せたフィオが戻ってきた。
「起き上がれますか?」
「あ、うん...。」
まだ若干体が重いが、ライナはゆっくりと体を起こす。枕を背中に挟んで、ベッドの上に座った。
「蜂蜜湯です。どうぞ。」
高価で、特に北側諸国では希少だと思っていた蜂蜜が出てきたことに驚く。
「蜂蜜?売ってたの?」
「はい。...蜂蜜が想定より高価で驚きました。」
「んふふ。でしょう?わざわざ買ってきてくれたの?ありがとうね。」
そう言うと、フィオはそっと視線をライナから反らす。
フィオが渡してくれたコップからは湯気が出ていて、飲みやすい温度に調節されていた。
「いただきます。」
蜂蜜湯は、ほんのり甘くて、ちょっぴり生姜の味もする。飲んだらなんだか体がポカポカし始めた。
「うわあ、これ美味しい...。なあに、これ。」
「私が子どもの頃、母が作ってくれていました。蜂蜜湯に生姜と、レモンが入っています。...こちらもどうぞ。」
フィオがまた、大麦のお粥を持ってきてくれた。さっきよりも塩が効いてて美味しい。
「ん〜〜!美味しい!フィオが作ってくれたの?」
「いえ...。ゼルンと厨房を借りて作りました。感謝なら、ゼルンに。」
顔を反らしたフィオの顔はほんのりと赤い。きっと頑張ってくれたのだろう。
「ありがとう。すっごく美味しい。」
「...いえ。感謝される程のことではありません。風邪が長引いたら厄介ですし。」
「ふふっ、それでも、ありがとうフィオ。」
「感謝ばかりしていないで、食べた終わったなら早く寝て下さい。」
ちょっと不機嫌そうなフィオは、食べ終わった食器を取り上げて、ライナにさっさと布団を掛けて出ていってしまった。
去り際のフィオの耳が真っ赤だったのは、ライナの胸の中に留めておこう。
ライナは、蜂蜜湯のおかげで体がポカポカのうちに、布団にもぐって眠りに着いた。
数日休んですっかり風邪も良くなって、街道を歩いて数日。予定よりも長くなってしまった帝都への道のりは、少しづつ寒く、雪が振ってきていた。
「あれが帝都?」
遠目だと、急に現れた灰色の巨大な山にしか見えない。だが近づくにつれ、それが帝都の外壁だと知る。山を削り出したかのように高く、分厚く、空を遮る石の壁。それは大昔の対魔族の名残だと言う。見上げた瞬間、無意識に息を呑む。
「......でかいな」
ゼルンの声に、ライナは小さく頷いた。ここが帝都。噂に聞き、地図でしか見たことのなかった場所。
外壁の門の前には長い列ができている。荷馬車、商人、旅人達。槍を持つ衛兵が一人ずつ止め、厳しく検めていた。簡単には入れないらしい。
「並ぶしか...ないみたい。」
「そうだな。」
ライナ達は、長い検問の列に並んで、少しづつ進んでいく列の先を見つめた。
ディオンのテントは、ディオンが色々改造して付け足されてっから、他人が触るとどれがなんだかよくわかんねえ。触らねえのが1番だ。
byディオン




