表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大陸戦争  作者: 野谷
13/13

激戦

 彼はどうやら常に戦いの中にいなくては落ち着かないらしい。兄ムジョルの突撃を後方の軍を率いながら常に指示を出すムジョリは見守る。兄を尊敬しているがこの性格に関しては困ったものだ。何度か進言した事があるが、最悪俺が死んでもお前がいるではないかと一点張り。信頼からくる言葉ではあり嬉しさもあるがやはり改めてほしいところだ。とは言え、突撃の最低条件として常にワグルト大将軍に護衛につかせる事は出来たので、なんとかなるだろう。いや、なんとかしてくれなくては困る。彼は個人の強さにおいてはサラディーナ王国の1、2を争うレベルでそのもう1人はガルーダ将軍である。3人目がすぐに思いつかない程、この2人が突出した強さを誇っている。それよりも自分の果たすべき役割に集中すべきだ、と心を入れ替える。兄の代わりにこの大軍の全権を担い、サラディーナ軍の勝利に導くのだ。

 上手く突撃隊を一つの塊として的にぶつけるはずだった。が、なんと敵側も総大将自らが先頭に立ち、声を挙げているこの状況。こちらから突撃をけしかけた手前、初めにムジョルと刃を交えるには自分でなくてはならない。ここでもし、周りの兵士達に戦わせ、自らはぶつかろうとしないと言う姿を味方軍に見せつけては、味方の指揮に強い影響を与えてしまうからだ。鞘から剣を引き抜き、上段に構える。ムジョルはそれに対し、2本の剣を左右に開き構える。どうやら双剣使いのようだ。そして、遂にこの戦いの火蓋が切って落とされる。ムルローナ渾身の一撃を右片方の剣で軽く受け止めたまま、左の剣で右肩を狙う、それを上手く避けようとするが、避けきれずムジョルの剣には血が付着する。その始めの一撃後、両脇に陣取っていたキャマドル、イルがムジョル王に一撃を与えようとするが、その攻撃は阻まれる。ムジョル王の隣に控えていた、ワグルトの手によって。キャマドル聖騎士長からすれば、ワグルト大将軍は宿敵と言っていいだろう。同じ7大国で隣国だった為、ジルキーンとサラディーナの争いは絶えず行われていた。そしてより多くの兵士を持ち、強い国であったサラディーナ側が侵攻する事が多く、その際総大将をよく担っていたのがワグルト大将軍だった。そしてそれに対して防衛側のジルキーン総大将がキャマドルだったのだ。小さな争いも含めれば実に20を超える戦いを経てきた。そして今日と言う戦いは、今までにない大軍同士がぶつかり、お互いの国の王まで出張ってきている、2人にとっても最も重要な戦いなのだ。キャマドルは防がれたレイピアをすぐ手元に引き抜き、次の突きの姿勢に入る。一歩遅れてイルも、振り下ろした槍を戻し次の攻撃態勢に移る。キャマドル、イルの2人からしてみれば、正直すぐに王同士の戦いに割って入り、ムルローナを援護したいところだが、ワグルトがそう簡単には行かせないだろう。「見事。」と声を挙げたのはムジョル。俺はお前を一撃で仕留めるつもりでこの剣を放った。だがしかし、ついぞやこの剣は少々の血を出させただけに止まってしまったか。と。「俺は自らに力で王国を統一したがお前は違うはずだ。ただの法王として君臨しているのみのはずだ。そんなお前が何故俺の剣を見切れた?」私もただ王座に座っていただけではない。と、ムルローナが応える。「いつか国に危機が迫った時。我も即戦力として動けるように。鍛錬を怠った日は一度としてないわ!」それにムジョルは納得したのか頷く。心意気は良し!ならば続けるぞと体を回転させながら接近する。それは不規則な動きから変則的な攻撃を繰り出す脅威のある動きだ。双剣が複数の蛇のように繰り出される。ムルローナはそれに対応しようとするがそのあまりにも不規則な動きが読めず、剣先が何箇所かに刺さる。血を流す量が多くなってきている。分かっていたがやはり、ムジョルとは対面において圧倒的に実力が足りていないようだ。鍛錬を欠かしていなかったとは言っても、それに対しムジョルはこのような実戦を何度も経て来ているのだ。経験値が違う。自らの劣りを認めながらも、下がるつもりは毛頭ない。今、両軍が2人の横にどんどん広がり、正面で打ち合っているのだ。ここで退いては法国の恥だ。そして、そんな王2人を死なせない為に、両軍が死力を尽くして戦っているのだ。決着が着くその瞬間まで。

 シュノン城周辺は死体の山で地獄と化していた。城攻めの任を任されているのは滅亡する前にウラノ王国から送られた才女であり、今はムジョルの妻であるアシュビ女王だ。彼女は、文武両道に秀でた才をもちあわせており、場合によっては自ら剣を抜き戦う事も厭わない。そんな彼女ではあるがこのシュノン城を落とすのは中々に難しい。城主のセルン将軍は、任された城を一度たりとも落とされた事のないと言う話で、民からは守神と崇められている。他に手こずっている原因としては、城内の異様な士気の高さもある。法王ムルローナが軍を率いて、それも先陣を切ってこの城を助ける為に向かって来ていると言うこの状況が、彼らを奮い立たせる大きな要因になっているのだろう。それに加え、そもそもこのシュノン城の構造自体がかなり守りやすく、攻め側にとっては汗が出る作りをしているのだ。このシュノン城は、速やかに多くの兵を出撃するために城の本丸から3本続いた大きな橋がかかっており、一気に兵を出させる仕組みなのだが、サラディーナ軍が城を囲む前にこの3つの橋全てを破壊してしまっているのだ。その為、兵士が通るための小さな道が幾重にも用意されているのだがこれが複雑で迷路のようになっており、道が狭い為攻撃側の数を活かす事が出来なく攻撃側は相当な負担が強いられるのだ。倒壊した橋の川から渡ろうにも川底に多くの罠が仕掛けられており、弓兵による射撃も行われるため自殺行為だ。通常、このような堅城は力攻めで落とすのではなく、兵糧攻めやその他諸々の時間をかけて落とすべきだが、今回に関しては連合軍がバルサ帝国との戦争後で援軍の準備が間に合わない内になんとしても落とし切りたいと言う思いがあるのだ。既にこちら側には1000を超える死傷者が出ており、ガルーダ将軍も負傷した。それでも攻撃の手を緩めるわけにはいかない。アシュビは続けて攻城の指示出しを行う。ムジョリは敵軍側面を突き崩そうと軍を繰り出すが、その動きを察知したジルザエルにより阻止される。この2人は後方で直接ぶつかってはいなくとも、互いの戦略がこの戦場に描き出され、軍同士がぶつかっている。言わば頭の中のイメージで戦いあっているのだ。しかし、質で劣っていると思われていたジルキーンではあったが、どうやら善戦しているようだ。民兵と言う戦いに慣れていない者達のカバーを、サルナ・ジーン将軍の2人が先導して行っている為である。サルナは上手く指揮をとり兵士と民兵の足並みを揃えさせ、ジーンは突撃を繰り返し無理やり民兵も共に引っ張っているスパルタな動きをとっている。これも結果的にはいい方向に進んでいるようだ。とはいえムジョリはかなり落ち着いた様子で指揮を取っている。戦場に大きな変化が起きた時、そこに最大戦力を集約させ、一気に主導権を握る。そんな腹づもりだ。2人の連携で何度攻撃を繰り返しても上手くいなされ、致命打を与える事が出来ない。どうやらこの男、ワグルトは守りに徹し、主人の元に2人を行かせない事が本命のようだ。事実、既にムジョルと対峙していたムルローナは攻撃を浴びすぎていつ落馬してもおかしくないような状況だ。それに対しムジョルは一度足りとも刃を当てられていないようで、健在な様子だ。もう長くはもたなさそうだ。そう判断し意を決したキャマドルの動きは早かった。突如としてイルとの波状攻撃を止め、前ステップで一気にワグルトとの距離を詰める。この動きに対応し、ワグルトが槍を放つ。今まで躱され続けて来た為当たるとも思っていなかったが確かな手応えと共に槍がキャマドルの腹を突き刺す。これにイルが激しく動揺する。何故?無謀に1人で前に躍り出たのか?当たったならばこのまま仕留めるのみだと槍を動かそうとしたワグルトだったが、槍が動かない。ぬっ!?と声を上げるとキャマドルはレイピアを投げ捨てており、腹の中央に刺さった槍の穂を両手でがっしりと掴んでいたのだ。イル今だ!王の元へ!と叫ぶ。先程の動揺が嘘のようにイルは俊速で2人の横を駆けていく。彼が動揺したのはあくまでも、キャマドルの意図を理解していなかったからであり、理解した後の動きは早いものだった。それが彼の強さの一つでもある。いかせぬとワグルトが思いっきり槍を引き抜こうとするも、それを意地でも引き抜かせないキャマドル。2人の因縁はまだ終わらない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ