18話 家出大作戦スタート!
「で?1か月前何があったんだ?ディビット」
オリバーはリビングの椅子に座ってそう言う。
ハリーやアメリたちも、何だ何だとディビットに詰め寄りながら質問をする。
いずれ、ディビットは2人に詰め寄られすぎて普通に座っていることも出来なくなって、後ろに倒れてしまった。
「ちょ、ちょっとぉ!!こんなんじゃ話せるもんも話せません!少しでいいから離れて!」
ディビットはそう言って体をぶんぶんと振って、自分にくっついている子ども2人をひっぺがそうとした。
すると、そこに紅茶とお菓子を持ったオスターが現れて呆れたように言う。
「そうだ!それじゃ話せないだろ!さっさとよけろ!」
その言葉に、ハリーとアメリはようやく観念したように元の自分の場所へ戻った。
まぁまだ何か言いたいことがあるような顔だったが。
「では、今まであったことをお話します。これは命に関わることなので、皆さんには多少長くなりますが掻い摘まず、事の全貌全てを説明させて下さい。」
その言葉に皆が息を飲んだ。
俺は話した。
まず最初に、思っていた通り母のジェンナには水と火2属性の魔法を使えることがばれていたこと。
このままだとあと丁度1ヶ月後には何者かが自分のことを攫いに来るということ。
攫われた後に自分がどんな目に合うのかは想像もつかないということ………。
自分はそれに絶望して部屋に引きこもっていたこと。
今日までの俺は敵に立ち向かうことも考えず、ただ、されるがまま運命に身を任せようとしていたこと。
………ああ、こんな情けないこと話したらみんな俺に呆れて離れて行ってしまうんではないか?
みんなは優しいから、ずっと俺のそばにいてくれるって知ってはいる、わかってはいるんだけど
愚かな俺は未だにそんなことを思ってしまう。
だって、俺はそんな日が来るのを到底受け付けられない。……怖いんだ。この不安定な現実世界が。
俺のちょとした一挙一動がこの先の未来を大きく変えてしまう。俺がもし何か変なことをうっかりして、
みんなに嫌われてしまえば、また俺は当然1人。
そんなの絶対に嫌だと俺は思う。
……でもよく考えてみろ、俺よ。
今の俺はなんだ?思考と行動があべこべじゃないか?
こんな大事な話、みんなと目を見て話すものだろ?
嫌われたくないんだろ?離れて欲しくないんだろ?
じゃあ何故、今の俺はまだ下を向いて話している。
まるで独り言を話しているみたいな様子だ。
こんなの絶対良くない。
俺はもうめげたりしないって決めたはずだ。
信じてくれる仲間を信じないでどうする!!
俺はこのままでは1歩も進めない。
いつまで経っても臆病なままなんだ。
勇気を出せ!俺!ディビット!!
俺は顔を上げてみんなの顔を見た。
近くにいた人から順にハリー、アメリ、オリバー、そしてオスター。
……あぁ、なんて俺は馬鹿なんだ。
みんなは俺のこと、見てくれてるじゃないか。
それはそれは、心強い眼差しで。
「状況は一通りわかった。………じゃあ、家族はもう、お前の敵ってことでいいのか………?」
オスターは少し気まずそうにしてそう言った。
しかし、俺にはもうあの家族への情など一欠片も残ってはいなかったので声を大にして言った。
「はい。我が親ながらにお恥ずかしいばかりですが、そう捉えて間違いないでしょう。」
そう俺が言うと、オスターやハリー一行たちは悲しそうな顔をして俯いてしまった。
そこでオリバーが上目遣いをして俺に言う。
「悲しいとか、悔しいって思ったんなら、我慢せずに俺たちに言ってくれればいいんだからな!俺たちの前ではディビットのありのままを見せてくれよ。ここに居るみんな、ディビットのことを笑ったりなんかしないんだからな。」
そのオリバーの言葉に俺の心は心底温かくなった。
あぁ、心配してくれてるんだな………。
でも、ここで心温まっているだけではだめ!
みんなを心配させたままにしてしまう。
俺が自ら元気な姿を見せてあげないと!
で、もう未練は無いってこともしっかりと言おう!
「ははは!ありがとう、オリバー。とても心強いです。でももう大丈夫ですよ。あんな親、もうなんとも思っていませんから!それに、あれほどの極悪非道なら、僕に何の問題がなかったとしてもいずれ何かの問題を起こしてたに違いないですよ!幸い、まだ何もしていない。僕が災いを未然に防いであげようじゃないですか!!」
そう言うとオリバーは、一瞬何か考えるようにして俺のことを見てきたが、すぐに表情は笑顔へとかわり、
ディビットがそう言うならもう大丈夫だな!と言う。
次第にアメリやハリー、オスターの顔も晴れてきて、
場はまた明るく賑やかな所へと戻った。
「じゃあどうする?ディビットのとこの大人がみんな敵だってなったんなら、これからの武力衝突は避けらんないだろうと俺は思うぞ。」
オリバーがそう言ってこれから起こる大事件に対策する作戦会議が始まった。
すると元気よくアメリが言う。
「じゃあわたし戦う!敵はみんなボッコボコだー!」
その言葉に一同はみな口角が上がり、場が和んだ。
………それにしても、アメリ……彼女はまだ幼すぎる。
力もなければ魔法さえ使えない。
こんな非力な女の子を熾烈で悲しい戦いに巻き込んでしまったなんて………。
罪悪感が俺のことを苛み一面を覆う。
でも………事の責任は全部この俺にあるんだ!
うじうじしている暇なんてない!!
この無邪気な笑顔は俺が最後まで守っていかないと!
「……戦う……しか選択肢はないのかな?敵が来る前にこっそり逃げるじゃダメなの??」
ハリーが皆の顔を伺いながらそう言った。
……確かに一理ある。
こっちは非力な子ども4人と姿を現せない老人が1人。
対して、相手陣営は大人が複数人。
この状況は、俺たちに分が悪いにも程がある。
敵を倒さないってことは敵を野放しにするってこと。
だから多少の禍根は残るだろうが…………まぁ正面から戦うよりはリスクが低いだろう。
逃げる……………………。
それが1番安全で確実な方法なのかもしれないな。
そうハリーの言葉に納得し始めていた時、オスターが畳み掛けるようにして言った。
「良く気が付いたな、ハリー!そうだ。今のわしらでは、ちと勝算が低すぎる。だから、逃げるのが今の最適解だとわしも思うぞー。しかしだな?それはお前たちが弱いだとか、敵の大人に適わないと言っている訳でも無んだぞ?1冒険者の意見として言わせてもらうが、お前たちは自分で思っているよりも桁違いに強い。きっとその大人たちだって本気を出せば容易く倒せてしまうだろう。」
そう言うと、オリバーが話に割って入る。
「待て。戦って勝てるなら、こそこそ逃げる必要なんてないんじゃないか?正面から敵を倒せば、後から追ってくる敵を減らせる。その方が良くないか?」
た、確かに……!それも一理あるなぁ……。
そう思っていると、また師匠のオスターが言う。
「いいや、そんなことをするのは危険すぎる。正面から戦って、もし負けたらどうする!そこで人生終わりだ。そうなるよりかはバレないように逃げた方が賢明だろう。で、これからその日まではもしバレて戦わなくてはいけなくなった時のために身体を鍛えるのだ。いくらお前たちが強いと言ってもそれはここだけでの話。実戦で魔法を使ったことはないから、経験の差でやられてしまうかもしれない。十分用心するんだ。」
た、確かに!!
俺たちは強くても経験が全くないもんな!
その通りだ、十分用心していかないと……!
今までの話の流れで1番納得したなぁ……。
さすが元冒険者だ。説得力あるもんなぁ……。
「流石です!師匠!!じゃあこれからはみんなで魔法や身体を強化するってことでいいんですか?」
俺がそう言うとオスターは慌てたように言った。
「大方そうなんだが、お前だけは例外だ。あんまりこっちに来てると怪しまれるからな。家で前と変わらずに出来るだけ平然を装って生活をしててくれ。」
え、それは中々大変なことでは!?
命狙ってくるやつと常に隣り合わせか!
今まで以上に警戒して生活しないとな……。
話し合いの結果、ハリーとオリバーは師匠に森で魔法の稽古をつけてもらい、アメリは火属性しか扱えない師匠に教えを乞うよりも光魔法を専門としているボスこと教会のクラインに光魔法を教えて貰う方が良いということで、教会で魔法の特訓をすることになった。
そして俺は家で情報収集をしつつ待機だ。
情報はわかり次第手紙にし風魔法で師匠宅まで送る。
直接みんなと会う機会が減って寂しくはなるが、これも命のため。あと少しの辛抱だ。
「みんな!がんばろうね!」
日が落ちてきた。
俺たち子どもは家に帰る時間なので、
帰りの支度を始めた。
「待て、ディビット。少し2人で話そう。」
ん?なんの話をするんだ?
俺は突然の呼び出しに疑念を抱きながらも師匠の方へそろそろと向かった。
俺がきょとんと師匠のことを見上げると言った。
「なぁ、ディビット。勘違いだったらすまないんだが…………まだわしらに隠し事をしていないか?」
!??何でだ!?どこかで転生のことがバレた??
俺は完璧に隠せてると思ってたのにーー!!!
…………でも、ここで潔く転生のことを言うべきなのかもしれないな。
正直、今の俺の気持ちとしては、この重ね重ね続いた暴露ムードに乗っかって転生のことも話したい。
だって俺はもう師匠達のことを信じきっているから。
師匠たちは体を張って俺のことを助けてくれたんだ。
ここまで俺にしてくれる人たちが、秘密の1つをもらすとも考えにくいし、母親たちのように俺を見捨てようともしないだろう。
それにもう、俺は耐えられないんだ。
こんな重荷を抱えたまま生きることなど。
俺は転生者であることを伝えようとして息を吸った
息が震えている。
でも、師匠に伝えなくっちゃ!!
すると、そこで…………
「いや、いい。返事は必要ない。悪かったな、きっとわしの勘違いだ。帰りなさい。走ればまだハリーたちに追いつく。久しぶりの再開だ。積もる話もあるだろうし話してきなさい。またな、ディビット。」
オスターがそう言った。
あ………………。
俺は開きかけた口をつぐみ、黙って頷き去った。
俺は森を走った。
次第にみんなのことが見えてきて、
足音に気が付いたハリーがこちらを振り向く。
「わっ!!ディビットだー!こっちこっちーー!!」
ハリーがそう叫ぶとアメリやオリバーたちもディビットの存在に気が付き、わいわいと声をあげる。
「はぁ、はぁ……やっと追いついたっ…………!一緒に帰ろう、みんな!!」
俺は息を切らしながらそう言った。
みんなの答えはもちろんYESであった。
「ディビットはすごいよなー!風の魔法も、光の魔法も使えて!どうやったらそれが出来るようになるんだ?俺にもそれ教えてくれっ!」
オリバーは目を輝かせて俺を見ながら言う。
しかし、ディビットは少し申し訳なさそうな顔だ。
「ごめんオリバー!それは僕にもわからないんです。本当に何で僕だけ魔法が全属性使えるのか……………。でもきっと修行を積めばみんなも出来るようになるよ!一緒に修行、がんばろうね!!」
「あぁ、もちろんだ!!がんばろーな!!」
「でも、はぁーー。これからまた、しばらくディビットと会えなくなるのかー……。僕寂しいっ!!!」
ハリーが突然俺の方を見て言った。
「そうですね、………でも!離れていたって僕らの心はいつも通っているでしょう?ね!」
俺は問いかけるようにそう言った。
その言葉は、励ます気持ち、嬉しい気持ち、不安な気持ちが入り交じった言葉でもあった。
俺はいつまで経っても臆病なままなので不安な気持ちがどうしても押し勝ってきてしまう。
何故か自分自身の言葉に確信が持てないんだ。
俺以外の3人と違う意見だったらどうしよう、それが原因で仲違いしてしまったらどうしようって常に怯えてる。3人がそんなことするはずないし、意見が食い違っても、それだけで仲が悪くなるなんてことはないってちゃんとわかってるはずなのにな。
しかし、だ。今の俺はもう、不安など恐れないんだ。
3人はいつもいつも、俺を不安から救ってくれる。
それは今回のことでよくわかったし証明された。
今度もまた、いつもみたいに俺のことを助けてくれるって信じているんだ。
そう俺は確信出来るから、3人を信じられる。
その時アメリが言った。
「うん!わたしたちは、ずーーっと!一緒だよ!!」
アメリは満面の笑みを浮かべる。
あぁ、この笑顔に何度救われたんだろう……。
「おいディビット!!どんなに俺らが強くたって大人には敵わないところの1つや2つある!だから!困ったことがあれば、俺らのこと、ちゃんと頼れよな!!だってほら……俺たち離れてたって心?が繋がってるんだろ?それなら助けねーわけにはいかないしさ!あと……最後に1つ!!背だって俺より小さいんだ!アメリやハリーはともかく……俺にだけでも頼れよ!互いに助け合いってのが大事だ!」
オリバーの言葉にハリーとアメリがピクリと反応をし一言余計だ!背は関係ないでしょ!
とわいわいと騒ぎ出した。
「あ!そろそろディビットの家に着くよ!僕たちとはこの辺でお別れだね……。」
ハリーは俯いてそう言った。
「あーもう!ハリー!そんな悲しい顔すんなよ!!な?ディビットだって嫌だろ?こんな顔されちゃ。
俺たちはまた会えるんだ、だからその日までみんな笑顔でいこーぜ!!」
オリバーがハリーの肩を持ち、ぶんぶんと揺らしながらそう言った。
そして、こんな別れ際のシーンではアメリだって黙ってはいない。
「ねぇ、みんな?さっきディビットが言ってたよ。離れていたって心はつながっているって!!だからわたしはぜーんぜん!さみしくなんてないんだよ!!しばらく会えなくなるけどがんばろうね!ディビット!」
その言葉にハリーとオリバーは俺の周りをぴょんぴょんと飛び跳ねて笑った。
……なーんだか、こういう所を見るとこの子たちってまだまだ子どもなんだなーって思うなぁ〜。
やけに大人っぽいところがあるから普通に話しちゃってるけど、この子たちまだ子どもだよ?ていうか、まだ産まれて5年とかなんだよ?ほぼ赤ちゃんじゃん!
飛び跳ねちゃってーなんだかかわいいなぁ〜。へへ。
おおっとなんか今の俺キモくね?黙っとこ。
「じゃあね、みんな。また1ヶ月後に会おう!」
さぁ、どうやって俺はこの家で過ごそうか……。
そんな不安を抱きながら、
俺は風魔法を使って自室の窓へ向かって飛んだ。




