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大陸戦争  作者: 野谷
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川の攻防

 馬の蹄の轟く音が大地を揺らす。彼らは無限に続くような砂漠地帯をひたすら前進し続ける。その数20万。7大国の1つ、ジルキーン法国の正規軍15万とその周辺国からの援軍5万である。彼らの向かう先はサラディーナ領。聖騎士長ジルザエルが従えている。彼の名前は法王から賜ったものであり国の名前からジルを取っている。兵士たちからはジル将軍と慕われている。幼少期にもらった名前なので、自分の本名すら分からない。彼は捨て子だったからだ。しかし、彼からすればそんな事はどうだっていい。法王からもらったこの名誉ある名を大陸中に轟かせる為、彼は戦果を挙げ続ける。全ては法王が為。

 砂漠の支配者、ムジョルは怒りを露わにしていた。帝国との裏取引はどこにもバレる事なく順調だったかに思われたが、迂闊だった。いつも通り海路を使い、帝国へ輸送船を向かわせていたのだが、岩陰から突然大量の攻撃船が現れた。待ち伏せされていた。勿論それも想定し護衛船をつけていたのだが、あまりにも数が多かった。帝国へ向かっていたサラディーナ海軍はほぼ壊滅した。それに、沈没されてもいいように上手く海賊船に偽装していたのだが、どうやら敵はわざわざ詳しく船内を調べ上げ、サラディーナの船と言う事を見破ったらしい。取引内容を含めた紙も全て回収され、帝国との関係が露見してしまったのだ。全てプラトン連合統括者、バルボッサの仕業だ。彼は我々の取引を予見し、予め聖王国の強力な海軍を配置させていたのだ。こちらはあくまで輸送を目的にしていたので、向こうの強力な海軍には敵わなかった。とにかく、これでサラディーナ王国の連合に対する裏切りともとれる行為が発覚し、直ちに審議に参加するような文が送られた。サラディーナ側ははこれを否定。このような工作は聖王国側がサラディーナの力を削ぐために行った偽装行為だと批判したのだ。これに従う意思なしと判断した連合側は、直ちにサラディーナに対し派兵を行ったのである。本来、この状況で軍を送るのは早計だと思われかねないが、このまま有耶無耶にされたまま、帝国へ物資を渡されては危険だと考えての派兵だ。この軍に対し、サラディーナは討伐軍を編成。ムジョルは弟のムジョリを総大将にし、18万程の兵で出陣させた。

 両軍は、巨大なバンジャ川を間に睨み合っていた。ジル将軍はここの川をなんとしてでも取りたかった。砂漠では水がとても貴重だ。このバンジャ川を掌握出来れば、敵は少ないで戦わなくてはならない。水は戦うにしても城に立て篭もるにしても必要不可欠な存在である。しかしそれは相手からしても同じだろう。戦争勝利の為、この川を命懸けで守ってくるはずだ。しかし地形はこちらからすれば難儀だ。我々は攻めに来ていて兵糧にも限りがあるため前進する必要がある。ただ、この川を上手く渡り切るのはかなり難しい。川を渡っているうちは無防備になりやすく、大量の矢の餌食になるだろう。サラディーナの矢の先端には、この砂漠に生息している蛇やサソリといった動物から毒を抽出し、矢に塗って放つそうだ。聖騎士の多くが分厚い鎧に身を纏っている為、そこまで矢が刺さる心配はないと思っていたが、この川を渡る為にはこの鎧は重すぎる。鎧を脱いで、向こう岸まで上がらなければ、結局川で溺れ死ぬ事になるだろう。全軍で一気に渡るべきか、少しずつ様子を見ながら渡るか、彼は悩んでいた。

 聖騎士は強い。これは間違いない。国を代表する聖騎士として厳しい鍛錬を続け、法王への強い忠義と精神を身につけている。ただの平坦な陸地で彼らと相対すれば必死の戦いになるのは間違いないだろう。ただし、この土地は我らの生まれ育った土地。地形が我らの味方をしているのだ。我らはこの厳しい環境で戦い勝ち続けてきた。負けはない。ムジョリはそう確信しつつ油断はしていなかった。更なる仕掛けも用意させ、もしもが起こらないようにすればいい。ムジョリは兄ムジョルの弟であり、友達のような間柄だ。この時代、王に兄弟がいた場合敵として立ちはだかる事も珍しくない。王位継承は自分であるべきだと主張する者も多くいるムジョリは冷静な男だ。兄であるムジョルの方が感情豊かでよく怒ったり泣き喚いていたりしたものだ。だが彼は兄を心の底から尊敬している。国民に聞けば、もしかしたら弟である自分の方が国王として相応しいと言う者も多いだろう。しかしこのサラディーナに従う精強な兵士達は一癖も二癖もある者達だ。そんな彼らを上手くまとめ上げ、従わせているのは兄の天性の才に他ならない。彼は単純な賢さはあるが、そこまでの統率力は自信がないと自分を分析していた。そしてそんな自分を、邪険に扱うのではなく、最も向いているであろう指揮官として、配属させてくれているのは感謝の他ないだろう。今回の戦争は防衛戦であり、このバンジャ川を取られればサラディーナ軍にとって死活問題となる。必ず勝利する。

 銅鑼の音と共に、法国軍が動き出した。川端へ思いっきり近づき、その内1万程が一斉に川を渡り始めたのだ。その動きを見ているだけのつもりはない。ムジョリは待機させていた盾兵を川端へ横に置き、更にその後ろにも盾兵を配置させ、二重の盾を作った。そしてその裏から、矢の先端に毒を塗った弓で一斉射撃を開始した。法国軍も川端から矢を射るが向こうまで届くのは3本射掛けた時の1本程だろうか。それのほとんども盾に弾かれる。王国軍の矢もそのほとんどが聖騎士達の分厚い鎧に傷をつける程度だが、川を渡っている者達からすれば別だ。彼らは川を渡る為思い鎧を着ていない軽装だ。しかしそれでは毒の矢を弾けるかは当たりどころ次第だ。むしろ、運が良くなければ、矢が少し刺さればもう死は免れない。川を渡っている兵士達から多くの悲鳴が聞こえる。毒と言っても即死するほどの威力はない為、むしろ彼らは水の中で泳ぎながら毒に病まれるという地獄を味わう事になるのだ。聖騎士達も川を渡る者達を守る為に必死に矢を撃ち続ける。彼らは弓を使うのではなく法国兵士の標準装備のボウガンを使用している。これでは勝てないと判断したジル将軍はすぐに撤退の銅鑼を鳴らせた。岸の兵士達がすかさず縄を投げ泳いでいる者達を引っ張り出す。この軽い戦闘だけで2、3000人程の死者が出たのだろうか。彼は自分のミスだと目を覆うしかなかった。その夜、法国軍で軍議が行われた。このまままた明日同じく渡ろうとしても犠牲が増えるだけでは、犠牲を多く出したとしても無理矢理渡り切るべきだといった意見だ出てくるなか、ジルは将軍の1人、サルナ将軍の意見に注目した。彼はここ1年で将軍になったばかりの新参ではあるが、中々面白い、奇想天外な作戦を良く思いつくからだ。いつもジルは実行はせずとも心の中で悪くない考えだと感じていた。ただ、大抵作戦で採用されるのは当たり前ではあるが何度も戦争を経験している者の一般的な作戦だ。それでは、従来の戦いしか出来ない。ジルはそう考えていた。若く経験が浅い者の作戦でも、やる価値があると思えば実行するべきだ。そう思っていた時、サルナは一つ提案した。自分の持つ部下に技師職人がいる。彼ならばこの大きな川を渡る何かが作れるかもしれない。すぐにジル達は、行動に移った。

 

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