都市伝説は突然に
「お疲れさまでーす」
「はい、お疲れ~。また、木曜日にね」
「分かってますよ」
そう言いながら、バイト先であるファミレスの扉を開け、帰路につく。
今日はかなり人が入っていたなと他の同年代の学生と比べて小さい背丈を持つ、長い黒髪をポニーテールにした女子高生の安里茉央はそんなことを考えながら歩いていた。住宅街に入ったころには電灯も少なくなっており、月明かりが光源として機能するほどであった。
「流石に暗すぎるから電灯とか立ててほしいんだけどな~。…………ん?」
そうぼやきながら歩いていると見知らぬ路地を発見した。いつも歩いている見慣れた道であるのでこんなところに路地なんてなかったはずだ。好奇心とは無邪気なものだと思う。明らかにおかしいはずなのに覗いて見ようと思うなんて。先っちょだけなら大丈夫ってだれかが言ってた。
「いざ行かん、オカルトのその先へ!…………え」
路地を覗いて真っ先に目に入ってきたのは、黒い影。光を一切通さず、陽炎のように揺れていた。
あまりの光景に少しの間茫然としていたが、影から伸びてきた黒い手に腕をつかまれたことによって現実に引き戻された。
「っ!?ヤッバ……『ミツケタ』……は」
つかまれた手を振り払おうとしたときに黒い影から声が聞こえてきた。
『ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、ミツケタ、……』
「ヒィッ……!?」
こんな風に同じ言葉を投げかけられ恐怖を感じない者は少ないだろう。そうこうしていると体をつかむ黒い手は5本に増えており、影の中に引きずり込もうとしてくる。必死に抵抗したが、5本腕の筋力には勝てず、あえなく影に飲み込まれてしまった。
「なに……これ……」
影に飲み込まれてすぐに意識が遠のく感覚がする。その間もずっと影の声はうわ言のように『ミツケタ』を繰り返し言っていた。そして、意識が途絶える瞬間には
『今度こそあなたを……』
最後まで聞き取れなかったが、どこか悲しそうな声色に不安を感じながら私は意識を落とした。




