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大陸戦争  作者: 野谷
5/10

砂漠決戦!

 寒い。夜の砂漠がこんなに冷え込むなど知らなかった。6時間ほど前の戦闘時は川が涼しく快適だった。まあ前から毒矢が飛んできたのでただの地獄でしかなかったのだが。前方や真横に泳いでいた兵士がどんどん敵の矢の的になっていく。もう自分も矢に当たり沈むのかと半ば諦めていたが、銅鑼の音が聞こえすぐさまくるりと踵を返した。早く向こう岸へ!はやる気持ちを抑えきれず口にどんどん川水を飲み込みながらなんとか縄を掴み一気に引っ張り上げられた。引っ張り上げてくれた味方兵士達は俺を讃えてくれたがそれになんの意味があるのだろう。彼らの目には自分ではなくてよかったと言う安堵の気持ちも感じられた。あんな経験は2度としたくないが明日も同じ事が繰り返されるのだろうか。軍法違反だが皆が寝静まっている内にこの地獄から逃げ出て行こうか?そう考えていた。ふと、少し前に自分を地獄を見せてくれた川の方を見やる。寒くはあるが喉が渇いた。水が飲みたい。そんな事をぼーっと考えている内にふと水面が不自然に揺れている事に気づいた。なんだ?こんな急な川に魚が泳いでやがる。さっき飯を食ったとはいえ、俺は泳ぎ疲れたんだ!まだまだ腹を満たしたい。そんな思いで少しずつ川へ近づいていく。?、アレは魚だろうか?暗くて分かりづらいが、水面にぶくぶくと泡が浮き出ている。何か変だ。そう思っていた瞬間。すこーし顔を出した。ふーと息苦しそうに呼吸をするそれは紛れもない人間だった!「敵襲ー!!」法国兵士達が休んでいる辺りにそう声が響き渡る。これはサラディーナ軍の夜襲だ。

 しまった!完全に油断していた。まさかこのような寒い夜に危険な川を渡ってきて夜襲をかけてくるとは思っていなかった。誰か1人の兵士が叫ばなければ多くの者が寝たまま殺されていたかもしれない。それこそ自分も睡眠をとっていたのだ。ジルはすぐに飛び起き槍を携え寝床を後にした。法国軍兵士達は大慌て。戦闘準備など大してしていなかった。そもそもここの砂漠に来るまでの行軍で疲弊し、かなり疲れが溜まっている状態だった。王国兵士達は夜目が効くのだろうか?機敏に動き回り武器を持たない兵士達を次々と倒していく。それから少し経ってからやっと、戦闘準備を終えた法国兵士達がやって来た。しかし、それを尻目に襲来者達はとっとと川を泳ぎ逃げ帰ってしまった。ボウガンで少しは殺せただろうが、向こうは大して被害はないだろう。それに大しこちらの被害はかなりのものだ。数で言えばそこまでやられたわけではないのかもしれないが、昼の戦闘の敗退と夜すら安心して眠れないという過酷な状況に、士気がかなり下がってしまっている。これは早急な勝利が求められているとジルは改めて感じさせられた。

 翌日、法国兵士達の表情は暗い。当たり前だ。昨夜の事があったからおちおち眠れなかった者も多いだろう。しかし、今日は昨日とは違う。夜通しサルナの部下の技師職人に作らせていたある物がもう完成したのだ。それも2つ。技師職人達に護衛の兵士を付けさせていたのはどうやら正解だったようだ。彼らは馬鹿の一つ覚えのように同じ作戦で川を渡るつもりのようだ。それでは突破出来んよ。ムジョリは溜息をついた。大国の聖騎士長ともあろう者がまた突撃する気なのか?愚か極まりない。しかし一瞬彼は目を疑った。なんと敵の総大将であるジル聖騎士長が大軍を引き連れ泳いでコチラへ向かって来たのだ。貴様を失えばそちらの軍は撤退する他ないのだぞ!?正気か!?否。正気ではないのであろう。彼の行動が物語っている。それならば宜しい。手向けの毒矢をくれてやろう。ムジョリが矢の合図を出そうとした時に、ジルの声が響き渡った。「今だ!発射!!」その声と同時に何か鈍い音がなる。一瞬サラディーナ軍が動揺する。何が起きたのか確認するためだ。と思った次の瞬間、川岸で盾を構えていた1団が激しい音と共に砂埃に巻き込まれて見えなくなる。上だ!誰かが叫んだ。次の瞬間上を見上げた兵士の上に巨大な岩石が見え、その瞬間頭から潰される。即死だ。カタパルトか!!ムジョリは気づいた。敵兵士でふさがり後ろが良く見えないがどうやらあの後ろにカタパルトが隠されていたのだ。カタパルトとは、石などを投擲する射出する為の、兵器だ。あんな物をいったいどこから?昨日の戦闘では何故使われなかった?それもそのはず昨日はカタパルトなんて兵器は存在しなかったからだ、技師達は兵士たちが持っていた物を集めて、本来の威力程は無いものの、即席でカタパルトを作り上げたのだ。この状況は昨日とは一変して王国側からしてかなり不利だ。前に構えている盾兵カタパルトによってただの動きが遅い的になってしまった。そして盾兵が崩れてしまえば後ろの弓兵にも、敵のクロスボウが届いてしまう。これでは川を渡っている敵兵に集中砲火している場合ではなくなるのだ。しかし、ムジョリはふと思いついた。ジルはあの川から泳いできている。恐らくだが、落ち込んだ指揮を上げる為に自ら川へ飛び込んだのだろう。やつを殺せれば、向こうの士気は一気に落ちる。他に上手く統率を取れる者がいない可能性も高い。ならば。ムジョリは川岸の兵士達に命令を下した。「そのまま川に目掛け矢を射続けろ!ジル聖騎士長を討ち取れば我らの勝利だ!」

 川を挟んだ上陸作戦は決着が近づいていた。そもそもサラディーナ側からすれば上陸されれば負けと言う事はない。そこから地上戦が始まるだけだ。序盤は敵が川で疲れている分圧倒的にこちらに有利と言えた。しかし、彼らはジルを討つ為カタパルトに身を晒しながら川に矢を放ち続けているので、かなり消耗が激しい。川を渡る最前線の兵士はもう半分をとっくに超えている。お互いに敵兵の気迫に恐怖を感じている。そして遂に、最前線を泳いでいた兵士達が上陸を始めたのだ。ジルはかなり後方から泳いでいたはずなので、まだ半分も渡っていないだろう。敵の上陸を待ち構えていたサラディーナの兵士と、やっとの思いで上陸を果たした法国軍が戦闘を始める。彼らは信じられなかった。目の前の兵士達はこれだけ大きな川を渡って来てすぐさま戦闘に移っているのにも関わらず、その疲れを感じさせない戦闘力を持っていた。いや、勿論疲れていないはずなどない。疲れ果てた上でこの強さなのだ。サラディーナ兵士もこの砂漠まみれの国で生き残る為に訓練を積んできていたはずだが、彼らは一体どのような訓練を続けていたのだろうか。戦場が陸に移った事により。彼らは聖騎士の恐ろしさを知った。ムジョリは部下のガルーダに大軍を指揮させ、上陸軍の迎撃に向かわせた上で、自身は川を見続けていた。タイミングを見計らっていたのだった。どれだけ弓兵が川に向かって矢を射ても、これだけの敵兵を前に個人を狙って殺すと言うのは無理難題だ。上陸辺りは少し聖騎士達に制圧され始めていたが、すかさずそこにガルーダ将軍が参戦し、聖騎士達と戦闘を始めていた。彼の率いる兵士も精強で、聖騎士に引けを取らない。陸の戦闘も激化していた。

 じっと川を見続けていたムジョリは突然、後ろに控えていた兵士に合図を送る。合図と共に狼煙が上がった。これが彼にとってのとっておきだ。川を渡っていた兵士達は何か音が近づいて来るのを感じる。しかし、そんな事を気にしていられない。早く前線にいる兵士達に合流しなくてはと言う思いでがむしゃらに泳いでいたのだが、音がどおどおと激しくなって来る。そう思っていたのも束の間、彼らは上流からの激しい水の流れに叩きのめされた。ムジョリはこれと同時に宣言した。「敵総大将ジル聖騎士長!川に流されて死亡!」周りの兵士達からうおおおと完成を浴び敵の兵士達の動きが鈍るのを感じる。正直言って死んだかは分からない、あの川の流れでは大半に人間は死ぬだろうが、生き残る者も居なくはないだろう。だが、そこは問題ではない。一時的にでも、総指揮官を失ってしまえば戦争はほぼ決着がついたようなものだ。彼は戦争が始まる前に川の上流に兵士を配置させ川の流れを幾分か堰き止めさせていたのだ。そして、敵の総大将ジルが川を渡っている最中に狼煙をあげ、一気に川の水を流させる。これによって法国はジルを失った。決着は着いた。ムジョリは川岸の辺りへ急ぎ向かい、指揮を行う。敵を完全に殲滅させる為に。しばし時が経ち流させた川が落ち着いた。その時だった。「全軍突撃!!」と。川の向こう側の法国軍から聞こえて来た。あの聞き馴染みのある声が。

 何故だ?何故そこにいる!?声の正体は紛れもなく、ジル聖騎士長そのものだった。何故ヤツがいる?川を渡っていたではないか。敵の兵士達は今までで1番の歓声を上げ、こちらの兵士は困惑している。ジルは声を張り上げながら馬で突撃した。川を一気に流した後なので一時的に川が浅くなって馬でも通れる程になっていた。彼は川へ流されていったサルナの事を無事に思いながら、その感情を怒りに変え一気に川を渡り始めた。そう。最初に川を渡っていたジルではなくサルナだった。サルナは、今日の戦争が始まる前、ジルに影武者として自分を使うよう頼み込んでいた。兵達の指揮を上げる為にも、ジルが前に出るべきではあるが、サルナがあまりにも危険だと判断し、ジルの反対を押し切りジルのフリをしていたのだ。その時、ムジョリも始めの違和感に合致がいったのだ。冷静に考えればおかしかったのだ。最初の川渡りの最中で、カタパルトに大きな声で指示を出していた時ヤツは大声で指示を出していたが、そんなのは不可能なのだ。泳ぎ中ではそこまで声を張り上げることも無理だ。始めからヤツは後ろで待機してバレないように声を出していた。こんな子供騙しにも気づかないとはどうやら自分は冷静ではなかったようだ。しかし!まだこの戦争、負けたわけではない。兄ムジョルから任されたこの川を死んでも守り切る。これが自分の決意だ。ジルは既に川を渡りきり敵兵に槍を喰らわせていた。敵を蹴散らす。サルナの怒りをぶつけるかのように。そこに自分の体躯も超える巨体が立ち塞がった。「貴様がジルザエル聖騎士長かア!」いかにも。答えるまでもなくジルは槍を前に出す。が、大きな剣に振り払われる。「肯定と捉えよう!」続け様に剣をジルへ振り払って来る。どうやら簡単に討ち取らせてはくれないらしい。

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