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その八

6697

 共に迷い共に悩む文学と指し示す文学。私は読んでこの違いをよく感じます。前者は必ずしも解決を与えてはくれません。私の探しているものは常に後者でした。しかしドストエフスキーの『地下生活者の手記』は私にとって衝撃でした。多分読んだ『回数』からすればこの本が一番多いと思います。迷う文学ですが、既にこれは指し示す文学です。迷いながら、彷徨しながら、決定的に指し示すのです。これ程徹底的に完全に指し示した文学は、私にとって他に一つしかありません。

 誠実に悩み、狂う程に苦しみ、恐ろしいまでに『迷う』。結局それは指し示しているのです。人間の生きる意味を。答えを見出せないまましかし徹底して妥協を(がえ)んぜず生きる苦悶は、そのまま人に寄り添ってくれます。寄り添いながら或る方向、人間がまともに生きる為に必ず向かなければならない方向を見間違い様もなく指し示してくれるのです。誠実さが何を生むのか、その生きた証拠ではないでしょうか。


6698

「生活が成り立っていたら、それで良いじゃないか」

 住んでいる家を追い出されず、必要な設備あるが故に暑さ寒さに健康を損なう事もせず、貧困を絵に描いた様なみすぼらしい服を纏わずに済み、そして身体の健康を守る為に必要な食餌を得る事が出来る。これだけあれば後は何とかなる、そういう気持ちがこの言葉から窺われます。実際、この言葉を発した人はそういう気持ちで口にしたのでしょう。

 私は違います。この言葉を口にした人はそうなのです。それだけの条件がクリアされたら、本当に後は何とかなるのでしょう。しかし私はそうではありません。私は自分の生活にこれらの条件が整っていなくてもいいから、それでもこれらとは別のものが欲しいのです。それは私の大切に思う人に喜んでもらえる自分である事です。それが無いと、私はこれら以上の条件が完備している環境でそのうち首を吊るでしょう。


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 回り道も若い時には良いでしょう。その彷徨さえも『経験』だからです。今後の自分の重要な場面に於ける判断の材料になります。でも一定の年齢以降の人間にその余裕はありません。余裕の無い事はそういう年齢の人間であれば自らはっきり感じるでしょう。

 生きる事そのものが目的なのではありません。『自分が生きている間に何をしておきたいのか』、これです。生活にも人生にも一本の筋を通すものは、私はこれを措いて他に知りません。あなたもそれに思いを致してみては如何ですか。いや、『そういう事を日頃うっすらと想う事もある』のは知っています。私の言うのはそうではなく、真剣にその事に就いて想ってみるべきだという事です。


6700

 真正の深い美しさには必ず悲しさが混じっています。その悲しさ在るからこそ美しいのです。また本物の愛情や慈悲の心にも悲しさが在ります。それが無いとそれは愛情でも慈悲でもなくなって仕舞います。生きる事に必然的に伴うのは喜びではなく悲しさの方だからです。だからそれが基礎に無いところに人間の真剣な実感が建て上げられる事がない、それが出来ないのです。

 私は悲しさが基礎に無いものを信頼しません。それは私の基準で謂えば嘘です。間違いなく嘘です。誰かが何かの目的で考え出した虚構です。それは私が心を許し寄り掛かって()いものではありません。

 ブログは毎日更新しています。

https://gaho.hatenadiary.com/

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