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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第一章 転移編
24/33

”リファ”

今回は少し短いです。

 みんなはグリフォン、もしくはグリフィンという生き物について知っているだろうか。恐らく現代の世界の人たちは、鷲か鷹みたいな上半身とライオンみたいな下半身を持つ、伝説上の生物を思い浮かべるだろう。その生物がこの異世界に存在するとなったらどうだろう?


「ここだ。この中に幻の魔物…………グリフォンこと”リファ”がいる」


 途中で合流したルートと一緒に、王城の敷地内にある離れに来た私たちは、ほとんど一軒家と同じくらいの大きさの小屋の前にいた。というか普通に王都で建っている一軒家と遜色ない。王族にもなるとペット小屋も庶民の家と同じくらいになるらしい。


「幻の魔物……なにかそう呼ばれる理由があるんですか?」


「そうね、人間が乱獲して個体数が少ないこともあるんだけど…………一番の理由はその”固有魔法”にあるわ」


「”固有魔法”?」


 固有魔法というのは一部の魔物が持つ、その種族しか使えない魔法のことらしい。ハンターウルフの電気を纏った牙がそれにあたるとか。


「グリフォン…………その種族の固有魔法は――【生死の交換】。自分が死ぬ代わりに、死んだ生物を健康な状態で生き返らせることができる魔法よ」


「はぁっ!?」


 思わず大きな声で反応してしまった。やば、王様もいるのに……でも気にしてなさそう……かな? けど驚いたって仕方ないじゃん、使った本人は死ぬとはいえ、誰かを蘇らせることができるんだから。この世界にある魔法の中でも破格の性能なんじゃないかな?…………ていうかもしかして……


「乱獲されたのってそれが理由?」


「そういうこと。死者を蘇らせる魔法を狙われて、人間はおろか他の魔物からも命を狙われたわ」


「えぇ……」


 なんていうか…………うん。どうしようもないか、生きている以上どんな生物も欲望は抑えられないものだし。グリフォンたちは可哀そうだと思うけど。


「話は終わったか、なら本題だ。おまえを呼んだのは、その魔物の声が分かる混合魔法(デュアル)を使いたいからだ」


 グリフォンについての説明が終わった段階で王様が話に入ってくる。カレンに教えてもらってるときには完全に空気だったからね、王様。ルートさんはそもそも話に入ってこないし。


 私が呼ばれた理由って【声帯模写】の副次効果の方が目的だったんだ。私を通訳としてグリフォンと会話したいってところかな?


「厳密には違うんですけど、そのリファ?と話したいということですか?」


「そうだ。通訳しろ」


「いいですよ。やっぱり世話をしている魔物が何を考えてるか気になりますよね」


「いや違う。こいつのことは追い出そうと思っている」


「え゛」


 幻の魔物だから保護して飼ってるんだと思ってたんだけど!? ていうかそんな魔物追い出したら、また狙われるんじゃ……


「ふんっ、王国騎士団、初代団長……”ミゼーア・ホープ”の使い魔にして、民の間では守り神だなんだと言われてるが、オレにとってはほぼニートにすぎん。リファが王国を守るために動くことなど滅多にない。餌代もタダではない、国の予算が少ない今無駄は省かなければならん」


 んー、まぁ王様の言っていることも分かるんだよなー。お金がない辛さは人一倍知ってるつもりだし。けど、初代団長の時からいるって、やっぱり魔物は長生きだったりするんだ。グリフォンが特別なだけかもしれないけど。あと、今気づいたけど、ホープってルートさんの名前と一緒じゃん。もしかして子孫だったりするのかな?


(てことはソティスとも戦ったのかな? 初代騎士団長の使い魔みたいだし。ソティスはなにか知ってる?)


(……………………さぁ、知らないね)


 ?今なんか間のようなものがあった気が…………。気のせい?


 ソティスと脳内会話をしているうちに話がどんどんと進んでいく。


「今の時間だとどうせ寝てるだろ、たたき起こして……」


『――だれだ……知らぬにおい…………だが懐かしくもある……』


「!!」


 小屋に入ろうとした私たちの耳に聞こえてきた声、何を話しているかは私にしか分からないが、ここにいる全員が小屋の方から聞こえてきたことだけは分かった。私たちが声のした方を見てると、その声の持ち主が姿をあらわした。


 伝説のとおり、鳥の上半身とライオンのような下半身をもち、背中に生えた大きな翼はきちんと手入れがされているのか、それ自体が美術品にも思えた。


 グリフォンことリファが私の方に近づくと匂いを嗅ぐように、こっちに鼻を近づけてくる。その間も私の顔をまじまじと見てきて、若干怖い。一応魔物だからね、この間魔物と命の追いかけっこしたばっかだし。カレンたちもリファさんの様子を不思議がって、私たちのほうを見てくる。


『――そなた名前は?』


「えっと……安里茉央ですけど……」


『…………知らぬ名だ……だが、聞いたことのある響きでもある。……それで何の用だ、此度の王よ』


 私をひとしきり観察し終えたあと、名前を尋ねられた。それに答えると、リファさんが何かを考えていたけど、答えがでなかったのか、王様の方に話しかけた。といっても王様はリファさんがなんて言ってるか分からないから、必死に通訳したけど。


「悪いがお前には王城から出て行ってもらう。今はお前を養えるほどの金がないからな」


『…………それは困るな。今しがたあるものに興味ができたのでな』


 そう言って私の方を一瞥したリファさん。なんだろう、魔女たちもそうなんだけど初対面で好感度が高いのはなんでなの? ずっと怖いんだけど、見ず知らずの人たちから私のことを知ってるような反応されるの。正直、カレンやリリーさんくらいの対応が一番安心する。


『別に食い物を用意しなくてもよい。我も狩りはできるのだからな。野生の魔物でも狩ればよい。ここに住まわせるだけで十分だ』


「…………それでいい。だが、好物の蜂蜜酒も出さんからな」


『……………………よい』


 今めっちゃ考えたよね。心なしかルートさんより一回り大きいはずの体が小さくなったように見えたよ? そんなに酒が好きなの……


『茉央よ……そなたのことが知りたい。また会いに行こう……』


「え…………まぁ、休みの日や仕事の休憩中ならいいですけど……」


『分かった。それとこれからは普通に話してもよい。これから何回も会うのだからな』


 なんと幻の魔物とタメ口で話せる権利をもらっちゃったー。にしても、なんでただのメイドである私にかまうんだろう? 最初においとか言ってたけど、どこかで会ったとか? いや流石にグリフォンと会って気がつかなかったとかは考えにくい。あと言っておくけど、臭いとかは絶対にない、これでも身だしなみには気をつけてるつもりだから。


 リファが小屋に中に戻り、再び私たちだけになる。これで要件は終了かな?


「…………おまえはリファについて知ってたのか?」


「そんなことはありません。私自身も困惑しているので……」


「…………」


 そんな疑うような目線をくれないでくださいルートさん……。私が一番聞きたいんですから。


 そんなこんなで私とリファの初邂逅は終わった。






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