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大陸戦争  作者: 野谷
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 一瞬何が起きたのか分からなかった。その瞬間、先程まで斬り合っていた者達も動きが止まった。戦争中だ。誰か1人が殺した、殺されたところでそれにはなんの意味もない。それがただの一般兵士であればの話だ。しかしこれは違う。先程まで自分達を圧倒的な力で誇示し、戦う理由を与えてくれていた。英雄は今自分達の前で命を落とした。一瞬の出来事すぎた。悲しみというよりは困惑が勝っていた。などと考えている内に自分の胴が目の前に見えた。彼もいつの間にか首を切られていたようだ。

 ウラノ側では動揺が広がり、帝国軍側からは歓声がこだました。そしてカールは馬上に上がりマルト将軍の首を掲げる。これによりこの戦争の勝敗は明らかに帝国側に傾く事になった。ウラノ兵士は完全に指揮系統を失い士気もこれ以上にないほど下がった。彼に依存しすぎていたのだ。しかし、まだ完全に敗北したわけではない。ウラノ兵士は指揮系統を失っているが、援軍には他にも指揮が可能な将軍が数人いるのだ。そして、意気消沈しているウラノ兵士達の元にすぐに駆けつけた将軍。彼こそは、ウラノ王国の近隣国でマルトとはライバルであり、目標でもあったガルラ将軍である。彼は自国から3万の兵を率いて今回の防衛軍に参戦していた。ガルラは、マルトと比べると人徳・頭の良さでは及ばなかったが単純な武力はおそらく同等と言えるほどの腕の持ち主である。彼は兵士を率いながらウラノ軍に共に戦う、または撤退させようと考えた。が、気力を失ってしまった者が戦場にいても蹴散らされるだけだ。ならば彼は自分の力を示し、もう一度彼らの魂に火をつけようと考えたのだ。さっきまで完全に意気消沈していたウラノ兵士達が少しずつ戦い始めている。その変化をすぐに察したのは、帝国軍中将のアンデンである。彼はカールの側近でもありよき理解者でもある。彼が側近として抜擢された理由は、カールが帝国一番の賭博場でイカサマをされかけた時に、たまたまアンデンが助言をした事によって見破り、カールのポケットマネーは守られた。勿論イカサマを仕掛けた相手は両断されている。つまりただただ察しが良いから、でいきなり中将になったのだ。無論中将になって最初の頃は、他の中将や下の位の者達から不満が出たが、それをカールに相談した時、ならば今の身分に合う実力をつければいいだけの話だと言われ、カールのがむしゃらな稽古に無理やり付き合わされた。結果として、昔のギャンブルに入り浸っていただけの自分とは思えないほど武芸に磨きがかかったのである。敵陣の中で味方を鼓舞しようとしているガルラ将軍の存在をいち早く察知したアンデンは、一瞬正面で戦う自分の大将を見る。目の前の敵を倒す事に楽しみを見出していて、選局などまるで気にしていない様子だ。はあっと溜息をした後、自分のやるべき仕事を実行するため率いている一団の5、6000人ほどを連れ、ガウル将軍のいる敵陣左翼に攻撃を開始した。弱った獲物の息の根を完全に止めるため。

 援軍の内、ガウル軍を除いてまだ7万人の軍が後ろに控えている状態だ。思惑は様々である。後続の援軍が来るまでなんとか持ち堪えられないものかと言う者もいれば、カール大帝と言う圧倒的強者の前に立ちすくむ者、またある者は、そもそも自国を守るわけでもないのに戦って死にたくと言う者まで。そして今回の援軍で1番多くの援軍を抱えているパレリナ王国の大将パチルダも、自国の利益を優先し戦闘は最小限に留めていた。しかし、このまま全く戦闘に参加しないようでは後に他国から反感を買うであるだろうと考えついに軍を前進させようとしていた、その時、前にいたウラノ兵士達が逃げまどって来た。指揮官を失った上でここまでよく戦ったものだと心で思いながら前進の合図を出そうとしていた時、更に別の部隊も敗走して来ている事に気づいた、嗚呼どうやら選択が遅すぎたようだ。彼は自分の愚かさに気づき、自らを鼻で嗤った。

 結果としてウラノ連合軍の防衛は大失敗に終わった。戦争の始め、マルト将軍による完璧な守備により多くの帝国軍が死んだ。その後逆転を狙い攻撃に転じたのだが、カール大帝が前に迫っていたのが運のツキだったようだ。マルト将軍はカール大帝に打ち取られ、その後ガウル将軍がウラノ兵士を引き継ぐも、完全に体制を整える前に突然左翼に攻撃を仕掛けてきた軍団により彼もあえなく打ち取られた。その後撤退戦となるのだが、しんがりを務めていた軍をカール大帝は突破し、敗走中のパチルダ大将も討ち取られた。この戦いにより、周辺国の強力な将軍が一気に消えてしまった。その後、勢い止まる事知らぬ帝国軍は、守りが手薄になったウラノ王国本土に侵攻。有力な指揮官もいないウラノ側は全面降伏し。ウラノ王国は消滅した。その後、到着を果たした第2援軍連合15万と、削られた帝国軍20万が戦い、帝国軍が勝利、数を減らしながらも更に、周辺の小国を2つ滅ぼし完全に征服したうえで、バルサ帝国へと帰還した。この出来事が約2日で起きたのである。

 周辺国は呆気に取られた。あまりにも帝国の素早い行軍で大陸の地図から3つの王国が消えたのである。そしてそれはプラトン連合筆頭のクロシナ聖王国としても、全くもって予見していなかった事だ。ウラノ王国が勝利するのが難しいとは考えていた。だがしかし、ここまで一瞬でウラノ王国どころか3つもの王国が滅びるとは思っていなかったのだ。帝国が侵攻を開始した時、すでに聖王国は周辺国に援軍を要請し、カール大帝が撤退しなければならないほどの大軍団を向かわせる予定だった。しかし、そう上手くはいかないものだ。連合内の国が攻撃されているとしても結局他の国からすれば、所詮他人事である。自国に害がなければ自分が割りを食いたくないと思うのは当然の事だ。それはウラノ王国側でも存分に発揮されていたようだ。援軍に向かったのにも関わらず、最初から全力を出さなかった事により、一瞬で敗北が決まってしまった。もし、連合がなんとわだかまりもなく協力し合えた時には帝国ですら簡単に制圧出来るとプラトン連合のまとめ役であり、聖王国の統括者、バルボッサ統括は考えている。聖王国としては帝国のように自由な動きをしてきた時にしっかり対処出来るように、連合の結びつきを強める必要が出てきた。

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