表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第一章 転移編
9/15

圧倒的閃き......!!

「はぁ......」


 洗い場にてカップやスプーンなど紅茶を作るときに使用した食器を洗うマオ。だがその表情は暗く、時折ため息を吐くくらいだ。


 そもそも私が役に立ちたいと思うこともただの傲慢なのかもしれない。だけど、雇ったばかりの私に弱ってると見抜かれるくらい辛いのなら......


「ちょっとくらいは軽くしてあげたいってもんだよね......」


「どうでしたかマオさん。なにか分かったことはありましたか?」


「あっリリーさん」


 ちょうどすべての食器を洗い終わった時、掃除を終えたリリーさんが洗い場に入ってきた。え、早すぎね? まだ結構のこってたと思うんだけど......


「いや、魔道具の方は進展ありませんでしたよ。ていうかリリーさんて歳下だったんですね」


「気づいてなかったんですか? 別に敬語や呼び捨てでもかまいませんよ?」


「それは......」


 うーん、たしかにタメ口のほうがありがたいけど、なんというかその......明らかにむこうのほうが歳上に見えるのにタメ口だと違和感がすごいというか......


「いや、これまでどうり敬語でいいですか? 違和感がすごいですし、リリーさんのことは尊敬していますので」


 別にカレンを尊敬していないというわけではない。むしろすごい人だと思っているがどちらかといえば、上司というより同い年の友達の雰囲気の方が強い。


「! えぇ、かまいませんよ。私も敬語のほうが自然で楽な人なので」


 そうだ、この際リリーさんの考えとかも聞いておこう。リリーさんはカレンの書類仕事の手伝いをしているみたいだし、なにかいい案が思い浮かぶかも。


「そういえばリリーさん、カレンの書類仕事についてなんですけど、もう少しなんとかならないんですか? 例えば新しい人を雇うとか......」


「新しい人ですか......難しいでしょうね。そもそもマオさんを雇ったこと自体私としては驚くべきことだったのです」


「なんでですか?」


「知らないのですね............昔の話になりますがよろしいでしょうか?」


「え? まぁはい」


 リリーさんが暗い雰囲気をまとったことで聞いてはいけないことだったかなと思いつつも、話す覚悟をしているリリーさんの意思をくみ取って聞くことにした。


「二年前のことです。王都で革命軍による革命が起きました。その時、前サンライト公爵家当主......お嬢様の父上は王側として革命の鎮圧をしていました」


 まぁここまでは普通のことだと思う。仕えている王を守るための行動だし......雇わない理由はこの後かな?


「サンライト公爵家は元々武力によって名を上げた貴族です。今も街の警備や治安維持を仕事としていますし、大昔の国家間の戦争ではとても活躍なされたとか......その使用人たちも」


「使用人も?」


「はい。問題は革命の時、サンライト公爵家の使用人たちの大半は革命軍側で参加したことです」


「!! マジっすか!? 当主さんは前王の陣営なのに!?」


 あまりのことに一瞬敬語を忘れてしまった。無理もないでしょ使用人たちがしたことは完全に裏切り行為。当主と前王を裏切ったのだから。


「なんで裏切ったんですか?」


「......前王に対して不満を持っていたからです。前王は歴代屈指の愚王と呼ばれて、自らの気に入らない者がいれば即処刑し、悪政を敷き国民たちの生活は貧しくなる一方......貧しさから土を齧る国民たちを見て使用人たちは我慢ならなかったのです」


「それは......」


 ここまで聞くと革命軍の方が正しいように感じる。むしろ前王の方についた前当主の方に違和感がある。けど実際、王が変わったから革命は成功したのかな?


「前当主はなんで前王側についたんでしょう?」


「それは......私にも分かりません。お嬢様なら知っているかもしれませんが」


「そうですか......今は王が変わっていますし革命は成功したってことでいいんですか? 前当主さんは......」


「結果的に言えば革命は失敗しました。しかし、前王は革命の際に今の王である息子のハウンド殿下によって排斥されました。前当主様は......革命の際に亡くなりました............他ならぬ元使用人たちの手によって」


 私はその言葉に絶句してしまう。今の当主がカレンのことから前当主になにかしらあったんだとは思っていたんだけど、まさかカレンにそんな過去があったとは......重すぎる。


「そのあとは一人娘であるお嬢様が当主となり、残った私以外の使用人を全員解雇し、新たに雇うこともしなくなりました」


「リリーさんは辞めさせられなかったんですか?」


「はい、前当主様も元使用人たちもお嬢様と私は革命の時には関わらせないようにしていたみたいで......私は元々お嬢様の専属メイドだったので............恐らくお嬢様は裏切られるのを恐れているのかと。15歳という若さで当主となったお嬢様が自分の身を守ろうとする防衛本能みたいなものかと」


 そう言ってリリーさんは話を締めくくった。表情は変わらないが悲しそうな雰囲気を出している。リリーさんも当時は元使用人たちが革命に参加すると教えられていなかったんだよね......。信頼している人が自分に何も知らせずに危険なことをするってなったら、そりゃ悲しい。革命なんだから失敗すれば死刑だろうしね......


 前当主は貴族として王国を守るために尽力した、元使用人は国民を救うために国を変えようとした......どちらが絶対的に悪いとかはない。だからやるせなさとかもあるんだろうなリリーさんもカレンも。


「なので使用人を雇うことはしていないんです」


「そうなんですね......あれ? じゃあなんで私雇ったんでしょうか?」


「......お嬢様は言ってましたよ、街中で青年を捕まえるのに協力してもらったって。その時にマオさんの優しさに惹かれたと。お嬢様も信頼できる人が私以外に欲しいんですよ」


「あれは......まぁ困ってそうでしたし」


 一番の理由は職場探しだったんだけどなぁ......まぁ助けてあげたいって気持ちがなかったわけではないが。


 リリーも監視が一番の理由ということは伏せて話している。お互いが一番の理由を伏せて話している。だが話している内容には嘘は一つもない。


「うーんそうですか......どうしよ」


「あの私からも一ついいですか? なぜそこまでして誰かの役に立ちたがるんですか?」


「あー......別に誰かしらの役に立ちたいってわけじゃないです。ただ......恩を返したいそれだけですよ」


 マオは自分のことを善人だとは思っていない。恩には恩を(あだ)には仇を返す、そんな普通の人間だと。もっともそれは少し違うのだが。


「むしろ今の話を聞いて何とかしてあげたいって気持ちが強くなりましたよ」


「!......そうですか、でしたら私にも手伝えることがあれば言ってくださいね」


 リリーさんの口角が少し上がった気がする。ほんのわずかだけど。激レアじゃない? あのリリーさんに表情の変化が起きるなんて。そんな大層なことは言ってないんだけどなぁ......。


 リリーさんの申し出はありがたいが、これ以上リリーさんの仕事を増やすのもよくないと思う。泣きつくのは最後の手段。必要になれば言いますねと言い会話を終わる。そのままリリーさんは洗い場に併設されている調理場にて夕飯の支度をする。私も洗い場をあとにし、次の清掃場所へと向かう。とりあえず仕事をしつつ考えよう。




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△




「まぁそんな都合よくいい考えが思い浮かぶはずもなく......」


 夜、仕事を終え風呂やその他のことをしたマオは体操服姿で、机に頬杖をつきながら椅子に座って考えていた。


「そもそも私が文字を覚えて手伝ったとして、私が見ちゃいけないような書類とかあるだろうし............いや、そうでなくとも書類の整理とかはできるか。といっても......」


 そう目下の問題はマオが文字を読めないことにある。今机の上にはリリーさんからもらった文字に関する本があり、それを解読しているがこの数日で進んでいるとはいえない進捗だった。分かった文字は片手で数えられる程度とてもじゃないが文章なんて読めるはずもない。


「うーん......この世界の文字ってひらがなとか漢字よりアルファベットに近い感じなんだよね~......。けど文章の繋がり方とかは英語より日本語に近い......異世界の文字って感じ」


 リリーさんに教えてもらうのは最終手段。カレンに教えてもらうのは論外。異世界に来たばかりのマオにとって文字を教えてくれる頼れる人なんて他には......


「......いや、いるじゃん」


 マオの脳内にある人たちと”閃き”が思い浮かぶ。もちろんこの世界の文字は覚えるつもりだが、一日で完璧とまではいかないだろうな~。だけどこの方法なら明日から私でもなんて書いてあるか分かるようになる。


 具体的な方法を思いついたマオは部屋の明かりを消し、布団にもぐる。


「さーて、正しく()()()()といきましょうか」


 そういってマオは夢の世界へと旅立った。




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△




「マオさま、お待ちしておりました」


「あれ? 今日はトルネの番だっけ?」


 学校の体育館くらいの広さを持つ部屋に降り立った私は、目の前にトルネがいるのを確認する。この場所でいつも魔法に関する練習をする。今日は別のことをするつもりだけど。だけど、今日はソティスに教えてもらう番のはずだ。ワンツーマンで魔法を教えてもらうのだが、これは他の魔女たちがいると教える方向性などで険悪な雰囲気になって最悪の場合、喧嘩に発展してしまうからだ。だが、今日教える担当のソティスがおらず、トルネがいることに不思議に思っているとトルネが私に近づいてきて説明してくれた。


「あぁソティスさんなら私の”混合魔法(デュアル)”で今出禁にしています」


「いやなんで??」


 まったくもって意味が分からない。ソティスなんかした? まぁやらかしてる可能性は否定しないけどさ......


「ソティスさんは昼間にマオさまとお話したじゃないですか。立派な抜け駆け行為ですよ」


「それだけ!?」


「はい。ちなみに他の魔女たちからも了承はいただいています」


「おぉう......」


 くそしょうもない理由で出禁にさせられてるのねソティス......。めっちゃキレてそうだなぁ......。あとでボコられても知らないよ? あとトルネも一言私に言って欲しかった。私の夢なんだし。


「ソティス怒ってないの?」


「それはもう怒っていますが、私の混合魔法で一生出禁にしますよと言ったら、納得はしていませんでしたが、大人しくなりました」


「さいですか......」


 なんというか、トルネのことを腹黒って言ってた理由が分かる気がする。魔女の中で一番強いのはソティスなんだろうけど、一番怖いのはもしかしたらトルネかもしれない......。


「では、今日も魔法の特訓といきましょう!」


「あー、それなんだけど今日から魔法の練習と一緒にやってほしいことがあるんだけど」


「? なんでしょう?」


「実はこの世界の文字の読み書きを教えてほしいんだけど......」


 ぶっちゃけ、人に教えてもらうのが一番早いよね新しい言語とか覚えるの。しかも、寝ている間に覚えられる! これほど効率的な方法があるだろうか。いやない。............もしかしたらあるかもだけど。


「なるほど......私でよければ、ぜひ教えましょう!」


「ありがと。あと、もう一つできると思うけど、お願いがあって......」


「まだなにか?」


「実は......」


 そう言ってトルネに私が思いついたことを話す。それを聞いてトルネはできると言ってくれた。これで全てのピースはそろった。


 私はいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべながら明日を楽しみにした。




マオは元の世界では友達もおらず、育ての親からも必要とされていなかったので、無意識に誰かに必要な存在でありたいと思っています。

ちなみにトルネの混合魔法は”夢”に関するものではなく”魂”に関するものとだけ言っておきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ