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大陸戦争  作者: 野谷
3/10

思惑

 バルサ帝国は大陸の北東辺りに位置している。そこから離れはるか南の国サラディーナ王国。この国は、元々領土の大半が砂漠であり昔は繁栄とは無縁の国だと言われてきたのだが、ムジカ・マッラという商人が厳しい砂漠の環境でもサラディーナの砂漠に大きく流れているバンジャ川を利用し、灌漑農業を行ったり、民や他国の人間が安全に通れるルートを上手く広げる事によって国同士の取引場所を提供し上手く儲ける事によって、商業の盛んな国として有名になった。そしてムジカは民から圧倒的な支持を得た事により、サラディーナ王国の国王にまで上り詰めたのだ。そして現在は、14代国王のムジョル・マッラである。サラディーナは元々小さな国だったものの彼が国王になるまでの歴史で、当時はバンジャ砂漠の半分を支配していた程度だったが、現在は砂漠を完全掌握し、南には大きな海が広がり、更には緑の大地を求めて砂漠以外の領土も保有している。帝国と比較すると3分の1程度だろうか。5代国王の時代あたりに少しずつ軍拡が必要という考えが強くなっていき、そこから順当に今日に至るまで軍拡化が続いている。それに加え、強みにしていた商業にも力を入れていて、7大国の1国として認定されている。

 そんなサラディーナは現在、プラトン連合の列強国としてバルサ帝国との取引を最小限にしている。と、周りの国に思わせているが実態は違う。サラディーナとしてはそもそも、戦争が起こる方が経済が盛んになりやすいという事と、サラディーナは軍事力を持て余しているという理由で、戦争賛成派なのである。そして、帝国が連合から脱退すると言うことは、大量の物資が必要になるのは目に見えている。ならば、あくまでも帝国に対し経済制裁をしているという体で、戦争に必要な物資を送り、戦争を起こさせる方が利益があるのだ。サラディーナは、有事があった時には援軍は送るという条件で、大量の物資を帝国へ流していた。これを可能にしていたのは、南に広がる海である。そこから輸送船を出し、大陸の東側を大回りしながら安全に届けていたのだ。輸送船には大量の護衛船をつけさせ、目についた船は全て沈没させた。この大量物資の横流しによって、帝国は多くの兵士を抱えながらも高い継戦能力を保っていた。

 クロシナ聖王国。バルボッサは地図を睨みながら思考を巡らせていた。帝国は確かに強いが中々勢いが落ちない。落ちなさすぎるのだ。帝国は3国を滅ぼした後、更に他国に攻め入っていて、もはやトロノ王国、ドルトタイナ王国ももう滅ぼされるであろう。あの国はカール大帝を筆頭に強力な将軍級が何人も属している。しかし、再軍備が早すぎる。そして、あれだけの数を何度も出撃させるほど、武器や食料があったとは思えない、連合加盟時、連合国全てに監査を入れ、武器や食料などの物資事情はあらかた把握していたはずである。隠すにしてもそれだけの物資を隠しきることは不可能だ。戦争資源を帝国へ流している国がある可能性が高い。とはいえ、正直その国に目処はついていた。出来ればそうであってほしくはないが。そんな事を考えている間に、突然、思考は遮られた。近衛兵の焦った表情からの報告により。

 アトランカ連邦とは、元は中小様々な16国が、周りの大国からの攻撃から身を守る為、一つの国として形成された、多民族国家だ。その為、様々な文化が入り乱れ多様な人種が同じ国で当たり前に生活している。そして、7大国の1つだ。この国で最も発言力を持つ者を指導者と呼び、指導者中心の話し合いで内政が進められていく。指導者は3ヶ月周期で、16の国王達を順番に決めている。あくまで指導者とは連邦の代表者として選ばれているだけで、それぞれ他の15人の国王の意見を無視して行動する事は出来ない。かなり変わった政治体制をしている。そんなアトランカで内戦が勃発したのだ。そこまで驚くことではない。寧ろこの体制で約30年間も継続出来ていた事が奇跡に近いと言えるだろう。外側から見れば、それだけ多くの国が手を取り合っている、まさに平和を実現させた国に見えるかもしれないが、実態は、謀略ひしめく内部崩壊必至の国だったのだ。この内戦には間違いなく帝国の連合脱退が起因しているだろう。帝国から少数の国を越えた西にはもう連邦が広がっている。各16の王が、今の持ちつ持たれつな姿勢を貫くのか、帝国側につくべきなのか、それとも逆か。恐らく意見が一致する事はないであろう。それに、16の国王が全く同じ立場なのかと言えばそれも怪しいと言わざるを得ない。16の国の中には、その中でもかなり小さく、兵士の数が少ない国もあれば、大きく精強な兵士を持つ国もある。その王同士が本当に同じ発言力があったのかと言えばそんな事はないはずだ。

 それはそれとして、この内戦はクロシナ聖王国としてはかなりまずい。帝国の領土拡大を阻止する為、西側の守りの要となっていたのがアトランカ連邦だ。しかし、連邦はしばらく帝国との戦争に参戦しないだろう。それどころか、帝国と手を組み、周辺の連合国を攻撃する可能性さえある。そして、この現状をただ帝国が見届けるだけとは思えない。この内戦が起きている内に、更に南に領土を拡大してくるかもしれない。もし、内戦中の連邦にまで帝国軍が進出してきた場合、もうアトランカの内戦は収拾がつかなくなるだろう。連邦が突破されれば、今のまとまりが皆無と言っていいプラトン連合で帝国の勢いを削り切る事が出来るのだろうか。バルボッサはより一層帝国の動きに注視しなければならない。彼の思考は止まらない。


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