16話 差し込む光
ハリーたち3人が魔法の特訓を初めて1週間がたった。
「オスターさん!僕たち次は何すればいいの?」
ハリーは次の特訓メニューが楽しみでならないといった表情でそう言った。
しかし、無情にもオスターは微笑んで言う。
「ない。お前たちは1週間で出来ることはやり尽くした。残念だがわしとの修行は終わりだ。よく頑張ったな。ハリー、アメリ、オリバー。」
3人はもう終わりなの?もっと魔法したかった!とでも言いたげな顔でオスターにされるがまま、頭をわしゃわしゃと撫でられている。
そこでオスターが言う。
「お前たち忘れてないか?目的はディビットを部屋から引きずり出して助けに行くことだろ?」
すると3人は途端に真剣な表情へと変わる。
3人は目的を忘れたことなど一時もなかった。
常に心の底にはディビットがいたのだ。
「忘れるもんか!俺たちはそのために頑張ったんだ!オスターさん!俺たちは次何をすればいいんですか?今まで何度聞いても今回のディビットのことについて聞きたいことは教えてくれなかったじゃないですか!さすがにもう教えてくれ!」
そうオリバーが言うと、ハリーやアメリも同じ意見だと言った様子で頷く。オスターは最初、何か考え事をしているかのように下を向いてオリバーとの会話に応じようとしなかったが、次第に顔を上げて言った。
「それがだな…………実はわしにもわかってない!!
わしはこの森に不正滞在している上にディビットとはえらく歳が離れたじじぃだ。ディビットと会話するどころかモルガン家に無事入れるかすら危うい。でも今の状況的に考えるとお前たち3人だけをあの家に送り込むのは危険かもしれないんだよなぁ。どうしたらいいもんか……。」
するとハリーが言う。
「なーんだ!そんなこと!?フフフ、フフフフフ!
僕に任せて!いい案があるよ!こうしてこうして〜」
ハリーは何やら満足気な顔を浮かべる。
してやったりと心の中で思っているのが丸わかりだ。
しかし何故だろう、オリバーとアメリは目を合わせて苦笑い、オスターはと言うともはや呆れて宙を見つめ声も発さなくなっていた。
「なぁハリー、こんなんでいいのか?」
オリバーは引きつった顔でハリーに問う。
……何故ならそこには、木箱に詰められて狭そうにしている老人が見えるからだ。
しかし、そんなオリバーの表情とは裏腹にハリーは満面の笑みを浮かべたまま大丈夫だ!と大きく頷いた。
絶対成功するという確信があるようだ。
「おいハリー!バカか!これは流石にないだろう!」
オスターがハリーに怒った。
少し怒りすぎにも感じられるような雰囲気だが、オリバーとアメリも同じように思っていたようだ。
またもや苦笑いをハリーに向ける。
……ハリーはというと……なんでよー!と悲しい顔。
しかし、ここで意外な助け舟がでた。
それはオリバーの言葉だ。
「まぁ、いいんじゃん?どうせ他にいい案なんてないんだからさー。一か八かやってみよう!俺らも頑張ってサポートするし!」
ついに作戦決行の時が来た。
森には風が吹き込み、ざわざわと音を立てる。
うさぎや小鳥たちは活発に動き回り、騒々しい。
こんなのはいつもの事なのに、今日の4人にとってはそれすらも不吉に感じてしまう。
オスターとアメリは、この作戦に不満そうな顔ではあったけれど何とか腹を括ったようだ。
今はもう真っ直ぐと前を見据えている。
「わしは森を出たらこの箱に入ればいいのか?」
オスターが森を歩きながら言った。
「うん!そう!よろしく頼むよ!!」
…………ハリーは相変わらずご機嫌だ。
その様子を見かねてオリバーが言う。
「なぁハリー、なんでそんなにご機嫌でいられるんだ?嫌味とかじゃなくフツーに疑問。こーんなに危険な状況で成功する確証もなくて……。俺はもう内心かなり不安だし、心臓バックバクだぞ?」
オリバーは強ばった顔の中、薄らと笑って言う。
それにハリーは答えた。そんな顔のオリバーとは相対的な明るく吹っ切れた表情で。
「だってさ、ディビットに会いに行けるんだよ?今までそのために頑張ってきたじゃない!それに僕さ、あんなに寂しそうにしてたディビットに不安な顔は見せられないよ!みーんな笑顔でディビットに会うっていうのが僕の理想なの!そうすればきっとディビットも笑ってくれると思うから!」
それを聞いてオリバー、アメリ、オスターの顔はみるみると明るくなっていった。
そうだよな、自分たちがしっかりしないといけないよなと3人もハリーに納得させられ、何となく腑に落ちなかった部分も解消。今までよりよりいっそう軽やかな足取りでモルガン家へと向かった。
そんなことを話しているうちに、4人は森を抜けた。
なのでオスターは予定通りに木箱をかぶった。
「……わしはこれを被ればいいんだったな。一応外を見るようの穴はあいているから中に入って歩けるが、しゃがんでモルガン家まで歩くにはちと距離が遠すぎる。オリバー、土魔法の応用でわしのこと運んでくれないか?地面に並行なアースウォールを作ってその上にわしを乗せて運んで欲しい。」
「おうわかった!それぐらいなら簡単に出来ます!」
「頼もしくなったもんだな〜ありがとうな。」
オスターはオリバーの頭をわしゃわしゃと撫でながら言う。髪の毛がぐちゃぐちゃになってしまったが、オリバーは嫌な顔を見せない。というかむしろ、オリバーは満足気な顔をしていた。いつかのディビットの反応といい、今日のオリバーの反応といい……やはりオスターの手には魔法がかかっているようだ。
「オスターさん!ここだよ!ディビットの家は!」
ハリーはモルガン家のドアを指差しながら言った。
オリバーとオスターはそれを見て決意をするような顔をした。しかし…………
「コンコンッ!こんにちはーー!」
またしても緊張感のないやつが現れた。アメリだ。
いつもいつもこの2人には順序と思考が足りない。
「はーい!今参りますー!」
そう言って中からメイドのリリーが現れた。
リリーはアメリとハリーとオリバーの顔を見て、あらっと言って微笑んだ。
「また来てくださったんですね。ディビット様はまだ部屋の中です……。ぜひ声をかけてあげてください。無理だったらリビングにでも来てくださいね、お茶とお菓子をお出ししますから。」
それだけ言い残すとリリーは奥へと消えていった。
3人は辺りをキョロキョロと見回し、他に誰も居ないことを確認して言う。
「はぁ良かった!バレるんじゃってヒヤヒヤした!」
「だね!でもまだまだこれからだよ!わたしは前歩くから、2人は後ろ見張っててよ!」
「イエッサーーー!!!」
2人は元気良く返事をした。
「ここがディビットの部屋だね。誰からいく?」
「じゃあまずは俺からいかせてくれ。」
ハリーの言葉にオリバーがそう返事した。
そして、オリバーは拳を強く握りしめて言う。
「ディビット!また来た。顔だけでも見せてくれ!」
しかし、また前と同じように反応がない。
ドアの前に立つ3人はしょんぼりと肩を落とす。
その後、3人は焦燥感に駆られながらも、アメリが一緒に遊ぼうと語りかけ、ハリーは出てこなくてもいいから話だけでも一緒にしようと必死に問いかけた。
がしかしディビットはついに部屋から出てはこなかった。
どうしたらいいのかと路頭に迷っていた時、あの男が声を上げた。
「おい、ディビット。なーに不貞腐れてるんだ!!
出てこい!!わしが稽古でもつけてやる!」
3人はオスターにこれなら出てくるかもとキラキラとした目を向けた。




