表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸戦争  作者: 野谷
9/10

英雄の死

 今にも命の灯火が消えかけていたバルサ兵士達の魂が噴き荒れる。総大将カール大帝の参戦だ。もう彼らに弱気な心は無い。目の前の男を信じて共に前進するのみだ。連合軍側もすぐに戦況の変化を感じとった。それは遥か離れたグローム本陣にまで異様な雰囲気を感じさせる。間違いない。「もう出てきたかっ...!」この辺りで出てくる事は想定済みだ。早期決着をつける為。そして前線兵士を救う為。必ず奴が出てくるであろう事を。それでもなお、このプレッシャーは流石カール大帝だと言わざるを得ない。この時を、待っていた。グロームはすぐに別働隊2軍に合図を告げた。中央では少し前の戦況とは一転し、バルサ側の猛攻が始まっていた。その中でも1番前で敵兵士を亡き者にしているのはカール大帝だ。そしてそれに続くカール本隊の中でも強い精鋭達だ。彼らは主人であるカールを守る為というよりは殲滅の後押しを行っている。いざとなればいつでもカールの為に身を投げ出せるがそれをカールは良しとしない。そしてそもそも彼に守りは必要ない。カールと精鋭達は一つの大きな塊となり、敵軍にどんどん侵入していく。侵入される側はたまったものではないだろう。カールが参戦し30分が経過した頃、既に連合側の将が2人打たれていた。どちらもカールと3度も打ち合わぬ内に、彼の持つ大きな斧の前に粉砕された。このまま一気にグロームの野郎も潰してやるわ。そう意気込んでいた矢先、カール本隊の右翼側から大きなどよめきが聞こえたと思えば、精鋭兵がこちら側に吹き飛ばされた。大きく飛んできた兵士を抱えれたと思えばその兵士は事切れている。そちら側に目を向ければ何やら敵兵士の中に一際目立った大男が槍を振った後のようだ。その大男、よく見れば何か見覚えがあるように感じる。大男はこちらに語り出した。「久しぶりだなぁ!小童!!」思い出した。「まだ生きていたか!クソジジイが!!」ザボロ大将軍だ。

 35年前に始まり、約10年間行われた10年大戦。この当時、バルサ帝国が最も繁栄していた時代だ。国土は現在の倍近くにまで伸びており、遂に、大陸を完全制覇する為に大軍を興した。全て合わせれば200万を超えていた。こんな数が一気に周辺の国に攻撃を仕掛けていたのである。当時、カールは新兵でありながら既に将軍の座についており、期待の新兵という肩書きだった。とはいえ、この時代は戦国時代と言える、強い将達が大陸中に蔓延っていた時代で、カールは将軍級以上の大きな軍功を挙げれていなかった。そして、今は亡き王国、アヒューラ王国攻めが帝国により開始された。これが当時の帝国にとって大きな転換期を迎える事になる。バルサ帝国軍60万。この中に1人の将軍として、カールも参戦していた。それに対しアヒューラ王国軍は多く見積もっても10万。この中に当時将軍だったザボロ将軍も含まれている。これでは勝負にならないと誰もが思っていた。しかし戦況は意外にも芳しくない。アヒューラの兵士達はこの戦争で負ければもう後はない。その思いがなんとか踏みとどめさせていたのだ。そんな思いを砕く為、カールが兵士を連れて向かった時、それとほぼ同時に出てきたのがザボロ将軍だ。当時既に彼は46歳だ。カールは見誤った。敵将軍を討ち取り、武功を挙げようとザボロ軍に突撃したが、将軍としての格が違った。カールは当時既に、一気討ちならば敵無しと言える程強かったが、ザボロは異常だった。2分程打ち合ったが全く隙は見せず、気付けば周りの味方兵士は全て殺されて孤立していた。カールは負けを認め膝をつき、刃を待ったがもうそこにザボロはいなかった。自分程度は眼中にもなかったのだろう。その後、ザボロは戦場で大暴れし、バルサ総大将、そして将軍6人自分を除き全て打たれ完膚なきまでに敗北した。この敗戦によりバルサ帝国は勢いを失ったのは言うまでもない。この戦いにより、ザボロは一国の将軍から一気に連合軍希望の星、大将軍にまで駆け上がった。それに対し、カールは唯一逃げ帰ってきた将軍として帝国内から冷遇されていた。

 まさかまた戦場で刃を交える事になるとは。既に80を超える年齢のはずだが、見た目では年齢を感じさせない屈強さを感じる。ここであの時味わった雪辱を晴らす!咆哮と共にカールは斧を振り下ろす。しかしそれをザボロは軽く受け止め、流れのまま槍を突き出す。それを避ける。肩の鎧が掠め

辺りの装甲を粉砕する。どうやらあの槍を掠めるだけでもただじゃすまなそうだ。左手を大きく横に振り、1度距離を取る。がしかし、ザボロの槍がここまで届き、斧で受ける。ザボロの持つ槍は超大槍と言っていい。ザボロ自体の身長が3m近くあるのにも関わらず、その巨体の3倍近い長さを誇っている。この長さの槍を扱い切るには、槍術とそれを支える大きな筋肉が必要だろう。何故この歳になっても、あの頃のまま戦えているのか。道理が通じない。やはりコイツには天武の才があるのだろう。だがそんなものは関係ない。この圧倒的な才を、ねじ伏せてみせる。

 戦況は拮抗している。隠居していたザボロ大将軍に交渉し、この戦場に駆り立てさせたフラジール元帥はやはり只者ではない。グロームは戦況を見やる。カールの勢いをザボロで完封出来ていると言っていいだろう。しかし、今回の目的はカールの勢いを削ぐことではない。そう。カール大帝の死だ。今回の戦争、連合側は確実に勝つであろう。しかし、結局カール大帝が残っていれば、連合側の完全勝利とは言えない。それがフラジール元帥からの言葉であり、それを実現する為の作戦だった。正直、ここまでやるかと思うが、確かにこれは確実にカールを死に至らしめる策だろう。遂にグロームは待機させていた2軍に指令を下す。今現在、ザボロとカールは死ぬか殺すかのギリギリの勝負をしている。そこに、クロシナ聖王国の剣聖ラグナルト、それとゲベーツ軍別働隊のハリムナ将軍をぶつけさせ確実にカールの首を取る。これが連合必殺の策だ。合図を見た2軍はすぐに動き出した。2軍は連合側に突っ込んでいる前線のバルサ軍を左右から包み込むように包囲しだす。これを見たアンデンもすぐに動き出す。敵右翼のラグナルトを止める為、自軍をぶつける。カールを包囲させるわけにはいかないからだ。しかし、聖王国軍の聖騎士の全く貼り付けない。彼ら聖騎士は、聖騎士の中のでも剣聖に付き従う者達だ。その強さは見事でバルサ兵達が一刀のもとに切り伏される。そして一部の聖騎士が壁になるように横隊を作った。ラグナルト達の邪魔をさせずに、カールの元に送るためだ。これを中々突破出来ない。

 ザボロとの戦闘に集中していたその時、横腹につんざくような痛みを覚えすぐに飛び避ける。「ザボロ殿、私も参戦致します。」見ればあれがそうか。聖王国に剣の天才が現れた噂には聞いていたが、こいつが剣聖で間違いないだろう。全く殺気を感じさせず、横腹を斬られた。カールの天性の勘でなんとか避けたが次はないだろう。ザボロは舌打ちをし、明らかに不満な顔を向けてくる。どうやら横槍するなと言いたそうな顔だ。ラグナルトは苦笑しつつ「お邪魔をしてしまい申し訳ない。だがこれもグローム殿の頼みですので。」と顔はカールの方を見ながら告げる。正直に言えば自分だってほぼ一騎討ちのような状態に水を差したくはない。だが援軍として来たからには、自分の役割を果たさなければならない。それが1番の目的だ。自分だけでは勝てないとでもとグロームの顔を憎く思い浮かべるが致し方なし、だ。「良かろう!貴様と連携するつもりはないがなぁ!!」と言い終わらぬまま槍を繰り出す。「勝手に合わせますので心配無用です。とラグナルト。「ごちゃごちゃと五月蝿いわ!」カールが叫ぶ。しかしこれは明らかに不利だ。ザボロ1人でも手を焼いていたのに、剣聖まで来やがった。カールは守り切るのでやっとだ。後一歩!後一歩であのカールを討てる!と言うところで中々勝負がつかない。と言うかハリムナの奴は何をしているのだ!とグロームは心中穏やかではない。あの中にハリムナも加われば確実にカールを討てると言うのにも関わらず、何故奴は参戦していないのだっ!

 カール側近の兵士達は特攻していたため、カール大帝を止められた今、ゲベーツ兵士と聖騎士達に包囲され数を減らしている。第3軍を務めていた重雷はグローム本隊の一部の相手をしているため動けず、カール本体を救おうとするアンデン軍も聖騎士の強固な守りを突破出来ずにいる。ザボロの繰り出す槍を受ける。と思えば受けた隙をラグナルトが削いで来ようとし、それを間髪入れず避ける。これの繰り返しだ。どうやらあの剣聖とやらは、ザボロの意図を汲みサポートに徹しているようだ。舐められたものだ。自分は、この時代で最強の将だと自認していた。そして周囲からもその強さを認められていた。しかし、目の前にいる2人は間違いなく自分と同格だ。この戦場に同格が2人も存在しているのだ。それならば大陸中にはきっと、更なる強さを持った者が存在しているのはかもしれない。それならば自分はとんだ笑い者だなと自身を鼻で笑う。それでも、この戦場で負ける訳にはいかないのだ。バルサ帝国の勝利の為に!カールは今まで打ち合っていたザボロをよそに一気にラグナルトに接近した。どちらか一方を殺し、なんとしてでも1体1に持っていく。カールの体力はほぼ切れていたため。これが最善の動きだ。その細身の剣一本では俺の全力の斧を防ぎ切れまい。ラグナルトは察知したのか横に跳び抜こうとするがそうはさせない。足の残りの力を振り絞る。急接近に成功し、その勢いのままカールの全力の斧がラグナルトに降り注ぐ。ラグナルトは剣を振り抜くが斧の重さに耐えられず圧殺される。はずが、ラグナルトの横振りがなんと己の斧を斬ってしまった。信じられぬ。いくら、ザボロの強烈な攻撃を受けていたとしても、柄まで全体が鋼鉄で出来ている斧の刃の部分を剣で斬ってしまうと言う芸当はカールにはあまりにも衝撃だった。自らの武器が砕け散り、勢いのまま地面に打ち伏せる。顔を上げれば、剣で次の動作に入ろうとしているラグナルトが。すんでのところで避けれたと思えば、それは間に合わなかった。カールの斧の重さで大きく発達した右腕が胴から離れる。右腕ごと斬られたのだ。勝負は、着いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ