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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第一章 転移編
13/15

動き出す歯車

前回と今回のタイトルの温度差ぇ……

 教会の中にいる人たちから色んな情報をもらい、話し合った結果、リリーさんは結界の外に行き、村を襲いそうな狂暴な魔物の討伐および大森林で”魔女の残り火”と行方不明の女の子の捜索。私は村に残って後からやって来るであろう騎士団の人たちへの状況説明と、もし騎士団の到着が間に合わずに村になにかしらの異常が起きた場合は、狼煙かなにかでリリーさんが分かるように情報を伝達することとなった。


 リリーさん危険だけどだいじょうぶ……? キメラベアなら余裕で倒せるって言ってたけど。あの魔物って結構強いって話なんだけど……、それに勝てるって流石武力で成り上がった貴族の家の使用人……。私もそうなんだけどね。人には得手不得手あるということで……


「では、こちらのことはお任せします」


「リリーさんもお気をつけて……、何かあったらすぐに戻ってきてください」


 二重の意味を持つ私の返事を聞くと、頷いてそのまま大森林の方へと向かった。リリーさんの姿が見えなくなると私は教会へと戻り、子どもたちの相手や村の大人たちと一緒に外と結界の境界線の付近を見回りし、魔物がいないかの確認をしていた。大森林にはキメラベア以外の魔物も多くいるため、狂暴化して村を襲ってくるかもという心労で少しも気が休まらない。村の大人たちも鍬や角材などを装備して警戒しているが、その額には汗がにじんでいて心に少しの余裕もないようだった。


「今のところは大丈夫そう……、でも神父さんの結界も一日中は持たないって言ってたし、早めに騎士団の人が来ないとまずいことになるでしょこれ」


 今は子供たちの相手から解放されて、少し教会の外で休憩をしている。ここに来てから一時間くらい滞在しているけど、一向に騎士団が来る気配はない。


「騎士団の人らって馬で来るはずだよね……遅くない? 道中で狂暴化した魔物に襲われてるとか? それとも私たちが早く着きすぎた? いや私たち走ってきたし馬より早いなんて……、リリーさんならありえそう」


 教会の外に備え付けてあるベンチに腰かけて騎士団の人たちのことについて考えていた。どっちの可能性もありえる……、やっぱリリーさんおかしいでしょ。人一人担いで道のり一時間短縮するって……、そりゃ魔物に勝てるって言われても説得力あるわ。


「まぁ、私は自分にできることをやるだけだけど……」


 リリーさんの化け物っぷりについて再確認したころ、村の出入り口に向かって、こそこそ歩いている小学四から五年生くらいの少年を見つけた。


 おかしい……子供たちは教会から出ないよう言っているのに……。なにかあったのかと思い、ベンチから立ち上がりその少年に近づきながら声をかける。


「おーい、そこのきみー。外は危ないから教会の中に入っといてー」


 私の声にビクッとした反応を見せると、少年はゆっくりとこちらを向き私の顔を確認すると、結界の境界線である村の出入り口の門へ全力ダッシュし始めた。


「!? ちょっ!? おい!? 待てェェェェェェッ!?」


 その突飛な行動に一瞬体が固まるが、すぐさま正気に戻り少年を追いかける。なにかんがえてんの!?頭でもわいたの!?  あまりに理解できない少年の行動に思わず普段の私ならでないであろう言葉が頭に思い浮かぶ。正直に言って、今の少年はただの自殺志願者にしか見えなかった。


 幸い距離はそんなに離れてなかったし、足も少し私の方が速かったのでなんとか結界から出る前に腕を掴んで捕まえることができた。少年の身長や体格は私よりも低かったから、私の力でも抑え込めることができた。


「クソッ、離せよ! よそ者!」


「なにしてんの! この状況で結界の外に出る意味分かってんの!?」


「うるせーっ! 俺は”ナト”を探しに行くだけだ!!」


 あー、大体読めたわ。ナトって子は村の13歳の桜色の髪をした女の子で今、行方不明になっている子だ。こいつその子を探しに行くために結界の外に出ようとしてたわけだ。ちなみにナトって子の情報は神父さんや相手していた子供たちから聞いた。探すのに容姿の特徴とか聞いとかないといけないしね。


「今、頼りになる人が探しに行ってる途中だからもう少し待と……」


「うるさい! 大人なんて頼りになるか! ナトは村の老人どもから毛嫌いされてんだ! 死んでもいいって思われてるに違いない!」


「えぇ……なんでぇ……? まぁ色々聞きたいけど……君の名前は?」


「……」


「だんまりっすか」


 私の質問に少年は何も答えない。毛嫌いされてるとか新しい情報が出てきたけど、ぶっちゃけ探すのには関係ないな~と思いつつ、少年を教会のほうへ引きずりながら次の質問をする。


「なんで村の老人に嫌われてんの? 神父さんからは元気で明るい子って言ってたけど?」


「村の老人どもはナトのことを化け物って言ってる……あいつは誰かを襲ったりする奴じゃねぇ!」


「? うーん……あんまりよく分からないけど……」


 要領の得ない返答をされ、頭を悩ませるが、多分一つだけ分かったことがある。ナトって子は一人っ子らしいし、こんなにも感情的に行動する少年はきっと……


「もしかして、ナトって子のこと好き?」


「!? ッ!? 馬鹿っ!? そんなんじゃねぇ!!」


「あら~」


 私の言葉を聞いた瞬間、少年が湯気がでそうなほど顔を真っ赤にし、じたばたし始めた。心なしかさっきより力が弱くなっている気がする。これはキテるわー。私はニヤニヤしながら少年に問いかける。


「どんなとこ好きになったのー?」


「うっ、うるせー! ブス!」


 ふっふっふっ、私はそんな知能の低い悪口では傷つかない! 現代育ちを舐めるなよ! どうせなら”あいつの服と一緒に洗わないで。下水道の匂いになりそう”ぐらい言ってもらわないと。……育ての親が言う言葉かこれ? 同じ洗剤使ってるよね? まぁ、そのおかげで自分で洗うようになって、こっちの世界で役に立ってるんだけど。


 そんなわけで私はあまり効いてないんだけど、少年の言葉に一番反応したのは……


(あら~、そんな口の悪い子には躾が必要ね~)


(ははっ、ママにそんな口をたたくなんて、生き地獄を味あわされたいようね……)


(っち、切り刻むか……)


(あぁ! マオさまの偉大さが分からないなんて……、教育が必要そうですね)


 魔女たちであった。やばい、少年の生存確率がゼロを超えてマイナスまでいってる……。ていうか殺すじゃなくて、躾とか生き地獄とか教育の方が怖くない? なにをする気なんだ……


(あのー……私は気にしてないんでどうか命だけは助けてやって……)


(だめよ。ママを傷付けようとする奴なんてこの世にいらないのよ)


 他の魔女もウンウンと頷いてる気がする。声しか聞こえないけど、間違いなくしてる……


(いや、元居た世界の方が悪口のレベル高かったから……。こんなの悪口にも入らないから……。それに今封印されてるんでしょ)


 そう、暴言とかは日常茶飯事だった。主にバイトのクレームしてくる奴ら。あいつら日本語喋っているくせに、話が通じない生命体だった。お客様は神様だぞと言われたときは閻魔様に会わせてやろうかって言いそうになったこともある。


(……しょうがねぇな)


 私の言葉が通じたのか矛を収めてくれそう……。やったね少年まだ生きられるよ!


(半殺しで抑えてやるよ。封印を解除したら覚えておけガキ)


 やっぱり駄目だったよ……。残りの余生をしっかりと生きるんだ少年……


 そんなやり取りをしているうちに教会のところまで来ており、教会の中に入ると少年も観念したのか、大人しくなった。だけど、手は離すつもりないんだよね。ここまで来て手を離した瞬間逃げられましたじゃ話にならないしね。うーん親に引き渡すのがいいんだろうけど……、この子親がどこにいるか聞くと黙っちゃうんだよなぁ……。最初は親がいないとか私みたいな境遇かと思ったけど、理由を聞くと父親に怒られるからという可愛い理由だった。


 どうしたもんかと思っていると、子供たちといる神父さんを見つけたのでそちらに引き渡そうと思う。神父さんならこの子の親についても知ってるだろうしね。


「あのー、神父さん?」


「はい? どうしましたか?」


「実は……」


 私はこの子が結界の外に出ようとしたことやその理由について神父さんに話した。


「そうですか……。マオさんありがとうございます。”アース”君もお姉さんにありがとうって……」


「ケッ……誰が言うか。結界の中に籠ってるだけの奴に……」


「アース君!」


 そう言いアースと呼ばれた少年は、どこかに行ってしまった。といっても見える範囲には居るみたいだが……


「すみませんアース君がご迷惑を……」


「いえ……気にはしてないですけど……。なんであんなに大人が嫌いに?」


 さっきの話では、村の老人を嫌う理由は言ってたけど、その嫌いの範囲が大人全体に広がる理由は分かっていない。私の問いに少々答えにくそうに神父さんが教えてくれた。


「何分この村は小さいものですから、長年住んでいるご老人の方の声も大きいものでして……、若い大人の方々も老人方に頭が上がらないものですから、大人に不信感を持っているのでしょう。私もナトちゃんのことについては老人方と話をしたのですが、あまり聞き入れられてもらえず……」


「……大変ですね」


 神父さんは王都からこの教会に派遣されたらしいので、村の人たちとの関係に苦心しているようだ。もしかしなくとも、この村の一番の被害者は神父さんなんじゃないかな? まぁ、今回のことで関係はよくなりそうだけど。


「そんなにナトちゃんのことを嫌っているなんて……、一体何が……」


「それは、――ッ!?」


 私の疑問に答えようと神父さんが口を開いたとき、何かに気づいた神父さんが険しい顔つきとなった。


「どうしたんですか?」


「大変です、マオさん。結界が――――攻撃されています」


「!」


 神父の言葉はすなわち魔物が村にやってきたということに他ならない。騎士団もまだ到着していない今どうやって対処するか……。そんなことを考えているうちに見回りをしていた男性が教会の中に入ってきて


「魔物が結界を壊そうとしている!! 動ける男どもは武器を持って来てくれ!!」


 と教会全体に聞こえるように叫んだ。私と神父も外に出て魔物の方へと行く。魔物をどうすることも出来ないときは、リリーさんを呼び戻すしかないからね。ほんとに早く来て騎士団の人……




****************




「チッ」


 抑えようともしてないイラつきを舌打ちとして口に出すアース。村を出てナトを探そうとしていたのに王都とかいうところから来た、変な服をした女に邪魔されてしまった。これだから大人は嫌いなんだと自分の考えが正しいと思うように言い聞かせる。


 ジジィどもはナトを……、いやナトの”混合魔法(デュアル)”を嫌っている。悪魔の力だとか好き放題言いやがる。周りの大人どもは、見ているだけの奴か、まぁまぁとジジィどもをなだめている奴のどっちかしかいない。親父に言っても難しい表情をするだけで何もしない。ナトがどれだけ傷ついていると思ってるんだ!? あいつは何もしてないだろ!? 生まれ持った力で嫌われるなんておかしいだろ。そんなナトが心配で探しに行こうとしても、教会の中に入れられた以上、大人どもからしんぷ? とか言われてる奴が見逃してくれるはずがねぇ……


 どうやって脱出するか考えていると、急に教会の扉が開いて大人の一人が魔物が襲ってきたとか叫んでいた。それを聞いて神父や変な服を着た女も外へと行ってしまった。運がついてるなんてもんじゃねぇ……、今なら抜け出せる!


 そう思って、裏口から外に出ようとすると小さな手に手のひらを掴まれた。後ろを振り返ってみるとガキ二人が俺の手を掴んでいた。


「なにすんだよ」


「だって……教会のおじちゃんに言われたんだもん……」


 あぁ……こいつらしんぷと遊んでいたガキどもだ。しんぷに俺を見とくよう言われたんだな。


「お前らにかんけぇねーだろ」


「でも……」


「それとも殴られてーか」


「「ヒッ……」」


 俺が殴るような素振りを見せると、すぐさま手を放して涙目になった。この村の子どもの中では、ナトが一番年上で次が俺だから俺に逆らえるガキは少ねーんだ。腕が自由になったのを見て、教会の外へと出る。まってろよ……絶対に見つけてやるからな……


 そんな思いを胸に、アースは結界の外へと行った。






村ではメイド服を見る機会はないからね変な服って言われても仕方ないよね。

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