王族が隠したもの
次回からマコト戦になると思います
楽しみにしてた方すみません……
「どこにあるのでしょう……」
王都で革命軍の暴動の真っ最中、王城の大量の本が保管されている部屋にて、一人の侍女が何かを探していた。
その侍女はマオたちが王城に来た時にお茶を出していた女性だった。侍女は時折気になった本をパラパラとめくりながら、本棚から全ての本を取り出して空っぽにしたり、本棚と壁の隙間を確認したりしていたがお目当てのものは見つからなかったようだ。
「ここではありませんか……」
「一体なにが?」
「!!」
侍女に声をかけたのは王城で警備をしている王国騎士団団長、ルート・ホープだった。彼の目からは疑うような視線を向けられ手はいつでも剣が抜けるよう柄を握っていた。
「ルート団長、少々調べ物がございまして……、ある本を探していたのですが、見つからなくて……」
ルートの様子に侍女は動揺するのではなくいつも通り淡々とした返答をする。だが、ルートはすでに気づいていた。
「…………下手な芝居はいい。――お前は誰だ」
「……まぁ、やっぱりバレてるよね」
ルートが確信をもった声色で侍女に問い詰めると侍女はあっさりと認めた。しかし、侍女は自分が敵だとバレたのにまるで想定内という態度で笑っていた。
「…………”ドッペリアル”みたいに見える姿を変える魔法や姿そのものを変化させる魔法じゃない。…………多分洗脳系の混合魔法」
「せいか~い」
侍女はわざとらしく大きな拍手をしている。そんなふざけた態度にはルートは目もくれず、自分が何をすべきかを考える。
(…………洗脳系ならあの侍女にかすかにまとわりついてる別の魔力。あれが洗脳した本人の魔力…………ならその魔力の出どころを探る)
ルートの魔力感知の範囲は王都をすべてカバーできる範囲である。その広さをもってすれば洗脳した犯人を見つけることができると踏んだ。実際それは正しいのだが……
「分かる、分かるよ。キミは今、ボクのことを魔力感知で探そうとしているね」
「…………だったら?」
「キミはボクのことを見つけるだろうね。キミの魔力感知の範囲は王都全体を感知できるって知ってるから。だからこそ…………」
ルートは侍女を洗脳している者の居場所を見つけた。それは王城の一室……、ここからは少し遠く離れた場所にいた。それの他に…………
「っ!?」
「――いらない情報まで拾ってしまう」
ルートは気づいてしまった。魔力感知の範囲……、ハウンド陛下がいる場所に何者かが近づいていることに。
◇◇◇
「貴様……革命軍か?」
「……」
玉座の間にてハウンドと謎のローブを着た賊が相対する。ローブを着ている賊は深くパーカーをかぶっているので顔も見えず男か女かも判別できない。
ローブの賊は話しかけるハウンドに何も答えず、懐から筒のようなものを取り出したかと思うと、それが変形していき大鎌へとなった。
「ふんっ……敵には何も情報を与えないというわけか。いいなおまえ……気に入った。おまえオレのもとにつくつもりはないか?」
「……」
ハウンドの勧誘にローブの賊は鎌の切っ先をハウンドへと向け、拒絶の意を表す。
「ふん……ますますいい。だが、これ以上の会話は無駄なようだ」
ハウンドは玉座の後ろに飾ってある剣……、宝剣と呼ぶにふさわしいきらびやかな装飾のされた剣を手に取り構える。
「言っとくがオレは強いぞ」
そのまま賊へと襲い掛かった。
◆◆◆
「キミなら分かるだろう?ハウンドじゃボクが差し向けた刺客に勝てない。キミがとる選択は二つのうちどちらか。一つ、キミがボクを捕まえるまでハウンドが生き残ると賭けて、ボクの方へと来る。二つ、ボクを放って今すぐに玉座の間へ行きハウンドの安全を確保する。さぁ、どっちだい?」
「っ……」
ニヤニヤしながら問いかけてくる相手に奥歯を噛みしめながら、どのように動くか考える。ハウンド陛下は並みの騎士じゃ敵わないほどに強い。すぐに殺されることはない。だが……
「…………!!」
「!?…………ぐっ…………」
一瞬で侍女との距離を詰め、額をこずく。そのまま自身のデュアルを発動し、侍女の洗脳を解く。洗脳が解かれた侍女は気を失い、前のめりに倒れる。それをキャッチし壁へもたれかけるように座らせると、すぐさま部屋を出て、廊下を走り抜ける。
行先は…………玉座の間だった。
◇◆◇
「あ~あ、解除された。せっかく王城に忍び込ませた子だったんだけど」
王城の一室にてルートに侍女の洗脳を解除されたことに気づいたナイラはそう言葉をこぼした。だが、その表情はこぼした言葉とは合っておらず、笑顔のままだった。
ナイラの混合魔法【虚言癖】はナイラな魔力にあてられることで相手を洗脳できる魔法である。洗脳された相手はまるで初めからそうだったかのように、意識を改竄されてしまうので自らが洗脳されていることに気づかない。また洗脳した相手を操る効果範囲に制限はない。
ここだけ聞けば、なんて強いデュアルだと思うかもしれないが、もちろんデメリットもある。まず、相手を洗脳するまで時間がかかること。一瞬で洗脳とかはできず、自分より強い者はそもそも洗脳できないことがある。二つ目に頻繁に洗脳をかけなおす必要があること。洗脳するときにつけた魔力は時間が経過すると霧散していくため、定期的にかけなおす必要がある。
ナイラは自らのデュアルを意外と使いづらい魔法という結論にいたっていた。
「ま、お兄様と話してる間にこっちは正解を引いたっぽいけどね」
ナイラの目線には隠された地下へと続く階段があった。侍女を操りながらルートと会話している間もナイラは、部屋と部屋を行き来してある物を探していた。そして今、ある部屋の謎を解くと、床から地下へと続く階段が出現したのだ。
「謎を解くギミックがあったとはね。だけど、あの程度の謎解きじゃボクには時間稼ぎにもならないよ」
ナイラは鼻唄を歌いながら薄暗い階段を下りていく。中は遺跡のような作りになっており、綺麗に石レンガが並べられた空間だった。ナイラが一段一段下りていくごとにコツコツと足音が響き渡る。
「さてと急いで目的の物を回収しないとね。オドがお兄様の気を引いてるとはいえ、時間をかけすぎるとこっちに来てしまうし……。オドは上手くやってるかな~。お兄様が近づいて来てることは分かるだろうし、適当なところで逃げるだろう」
自らがけしかけた部下を心の中で雑な扱いをしながら階段を下りていく。そこに自分のまとめている物があると信じて……
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『いいかいカレン、絶対に誰かを裏切るという行為はしてはいけないよ』
私が幼いころから国一番の忠臣と呼ばれたお父様がいつも言っていた口癖だった。体が弱かったお母さまが私を生んだと同時に亡くなったあと、使用人たちと一緒に私を育ててくれたお父様を尊敬してた。その口癖を初めて聞いたときも当たり前のことだと思い、私もお父様のようにこの言葉にふさわしい人になりたいと思っていた。あの日までは……
お父様が革命のときに裏切った使用人に殺されたと聞いて、お父様の口癖が酷く薄っぺらいものに感じるようになった。国を裏切らないために、自分が裏切られたら世話がないと思った。
だから私はお父様の二の舞にはならないと誓った。私が信用できるリリー以外の使用人は全員辞めさせたし、ほとんどのことを私一人でするようになった。全部一人でするんだって思ってた。だってもう……誰も……
『ただお嬢様に休んでほしかっただけらしいです。恩を返したいとも言っておられました』
私は…………どうしたらいいの…………
「ぜぇ……はぁ……、あー疲れた……」
所々ほつれがある服と少々の擦り傷を負ったマコトが肩で息をしていた。そのマコトの目の前には……
「っ…………」
頭から血を流して地面に倒れているカレンがいた。まだ意識があったが、もはや体はあまり動かない。
アズさんの仇を取ろうとマコトに挑んだものの、結果はこのありさま。悔しさに歯を食いしばらせながら、せめてものの抵抗でマコトの方を睨みつける。
「さてと……じゃあ殺すか」
マコトはなんてことないように殺すと言うと、私の方へと歩み寄ってくる。死が近づいてくる感覚に陥りながらも、私が考えたことは後悔したことばかりだった。あの時はどうすればよかった。いったい何が正解だった……そんなことばかり考えていた。当主になってから右も左も分からないままどうすれば……
マコトがもうすぐで私のもとにたどり着く。あいつは私の首でも掴んで、そのままデュアルで私を腐らせる気だろう。アズさんと同じように
「悪く思うなよ……仕方なかったんだ」
そう言ったマコトは私の方へと手を伸ばす…………
「ばんっ」
次の瞬間、私とマコトを阻むように炎の球が地面に着弾する。私もマコトも驚いていると、急にマコトの体が吹き飛ばされ、近くの家の壁に叩きつけられる。いったい何が……と思っていると、空から大きな影と羽が舞い降りてくる。
「白馬に乗ってるわけでも、王子様でもないけど……――助けに来たよカレン」
空から降りてきたのは、リファにまたがりながら魔導銃を手にしているマオだった
ハウンドの勧誘に乗っていたら、油断したところを『組織を裏切るような忠誠心の低いものなどいらん』と言って殺されてました。
混合魔法【虚言癖】 使用者:ナイラ・ホープ
闇と光の混合。相手を洗脳できる魔法。




