15話 ディビットのために
3人はオスターの家へと招かれた。
ディビットが初めてここを訪れたあの日と同じように
オスターは紅茶とクッキーを振る舞った。
「さて、お前たち3人はわしにどんな用があるのか、も気になるがまずは自己紹介だな。わしの名はオスター・ゾグラフ。昔冒険者をしていた。」
その言葉に続いて3人も自己紹介をした。
「げっ!お前ら全員クラインの所の子どもかよ!
てっきりディビットの友達かと……。」
その言葉にハリーは返事をする。
「はい!ディビットの友達で間違いないです!」
するとオスターは間髪入れずに声をあげる。
「本当か!?あいつにも遂に友達が……!!良かったなぁ、良かったなぁ。俺は子どものくせに妙に大人くせぇディビットのこと、結構心配してたんだよ。
で?どうだ?最近ディビット見かけねぇが元気か?
まさか、修行もしないで3人と毎日遊んでたのか?
なーんてなぁ!!へへ!」
オスターは、ディビットに友達が出来たということを知った喜びと自分の茶目っ気の効いた言葉に笑っていた。しかし、反対に3人の表情はうかないまま。
オスターはそれを見て、なぜだろう、もしかしてわし詰まらんかったか?と恐怖までしていた。
そう、うかない顔をしているだけでは話が進まない。
このままでは、刻々とオスターの勘違いを増やし続けるばかりなのである。
今は一刻も早くこの事態の解決策を見つけることが必要なのだ。だからここでハリーが声をあげた。
「その……ディビットのことで話があってココにきました。彼は今、元気ではありません……。」
その言葉にオスターは固まってしまった。
しかし、表情だけは変わりゆき、
笑顔は彼の顔から消えつつある。
「な、何かの間違いだろ……?そうだ!熱でも出したか!お前らも心配症だなぁ〜!そんなんで、こーんな森の奥にあるわしの家まで来るなんて!」
オスターはそう言った後に3人の顔を順に見つめた。
しかし、皆目を逸らしたり俯いているので
一向に目が合わない。
……その様子を見て、オスターは悲しみにくれた。
あぁ、これは冗談などではないのだと。
あの大人びていて、マセガキなディビットが今…………元気を無くしているのだと。
オスターは3人の子ども達に向かって、詳しい話を聞かせてくれと頼んだ。オスターはこんな幼い子どもたちにだけ問題を背負わせて、自分だけはのうのうと暮らすなんてことが出来る性格ではないのだ。
オスターが3人にそう頼んでからは早かった。
ハリー、オリバー、アメリが入れ替わり立ち代りで事の経緯を説明した。3週間教会へ来ていないこと、心配してディビットの家に行ったら部屋に引きこもっていたこと、そしてあとは死ぬだけなんだとディビットが言っていたこと。
その話を一通り聞き終わった時、オスターの目は闘志に満ちていた。そして真っ直ぐと3人を見つめる。
先はオスターから目を逸らした3人であったが、今度はそうしなかった。そうしなかったと言うか、出来なかったのである。オスターの強い気迫に3人は呑み込まれてしまったのだ。
そうして、緊迫した雰囲気の中オスターは言った。
「修行だ。着いてこい。」
3人は、脈絡のないオスターの言葉に唖然とする。
そこでオリバーは若干興奮気味に言う。
「突然修行だって何だよ!今はそれどころじゃない!ディビットが悲しい思いをしてるんだ!もっとディビットのためになることをしたい!!」
この言葉にはハリーもアメリもうなずき、
オスターをしかめた目で見た。
しかし、3人がいくらオスターの発言に対し批判をして騒ぎ立てようが、オスターの姿勢は変わらない。
「いや、これからするのは修行だ。今すぐ始める。
お前たちはまだ状況を理解出来ていないようだから言うが、これはお前たち3人が思っているよりもずっと大変な事態に発展することになるぞ。それこそ、生きるか死ぬかのな。だからディビットを救うにはわしらがもっと強くならなければいけない。」
3人は息をのみ、オスターを見つめた。
何の知識も、常識、情報も、持ち合わせていない3人にとっては、オスターの言葉が全てだった。
彼の言葉の裏は、自分たちの知る少ない情報だけでは分からないし、何より3人はディビットに対する理解が薄いのだ。3人とディビットの関係は日が浅い。
1番歴が長いハリーすらも、まだ数ヶ月の関係なのだ。そして何よりディビットは自分のことを話したがらない。いつもどこか壁のある感覚を、3人は共通して覚えていたのであった。
だから、ディビットのことをよく知るこの男にしか知らないディビットがいるのだ、そう思った。
…………ディビットが本当の意味で気を許しているのはこの男だけなんだ……そんな気がした。
3人はオスターの言葉に乗ることにした。
「オスターさん、大変なじたいってなに?」
深刻な雰囲気は消え失せ、仲良く4人で茶と菓子を楽しみ終わったところでアメリがそう言った。
オスターは先とは一転、柔らかな受け答えで返す。
「それはディビットもいる時に5人で話そう。…あっ!修行のことだがな、クラインには話さないで森に遊びに行くとでも伝えておいてくれ。クラインの所の子どもらに勝手に修行をつけてるなんて知られたら、わしがおこられるからな。」
その言葉を聞いて3人はクスッと笑った。
ボスはそんなことで怒らないよーと笑いながら言っているが、オスターの顔はマジだ。オスターはいつの日かに怒られた記憶を引きずっているのだろう。
夜が明け、3人はもう1度森へ来た。
今度はアクシデントもなく、順調な進みだ。
しかし、いくら歩いてもオスターの家にたどり着けない。それを不思議がってオリバーは言う。
「なぁ、昨日こんな場所通ったか?もっと森の入口から近かった気がすんだけど。」
辺りは葉がうっそうと茂っていて、日の光すらも入ってこない場所になっていた。
ガサガサ………ガサガサッ
突然周りから音がたち始めた。
怖いねと3人は小さく固まりながら言いあう。
音がだんだんと近付いて来ているように感じる。
3人は音のする方向を向きながら後ずさりをした。
するとその時、目の前の茂みからひょこっと人が現れた。それはオスターだった。
3人は驚きのあまり大絶叫だ。
「あーごめんごめん!驚かすつもりは無かった。
ごめんなー、実は色々事情があって家の周りに認識阻害してくれる結界を張ってるんだよ。今日はその結界解除するの忘れててな!見えなくてわしの家通り過ぎただろ!ごめんごめん!」
オスターは軽い感じでそう言った。
3人はほんとに怖かったんだから!と怒り気味だ。
オスターの家に来た。
3人はさっきのお詫びにと昨日よりも豪華なお茶と菓子を食べていた。ホイップとかが乗っていてとてもおいしい。孤児院ではたまにしか食べられない代物だ。
3人は腹も満たされ機嫌も良くなったところで修行第1回目を始めた。
【ハリー視点】
ディビットは最初から魔法が上手だったらしい。今ではオスターさんよりも戦闘力が高いかもなんだってさ。僕、全然知らなかった。なんでディビットはいつもいつも、僕に隠し事をするんだろう。言ってくれてもいいのに。1人で悩んでたって何も………ううん、ダメだよね。こんな事考えてちゃ。ディビットにだって言いたくないもあるよ!今は魔法の練習に集中しないと!僕たちはディビットと違って本当に魔法初心者なんだ!それに時間もないし、てきぱき動かないと!
僕たちは昨日、初めて魔法を使った。
だから魔法の知識はあまりないし、昨日使った魔法だって適当にやったもの。多分いい感じに魔法が使えたのも偶然なんだろうな。まぁ僕は大失敗してるけど。
オスターさんは元魔法使いだ。僕たちとは違う火の属性を使っているけれど、魔法の扱いに慣れていることには違いない。これからしばらく、魔法の練習においてお世話になるつもりだ。
そこでオスターが口を開いた。
「おい!集まれ!3人の実力は今見させてもらった。魔法の扱いはまだまだだな。しかし、わしらには時間がない。だから1週間!それだけの練習でそこそこの実力ぐらいまでを目指してもらう!いいな?」
その言葉に3人は勢いよく、はいと返事をした。
「オリバーは土魔法だよな!見た感じ基礎は大丈夫そうだから中級のから練習だ。アメリ!光魔法だな?回復系基礎のヒールは出来ていたから、同じく基礎の攻撃系魔法のライトボールを練習するか!それが終わったらわしの好きな光魔法、中級のライトソードを教えてやろう!特別にな!!」
その言葉にアメリはやったー!!と飛び跳ねて喜んでいた。そして、オリバーの家の庭を走り回る。途中で
コテっと転んでしまったけれど、ハリーが大丈夫?と手を貸し起き上がらせたのでなんの問題もなかった。
オリバーはと言うと、遠く離れてしまった所でアメリとハリーがそんなやり取りをしている所を横目で見ながら、オスターへ質問をしていた。彼にとってこの光景は日常茶飯事すぎて何とも思わないのだ。
「オスターさん!さっきの話を聞くに、光属性だけ他の魔法より3種類多い6種類の魔法がつかえるってことですか?」
「ああ、そうだ。光魔法だけ攻撃系3種、回復系3種の魔法を使える。お得だよなーまぁ、大変だけど。」
オリバーはへぇーと斜め上を見ながら頷いている。
するとオリバーが離れた位置を見ながら叫ぶ。
「っておい!それライトボールじゃねぇか!早いな!
それにハリー!それは中級魔法じゃねぇか!何でか中級は上手く出来てるようだが、お前は基礎からだ!家中水浸しとかにされたら困るからな!!」
ハリーはしょんぼりと下を向いてしまった。
はーい。とだけ返事をして。
それと真反対に、アメリは褒められて大喜びだ。
早く攻撃系の中級を習いたいのだろう。
オリバーは2人に先を越された!と落ち込んでいる。
オスターは新たな弟子の誕生に思ったのであった。
この魔法を覚えるスピードは異常すぎるが育てがいがある、自分を裕超えていくだろうと。そして、この3人は自分がしえなかった様な大きな冒険をするぞと。




