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大陸戦争  作者: 野谷
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先陣

 なんと言うことを...と声を漏らしたのは聖騎士長ジルザエル。いや、これが1番最適な動きだったのだと同じく聖騎士長のキャマドルが意見する。確かに、昨日の法王ムルローナの演説により多くの民達が民兵として志願してくれた。民達からすれば、法王の言葉が余程響いたのだろう。しかし、なんと彼はサラディーナとの戦いに於いて先陣を切ると伝えてしまったのだ。それに聖騎士長として頭を悩ませるのは当然の事だろう。まあ既に決まった事だ。これからはサラディーナに勝つための作戦を考えるぞ、とキャマドルは続ける。キャマドルのこう言う切り替えの速さだけは褒めてやりたい。と、ジルザエルは心の中でツッコむ。最終的なジルキーンの兵力は、民兵を合わせ27万にまで膨れ上がった。ジルキーン法国がこれだけの規模の軍を動員するのは初めてである。

 「今までほぼ参陣すらしていないながら先陣を切る?バカな王だ。ムルローナとか言うやつは。」こう言い放ったのは、今回のサラディーナ軍総大将にして王の座を持つムジョル王だ。「それに対し兄上は、ここまで戦場で何度も死線をくぐってきた猛将でもあられる。ムルローナに負けている所は一つもありますまい!」こう声を上げたのは、その王の弟であるムジョリだ。「しかし、王自ら先頭ならば兵士達の指揮は相当上がっているであろうため、油断は出来ませんぞ」こう続けるのは、サラディーナ王国2大将軍の1人、ワグルト大将軍だ。現在彼らは、ジルキーンのシュノン城を取り囲んでいる、女王アシュビ・2大将軍デラマン・ガルーダ将軍とは別に、援軍として王都から来るであろう軍を迎撃する為に布陣していた。そしてこのシュノン城こそが今回の侵攻の最終目標である。これさえ落とせれば、多くの兵士をシュノン城に常駐させ、何度も王都パルメサに攻撃を繰り返すつもりだ。とはいえ、勿論その目論見を読んでいるであろうジルキーン側が軍を興したのだ。しかし、その数は予想を大きく上回る27万という数だった。ここまで降伏してきた兵士も入れ、ほぼ数を減らす事なく進撃した為30万の軍を率い、アシュビに5万を持たせ攻城戦に移行しているため、ジルキーン援軍を迎え打つのはサラディーナ兵士25万であり、なんと数では逆転されてしまっている。しかし、戦争は純粋な数だけで勝敗が決まるものではない。ジルキーン軍の構成には約10万の民兵が含まれている。それに練兵するような猶予も与えなかったはずだ。それに対しこちらは、サラディーナ砂漠の厳しい環境に晒されながら何度も戦い続けてきた精強兵という事に加え、サラディーナ本土から連れ出した巨象が1000もいる。象達は他の地域ではほぼ生息していなく、たいていの弓や槍を通さない頑強な皮膚を持ち合わせているのだ。そんな象の上に訓練を積んだ象兵が、一頭に対し大きいものなら30人近く乗って、上から弓を射かけたり長槍を突き刺すのだ。小さな国なら象兵を散らすだけで壊滅的な被害が出る。一通り迎撃の指示を終わらせた副将のムジョリはふぅと息を整える。噂では向こうの軍の先陣を法王自らが率いるなど聞いてはいたがそれなら好都合。こちらも強力な部隊を先陣におき、すぐさま法王を殺したうえで一気に決着をつければ、簡単にこの戦いを制す事が出来る。そうこう考えていると兄であるムジョルが彼の軍の元に訪れる。

 軍の中で突出した部隊、先陣を切る部隊の中でも更に1番前で馬に跨るのは、ジルキーン法国を統べる法王、ムルローナ。そして彼の両脇には、キャマドルとイルだ。イルが抜擢された理由としては、彼は主に騎馬隊を率いて活躍しており、彼単体の強さもその騎馬隊に恥じないものだからだ。イルは法王を直接護衛する任を与えられ、それが同期2人にも知らされた時、尊敬の眼差しを向けられた。真面目で自分を曲げる事が嫌いなサルナと、気性が荒く、喧嘩っ早いジーンはよく衝突する事が多く、その為2人の間に入る事が何かと多いイルだが、2人は言葉にはせずとも彼の事を高く見積もっており、同期ながらも優しい兄のような扱いをしていた。そんな彼が、法王護衛という、これ以上ないような大任を受けた事が、自分ではないと言う事の悔しさ半分ながらも素直に尊敬の言葉をかけたのだ。ジルキーン軍は鋒子の陣と言う陣形を採用している。中央を集中突破しやすく超攻撃的な陣だ。しかし敵に上手く囲まれれば側面の守りが非常に弱く、すぐに壊滅してしまう、まさに玉砕覚悟の陣形と言える。ムルローナが剣を掲げ檄を飛ばした後、彼の掛け声で遂に進軍が始まる。目指すは敵軍の包囲の中にあるシュノン城である。全軍突撃!!これより両国の明暗を分ける重要な戦いが始まる。

 けたましい掛け声を後方から受けながら、馬を先頭に走らせる。シュノン城包囲を解き、敵軍を撤退にまで追い込む。その為ならば自分の命を喜んで投げ打とう。その思いを胸に秘め、ひたすらに馬を走らせる。自分が先陣を切ると何度も言っても、多くの兵士が首を縦に振ってはくれなかった。まあ当たり前ではあるが。しかし、自分の周囲を守るのは法国でも最も強い兵士達であり、そう簡単に死ぬつもりはない。願わくば、生きて、もう一度愛する故郷であるパルメサの地に帰還したいものだ。そろそろ雑念を捨て、敵軍との初めのぶつかり合いを想定しようとした矢先の事だった。敵軍もこちらと同じような陣を取り、突撃を始めようとしていたのだ。そのような動きに少し驚いていると、敵方も突撃を始めたのだ。こちらの予想としては、敵軍は守りに徹しながら少しずつこちらの数を削ってくるものだろうと思っていたのが、全く反対の結果となった。敵軍の先陣の様子が少しずつ見えてくる。2、30秒後にはお互いがぶつかるであろうと言う時、敵側から大きな声が聞こえる。「我こそは!サラディーナ王国の王!ムジョルである!」どうやら思いの他こちらの予想は外れていたらしい。

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