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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第一章 転移編
19/33

決着! そして…………

戦闘描写を書くのが本当に難しい……。他の作者さんたちはすごいですね。

『ふんっ!!』


『GAAAAAAAAaaaaaaaaaa!?』


 ハンターウルフたちと手を組んでナトちゃんと闘い始めて数分。最初の攻防で真っ正面から挑んでは勝てないという結論にいたった私たちは、ヒット&アウェイの要領でちまちまとナトちゃんにダメージを与えていくことにした。ハンターウルフたちは隙の大きい噛みつきはせずに、すれ違いざまに爪で切り裂いたり、一匹を回避盾のタンクとして運用したりしていた。


 私? 私はほら……、誰かが攻撃が当たりそうになったら岩を投げたりしてヘイトをこっちに向かせたりしている。まぁこれナトちゃんが理性を失っているからできることだけど。理性があったらダメージが入らない攻撃なんて無視してそのまま攻撃してるだろうし。…………正直言ってあんまり役に立ってない。ハンターウルフたちが優秀すぎるのが悪い。


 だが、あんな攻撃ではいつになってもナトちゃんは倒せないし、ナトちゃんが時間切れで戻ると、今度はハンターウルフたちが私の敵になる。ハンターウルフたちには時間切れについて教えてないけど、早いとこなにか考えないと…………


『――GRRrrrrrrrrrrrr!!!!』


「ッ!? マジッ!?」


『!?』


 ハンターウルフたちのちまちまとした攻撃にうっとおしくなったのか、ナトちゃんは背中に生えた翼を使って空へと飛び上がった。このまま逃げるのかと思ったら、ナトちゃんは空中から凄まじい速度で急降下しこちらに突っ込んでくる。


『しまっ!?』


 ナトちゃんの落下地点にはツインがいる。あまりの速さに驚愕して回避行動が遅れている。


「ちぃっ!?」


『きゃあ!?』


『GYAAAAAaaaaaaaSSUuuuuuuu!!!!』


 近くにいた私はとっさにツインを掴み、自分の方に引き寄せる。瞬間、私たちの近くにナトちゃんが落ちてきて、その衝撃波で私たちは吹き飛ばされ地面を転がる。


「ぐっ」


『キャッ!?』


『ツインっ!?』


『ツインちゃん!!』


 あ、あぶない……。あんなの喰らったら一瞬でミンチになる……。ナトちゃんが落下した場所はクレーターのようになっていた。私がその威力に苦虫を嚙み潰した表情になっていると


『あの…………その…………』


「うん? なに?」


『………………助けてくれて…………ありがとう…………』


「あー……どういたしまして?」


 ツインから助けたことに対するお礼をもらった。魔物でも感謝することあるんだ……。いや、それは失礼か。だってこいつらは一匹一匹自我があるし。


『俺からも礼を言う。仲間を助けてもらい感謝する』


「気にしなくていいよ。協力関係だしね。それにこれ以上のリタイアは流石に見過ごせない」

『…………そうか』



 ん? なんか言いたげな感じ……といっても問いただす暇なんてないんだけど。


『GAAAAAAAaaaaaaaaaa!!!!』


「でこれからどうすんの? ヒット&アウェイ戦法も空飛ばれたら意味ないけど?」


『――お前は気づいたか?』


「? なにに?」


『あの悪鬼が着地したときに足に怪我を負ったことを』


「!」


 エースの言葉を聞いて、すぐさまナトちゃんの足を見る。そこには空中に飛び上がる前にはなかった、傷がいくつもあった。


『あの速度で落ちてきたら、当然自分自身にもダメージがくる。すぐに追撃をしなかったのも足の痛みで出来なかったのだろう』


「なるほど……」


 私がナトちゃんを壁にぶつけた時と同じ感じか。やはり物理法則は偉大だね。


『空を飛んでる間は森の中に隠れれば大丈夫だろう。だが、あの攻撃をうまく使えば、奴を倒せるかもしれない。そのためには……』


「――誰かが囮にならないといけないってことでしょ」


 エースの作戦はこうだ。まず誰かを囮にし、ナトちゃんを空に飛ばせ、あの技を使わせる。そして怯んだすきに一斉に攻撃を仕掛ける。問題は誰が囮になるかだけど……


『リーダー! 自分が』


『囮は俺がやる』


『リーダー!?』


『え……』


『はぁぁぁぁぁ!?』


 エースの言葉にハンターウルフたちに動揺が広がる。正直いってエースがいないとあの群れはまとまらないだろう。もし、あの攻撃が躱せず、エースが死ねば烏合の衆となりはててしまう。


『なにいってんすかっ!!』


『お前たちではあの速度の攻撃をかわせないだろう。俺ならばギリギリだが躱せる』


『それだったらあの人間にやらせれば!!』


『その場合、あの獲物は逃げるだろう』


「まぁね」


 うん、流石にあれは避けれないからね。一旦逃げて漁夫の利を狙う方向にシフトチェンジする。


『――これ以上の犠牲は俺が許さん』


 エースの覚悟を知ったハンターウルフたちは群れの長をたてるため引き下がった。


 もしこの作戦が成功してしまったらどうしよう……。私の目的はナトちゃんとハンターウルフたちの相打ちだから、あんまりよくない。だけど……


(正直このくらいしないとナトちゃんを気絶させるなんて無理。ここはナトちゃんの耐久力に賭ける!)


 ナトちゃんが耐えて、何匹か道連れにしてくれると信じて作戦に参加する。最悪一匹だけ残るのならば、私の魔法で倒せると思う。ナトちゃんの力が凄まじいとはいえ、一撃で死ぬくらいにはハンターウルフは弱い。一匹だけならお得意の連携もできないしね。


『行くぞ!!』


 エースの掛け声とともに他の三匹がナトちゃんに向かっていく。先ずはナトちゃんを空中に飛ばすことからだ。さっきと同じようにちまちまと攻撃を当てていくハンターウルフたち。足を怪我して機動力が落ちたナトちゃんではさっきよりも鬱陶しく感じるだろう。しばらくすると堪忍袋の緒が切れたのかナトちゃんは再び空へと舞い上がった。


『来たぞ!! 他は森の中に入り身をひそめろ!!』


『了解リーダー!!!!』


「私もっ……と」


 エースの号令に従い私たちは森へと姿を隠す。これでナトちゃんの視界に捕捉できるのはエースのみとなった。


『GYAAAAAaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』


『来い!!』


 ならば必然的にナトちゃんの標的はエースへと移るものである。空から急降下してきたナトちゃんは、今度は片腕を地面のほうに向けて落下してくる。次に足を使って着地をすると今度こそ足が千切れてもおかしくないからだろう。


 ナトちゃんはさっきと同じ…………いや、さっきよりもはやい速度で落下してくる。小さく空に浮いていた姿が、だんだんと大きくなってくる。


『ハァッ!!』


『GAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaa!?』


 その攻撃はエースへと届くことはなかった。間一髪としかいえないほどギリギリで左へと体をずらし、避けるエース。さっきよりも速い速度で地面へとぶつかったナトちゃんは絶叫を上げる。ナトちゃんの左腕はありえない方向へと曲がっており使い物にならなくなったのは明白だ。


 うわ、痛そー…………。元に戻ったときにも腕は折れたままなのかな? まぁあの高さから落ちて生きてる時点で普通ではないんだけど。


 ナトちゃんの頑丈さを改めて認識したマオは次の行動について考える。ここからは一手でも間違えてはいけないと本能が告げる。


『今だ!! 畳みかけろ!!』


『くたばれ化け物!!』


『終わりだァァァァ!!』


 囮役をまっとうしたエースの指示が飛ぶ。ナトちゃんの後ろからは牙に雷を纏わせたサーズとフォースが襲い掛かる。絶叫を続けているナトちゃんは後ろを振り向かなかった。襲い掛かった二匹は()ったと確信をする。


 ――だがそれは間違いであった。


『GUGAAAAAAAAaaaaaaaaaaaa!!!!』


 絶叫を続けるナトちゃんの背中から複数の針が伸びる。例えるならウニや栗のもつ針のようにあまたの針が二匹を襲う。あれどうなってんの…………爪を伸ばしたやつの応用かな?


『っ!?…………』


『がっ…………』


 いくつもの針がサーズとフォースを貫く。胴、前足と後ろ足、頭に針が突き刺さる。喉にも針が貫通しているため悲鳴らしい悲鳴はあげることも出来ずに、二匹は静かすぎる死を迎えたのであった。


『――っ……!』


 二匹の死を見とどけたエースは目を見開き、歯を食いしばっているような表情をしているが、決して足を止めなかった。ナトの意識が後ろに向いていることに気づくと、すぐさま距離を詰め、ナトの心臓付近に【雷咬(らいこう)】をくらわそうとする。


 ナトの足はすでに限界を迎えており、一歩も動けない状態であった。唯一動かせる右腕でエースを近づけないよう振り回すがあの落下攻撃すら見切ったエースにとって、そんな攻撃が通用するはずもなかった。襲い掛かる腕を自慢の足でぶっちぎったエースの牙は今、ナトの心臓に歯を立てようとしていた。


――勝負は決まった……………………かに思われたが


「流石にそれは不味いんでねっ!!」


 あの攻撃を喰らえば確実にナトちゃんは死んでしまう。それは私の敗北と同義だ。私にはナトちゃんが魔物になった責任をとらないといけない。必ずナトちゃんを生きて帰す!


 だが、今更エースに向かって石なんて投げたところで怯みもしないだろうな。だけどそれを分かっているエースは私のことなんて完全に意識から外れている。だからこそ……


 森の中から姿を現した私は手のひらをエースの方へと向ける。


「”フィン”!!」


 私の手から放たれた風のボールは一直線にエースの方へと突き進む。


『!? ぐぅっ……!」


 魔法が飛んでくると思っていなかったエースは腹に風のボールを受けてしまう。(フィン)の攻撃魔法は回転力があることが特徴だ。それをモロに喰らったエースの口からは血が噴き出した。そのままエースは私の風によって吹き飛ばされ地面へ転がる。


「くっ…………」


 同時に私は魔力切れを起こし、頭痛や体がだるく感じる。何回やっても慣れないなこれ……。魔女たちに魔法を教えてもらってる時にも魔力切れを起こしたことはあるけど、気持ち悪さには一生慣れないと思う。だけど、何回も魔力切れを起こしたからか体がだるくても動けるようにはなった。無理やりだけど。


(あと一匹…………ツインが残ってるはず。正直最後の一匹に使いたかったけどしょうがない。でも指示役(エース)を倒せたし、なにより一匹だと連携も出来ない。動けないナトちゃんを使えばなんとかできるはず……)


 残りの一匹を探すマオ。辺りをキョロキョロ見渡すと信じられないものが目に映った。


『ハァ…………ハァ…………』


 口から血を流しながら、それでも四本の足で地面に立っているそれは、エースであった。


『やはり裏切ったか……』


「うっそでしょ…………流石に笑えない……」


『いや、俺ももう限界だ……。立っているだけでやっと…………そこの悪鬼と同じ感じだ』


 エースの視線がナトちゃんの方へと向く。だがすぐに私のほうへと視線をうつし、睨みつける。


『だがそうだな…………裏切ろうとしたのはこちらもか』


 その言葉に違和感を覚えた私は、真意について探ろうとしたとき


「!? なっ……!」


 突如、うしろに影ができたことに急いで振り返ってみたら、私とナトちゃんを踏み潰すように大木が倒れてきていた。倒れてきている木の根元らへんを見るとツインが口元に木片をつけながら立っていた。こいつら初めから私とナトちゃんを同時に倒すつもりで……! ハンターウルフたちからしたら私とナトちゃんどっちも逃がしたくないからね。


「っ!――」


『GGYAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!!!?』


 私は倦怠感が凄まじい体に鞭打って、避けようとする。だが、思うように体が動かず、地面を転がり、なんとか危機を脱した。一方で逃げる足がないナトちゃんは倒れてくる大木に押し潰されてしまった。絶叫としかいいようのない声を上げて、大木と一緒に地面に倒れ伏す。

 地面と大木に挟まれているナトちゃんの意識は途絶えたのか姿が元の人間の形へと戻っていく。


『生き残ったか……だが決着はついた。さっきの動きを見るにお前、魔力切れを起こしているな。だから今まで魔法を使わなかった』


 この命のやり取りはハンターウルフの勝利で終わった。ナトちゃんは気絶し、私は魔力切れで動けないも同然。対してハンターウルフたちには重症のエースと五体満足のツイン。このまま私たち二人は二匹に食べられるだろうな。――やっぱり私じゃ無理だったよ……


 私の脳内は恐怖でいっぱいだった。今日、死が迫りくる経験は何度もしたけど一向に慣れない。それどころか死線に直面するたびに恐怖は増していった。そして今は心臓を握りつぶされているような感覚に陥っている。呼吸は浅くなり目からは涙がこぼれる。


『さぁ俺たちの養分となるがいい』


 エースのその言葉と共にツインが私目掛けて迫ってくる。爪で切り裂かれる? それとも生きたまま喰われるのか……、どちらか分からないけど、自分の運命を受け入れようとしたとき……


「”ウォルヒータ”!」


 私とツインを隔てるように炎の壁が出現する。突然の出来事に私だけでなくハンターウルフたちも驚いている。


「なにか音が聞こえたと思ったら、まさか崖が崩れてて、しまいにはこんな状況になっているとはね……」


 大森林の中から声が私たちに向けて聞こえてくる。やがて声の主は森の中からその姿を現した。その声は私がこの世界に来てから聞きなれた…………


「――助けに来たわマオ」


 その言葉と共に所々に宝石が散りばめられた、上質な杖を公爵家当主(カレン)はハンターウルフたちに向けた。






”ウォル~~~”・・・六属性の内どれかを用いて壁を作り出す魔法。~~~の部分にはそれぞれの属性の名前が入ります。

ようやくナト戦が終わった……。あれよあれよと書く量を増やしていったらこんなことに……。

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