【魔女】はヤバい奴への称号
「なんで私の名前を......ていうかあなたは?」
「あぁそうだね、私の名前からだね。私はソティス。【魔女】と呼ばれるものだよ。それと名前についてだけどまだ秘密かな......。説明すると難しいし。もし知りたいなら、”過去の旅行記”だっけ? その魔道具を見つけてくるといいよ」
魔女ってこの世界にいるんだ......けどカレンさんみたいに魔法の使える女性とはニュアンスが違いそう。あと初めましてではないとか、なんで私の夢にとか、とりあえず聞きたいことが山ほどある。
「にしても......」
「な、なんですか?」
そんなことを考えているとソティスさんが私の方に近づいてまじまじと見てくる。夢の中なのになにか変なところがあるかな?って思ったけど、そういえば私メイド服着てたなって思い出した。ほんとになんで私メイド服着てんの?
「やっぱりかわいいね。メイド服着ているところ見た時から動悸がやばかったんだよ。ほんと食べちゃいたい」
なんか気色の悪いこと言ってるし......ていうかなんで私がメイド服着たところ見てんのよ。確かにリリーさん案内されている途中、試着とかさせてもらったけど......
「メイド服着ているところ見てたんすか......屋敷に人は私含めて三人って話だったはずなんすけど......」
「そりゃ私は一日中マオのこと見てたし、あと私はあの屋敷の人間じゃないよ。今ちょっと封印されてて動けない状態だし、今はマオの脳内に直接干渉しているだけだよ」
おい今とんでもないこと言わなかった?一日中見てたとか、脳内に直接干渉してるとか。ストーカーじゃん。勘弁してよ、ただでさえ異世界に来て問題も山積みなのに......。
ん? 待てよ、脳内に直接干渉してるって言ったな。まさか......
「この夢の中で私がメイド服を着ているのって......」
「私のせいだね。あと部屋がこんな風なのも私の趣味」
「なにしてくれてんの!?」
人の夢を勝手にいじくらないでもらえますかね!? てか脳内に直接干渉されて私大丈夫なの!?
「はぁぁぁぁ~、やっちゃったものは仕方ないからもう何も言わないけど、まだまだアンタに聞きたいことがあるんだけど?」
「あぁ、マオのお願いなら何でも聞くよ」
「じゃあ次は......」
「ここかぁ!!!!」
そんな掛け声とともに扉を開けて入ってきたのは、露出度の高い服を着た褐色肌の女性。なにより茉央の目を引いたのは、露出度の高い服でも褐色肌でもなく先の尖った長い耳であった。
これはもしかして”エルフ”というやつでは? あの先の尖った耳とか絶対そうだよね。触ってみたいなぁ~
ファンタジーでは定番のエルフを見て、若干テンションが高くなった茉央だったが、それに気にすることなくエルフの女性はソティスと言い合いをしていた。
「およ? 随分早かったね、マオの脳内に干渉してある部屋に閉じ込めておいたのに......」
「あぁ、あんたにマオの夢に入った瞬間、すぐにあたしたち四人を閉じ込めたからねぇぇぇぇ。トルネがいなかったらもっと出るのに時間がかかってたよ」
「トルネか......あぁ確かにあの腹黒の混合魔法なら今の状況にピッタリだね。どうでもよすぎて忘れてたかな」
「覚えるだけのおつむがなかったの間違いじゃねーのか」
「ふふふ、布切れを纏っているだけのような服を着ている、あなたの方がおつむが足りていないんじゃ?」
「ははは」
「ふふふ」
おぉう......なんかすごい険悪な感じ............二人とも口では笑ってるのに、目が笑ってねぇ......
「ほら、そんなくだらないことを言っている暇があるならあなたもマオに自己紹介をしたらどうだい。もちろん、頭を地面にこすりつけて土下座しながら無様にね」
「だれがするか。......けど自己紹介が必要なのはそうだな」
そう言いエルフの女性がこちらに歩み寄ってくる。その歩き姿も綺麗であり、一種の芸術のようにも感じられた。そうこうしてるとエルフの女性は私の目の前にまで来た。
「え......と......あたしはサラ......サラ・テラネット......しゅ、種族はダークエルフででで......と、特技は魔道具作りで......す、好きなことは......えーと、その......ま、まままままおのことがががががががが......」
「コミュ障か!?」
なに? あんな凛々しい顔と強気な感じだったのにコミュ障なの!? まぁけど赤面しながら恥じらっている姿はかわいいけど......
「なにあなた、好きな人の前ではそんな風になるのかい?」
「うるせー!! あんたは黙ってろ!!」
「それより他の三人は?」
「あん? 手分けしてあんたのことを探してたからもうすぐ来るんじゃねーの?」
「ここにいるわよ」
「!?」
話に入る暇がなく空気となっていた私の隣から、可愛らしい声が聞こえ、隣を見るとゴスロリ風のドレスを着た、長い黒髪が特徴の人形のような女性が紅茶を片手に持ちつつソファに腰かけていた。いつの間に居たんだ......全然気づかなかったんだけど......
「ふふ、初めましてよね、ママ。私はペルリア・ホース。ペルリアと呼びなさい。」
「あ、初めまし、じゃない!!なに!!ママ!?だれが!??」
「あら? そんなのあなたしかいないじゃない。ママ」
「まだ17歳なんだが!!?」
拝啓、天国の両親へ。私は17歳にて一児の母になったそうです。............んなわけあるかぁ!!
何? 【魔女】ってヤバいやつしかいないの? 今出てきただけで、ストーカーとコミュ障とおぎゃりの三人なんだが? 後二人もいるみたいだし、その二人はまともであってお願い!?
「まったく、部屋に閉じ込めるとはどういう了見かしら?」
「だってあなたたちマオと二人きりになろうとしたら邪魔してくるじゃないか......」
「当たり前だろ!!抜け駆けは許さねぇかんな!!」
「こればっかりは同意ね。むしろ私のママなのだから独り占めする権利は私しかないわよ?」
「んな権利ねーよ」
「そうだよ!マオは私の嫁だよ!」
「それもちげぇよ!!」
あの私の権利は私にしかないものでは......? 勝手に嫁とかママにしないでくれます? ていうかコミュ障エルフの人。この中だとまとも過ぎない?
「あら~?見つけたわ~マオちゃん!久しぶりね~」
そんな間延びした声をしながら部屋に入ってきたのは、女性にして高すぎる身長を持つ、赤髪の女性だった。あと、ある部分がとてもでかい。足元とか見えないでしょあれ......
そうして赤髪の女性の一部分に目を奪われていると、赤髪の女性が私の前に来てそのままハグをしてしまった。
「マオちゃん。お母さんがいない間も大丈夫だった~?これからはお母さんがマオちゃんのことを守ってあげるからね~」
「んぐ!? んん!?」
やばい、暴力的な質量に押し潰されそう......けどいい匂いする......。ていうかこの人自分のことお母さんって言った? 今度はペルリアと逆バージョンかよ......
「グラス、マオが苦しそうだよ。それとあなたも名前くらい言ったらどうだい?」
「あら~? ごめんね~マオちゃん。私はね~グラス・メークルよ~。マオちゃんのお母さんだから、存分に甘えてもいいのよ~?」
「そんな戯言は聞かなくていいわよママ」
「あら~ペルリアちゃん、醜い魔獣に変えられたいの~?」
「あなた如きに負けるわけないでしょう私が」
「あららら~」
「ふふふ」
さっきもこの展開見たって......。だが不味いぞ、もう残り一人しか居ない。頼む!まとも枠であってくれ!あと誰でもいいから私の話を聞いて......
「グラスさん?ペルリアさん?喧嘩はよくないですよ?」
その声とともに部屋に姿を現した女性は、修道服を着た茶色のボブカットの髪型をしていた。絶えず穏やかな笑みを浮かべていて、人当たりのよさそうな雰囲気を出しているが、果たして大丈夫なんだろうか? たとえまとも枠だったとしてもこの四人をまとめられているのだろうか?
「二人ともここはマオさまの夢の中なんですから自重してください。マオさまが困っています。一番困惑しているのは、マオさまなんですから聞きたいことが山ほどあるでしょうに......まずはマオさまに説明するのが先では?」
「......しょうがないわね一旦引くわ。ママのためだしね」
「こちらのセリフです~」
「おぉ......すごいまともだ......ありがとうございます、えーと......」
「あっ!私の名前ですか? まだ言っていませんでしたね。私はトルネ・ミュージー。元エル教のシスターの【魔女】です。よろしくお願いしますね!」
「こちらこそどうも......」
何この人めっっちゃいい人では?喧嘩の仲裁やら、こっちにも気を遣ってくれて感謝しかないんだが?この人がいるなら話も円滑に進みそう......。今のままだと一つの話をしている最中に十回の喧嘩は発生しそうな感じだし......。
「マオ。騙されたらダメだよ。トルネは今、猫を被っているけれど本性は私たちの中でも一・二を争う悪辣な腹黒女だから」
「あなたにだけは言われたくありませんねソティスさん。全人類を殺そうとしたあなたには」
「えっ」
今なんて? 全人類殺そうとした? 魔女ってそんなことできんの......
「だってそのほうがいいじゃないか? あんな人類どもはマオ以外滅べばいいんだよ」
「まだ諦めてねーのか」
「あぁ、もちろん。それにトルネ、あなたよりましでは? あなたは世界をマオで満たすとかなんか言って、私たち全員ドン引きさせたじゃないか」
「............うん?」
世界を私で満たす? ナニイッテルカヨクワカンナイ? やばい......夢の中で起きたことだけでキャパオーバーしそう......誰か助けて......
「あなたと違って命は大切にしようと思っているので。......世の中にはたくさんの不幸がまみれています。それをなくすには、不幸より多くの幸福と人と人との繋がりが必要なんです。しかし、人と人との繋がりなんてできるわけがありません。人は皆、相手の裏の顔を探そうとする生き物です。そこで私は考えました。............すべての生き物がマオさまになればいいのだと!」
「うん、それはおかしい」
「マオさまは私の救世主なんです!人に寄り添う善性と可憐な姿!全生物がマオさまになれば世界から不幸はなくなり楽園が生まれるのです!」
「こういうことを世迷い言って言うのかしら」
「激しく同意です~」
わーすごーい、私のトルネに対しての好感度がバンジージャンプ並みに急降下したんだけど? バンジージャンプとの違いは上に戻ってこないところかな?
「......語り終えたかな? それじゃあ、あなたたちは出ていってもらおうかな。話の邪魔だから」
「それはこちらのセリフね。家族水入らずの時間を邪魔しないで頂戴。ねぇママ?」
「家族じゃないです」
「そうです!マオさまは救世主です!」
「それも違います......」
「え?」
あぁもう話が進まねぇ!? なんなんだコイツ等は!? 人の夢に勝手に入り込んできて好き勝手しやがって!? 私をストレスでハゲさせたいのか!?
「落ち着いてね~マオちゃん。お母さんがいるからね~リラックスしてね~」
「あなたも悩みの種の一つなんですけど?」
「ていうかもう全員で説明するしかないだろ......誰も出ていかねーんだ「”ダルク”」し......っておおぅい!?いきなり魔法ブッパなしてくんな!?」
折衷案というか諦めに近い提案をしたサラに、ソティスが黒いもやっとした玉を投げつけていた。顔面に向けて投げられたそれを、しゃがむことで間一髪回避していた。黒いもやはそのまま壁に当たり、消えてしまった。あれは闇属性の魔法かな? 当たったところに大きなひびが入っている。そんな威力なさそうな見た目で結構えげつない。すると、いきなり攻撃されたサラがソティスに対してキレていた。
「いきなりなにすんだ!!」
「なんか自分だけまともアピールが腹たったから。あともう全員ぶっ殺せばいいかなって......」
「あぁん!? 上等だコラァ!! 串刺しにしてやる!!」
そういってサラのてが光ったと思うといつの間にか二本の剣が握られていた。あれも魔法なんかなぁ......この世界の魔法って結構無法な感じがある。何もないところから物質まで生み出せるとか、完全に自然法則を無視している気がする。そんなことを考えていると流れ弾がペルリアやグラス、トルネにまで当たったのか、全員が魔法やら打ちまくるカオスとなっていた。私の方に魔法が飛んでこないのは、こちらを気にしてるのかな?
まぁこんな危ないところに居たくないし、夢の中で魔法に当たったらどうなるか分からないけど、一旦私が目覚めた部屋に避難した。隣の部屋からヤバい音とか鳴っているけど............とりあえず、あの喧嘩が終わるまではここに居よう............
なんなら、このまま夢から覚めてもいい......本当に......切実に......
まだ夜は真っ只中ですよ茉央。
ちなみに茉央が着ているメイド服はヴィクトリアスタイルというものです。
あと、魔女のある部分のランキングとしては
グラス>サラ>ソティス≧ペルリア>トルネの順番です。
ちなみに茉央は着やせするタイプなので、サラとソティスの間くらいです。




