11話 ついに物語が動き始めた!
……待てよ?これは確実に日本刀だよな?
剣では……ないよな?
ここは異世界なのに?
中世ヨーロッパみたいな雰囲気なのに?
まじで何がどうなってるんだよ!
するとボスが言う。
「ね?ちょっとかっこ悪いでしょう?それに……言っちゃなんですが、これは接近戦にしか使えなくて光魔法使いには不利なんですよ。こんなの誰も使わないし、使う訳が……」
その時、俺の心は喜びに満ちていた。
久しぶりの故郷の雰囲気を感じて心が浮ついていたのかもしれない。
だからか俺は食い気味に言った。
「僕はこの魔法で戦う!!」
「本当にこの魔法が使いたいんですか〜?珍しい人ですよ……なんでこの剣に惹かれるのか……子供心は難しいですね!」
なにを言ってるんだ!
おかしいのは圧倒的にそっちだろ!
こんなロマンのある見た目なのにかっこ悪いなんて。
……まぁわかんないヤツはわかんないままでいい。
今は多様性の時代だからな。
ここはどうかしらないけど。
ここらで1度、師匠に近況報告に行くことにした。
「師匠〜お久しぶりで〜す!…………。」
ん?誰もいない?まぁそんなのはいつもの事だ。
2人分のお茶でも入れておいてあげて待と。
ふぅーー!!入れ終わったー!なかなかいい香りなんじゃないか?
「あっ!師匠いた!お茶入れておきましたよ〜!」
「お、ありがてぇ。もうクタクタだわ……」
確かになんか、今日の師匠汚れてるしくたびれてる感じすごいな。
「今日は何してたんですか?」
「あぁ、今日はこの森の魔獣を根絶やしにしてきた」
ふーん、そっか。
まぁ師匠だもんな、それぐらい普通か……。
って待って!?
ここって魔獣1匹も居ないんじゃなかったの!?
「師匠!ここには魔獣が居ないと聞いていたんですが……実は結構いるんですか?魔獣……。」
「あーそれな。多分わしが全部殺してるせいだわ。
この森、本当は魔獣だらけなんだぞ?だからここには誰も住んでないし、開発もされなかった!」
……まじかよ。まさかとは思ったけど本当なのか。
「まぁ。ウィンウィンな関係なんじゃないですか?
師匠はそのおかげでここに住めるし。魔獣はいなくなって安全になるし。」
その言葉を聴いて師匠はにっこりと笑った。
まじでなんなんだよ。
「と言うかディビッド。光魔法はどうなった?
「あぁ、それならですね!無事に全部出来るようになりましたよ!すごいでしょ!!」
「あぁ、すごいすごい。まぁお前が出来ないわけは無いと思っていたけどな。最初から。」
なんか信じてくれてて嬉しいな。
そして俺!最強すぎる……!
「中級魔法は教えて貰えたか?あの光の魔法使いからカッコ悪いとかって嫌われまくってるやつ。」
「え!?もしかして師匠もカッコ悪いとか思ってるんですか!?信じられません!あの魔法の美しさに気がつけないなんて……!!」
「……いや。かっこいいと思うぞ?」
「もう!馬鹿にしないで下さい!本当は思ってもないくせに!!」
「いいや、わしの言葉は嘘などではない。本当にこの魔法が好きなんだ。周りは誰も理解してはくれなかったけどな。でもまぁ、お前か……わしの初めての理解者は!嬉しいぞ!今まで数十年馬鹿にされ続けたからな!……特にクラインに……。」
わぁ〜お!師匠は!ジャパニーズ的心を持っている!?
まさか!この異世界にコレを理解してくれる仲間がいるなんてっ!感激すぎる!!
「ライトソードッ!」
俺はあまりの感激に舞を踊らずにはいられなかった。
前世で剣を習っていた訳では無いから、それっぽいものしか出来なかったけれど、剣の型をとってみた。
案外師匠は喜んでくれた。
俺がひらひら、くるくる、ぴょんと動き回る所をみて
師匠は手拍子を打って楽しんだ。
とまぁ茶番はこのぐらいにして。
俺はそろそろ、ちゃんと考えないといけないのではと思う。自分の魔法のことについて。
俺は2度目のこの人生を無駄にしたくない。
だから今日はその相談も兼ねてここへ来たのだ。
いつも師匠はまだ観察を続けろと言うけれど、
本当にそれでいいのだろうか?
俺は普段から嘘をつき続けて生活をしている訳だが、
最近ボロが出てきてしまってきている。
俺の魔法複数持ちがバレるのも時間の問題……。
観察だけを続けていても俺の死への道は着実に迫りきている。不安はつのり続けるばかりなのだ。
「師匠、僕はこのまま観察を続けるばかりでいいのでしょうか?」
俺はつい、そう口走ってしまった。
こんな事言うはずじゃなかったのに。
あぁ、師匠、困っちゃったよな……。
「その事なんだが、今日話したいことがあるんだ。」
師匠はちっとも困っていない顔で言う。良かった。
「明日からはもっと強くなるため、わしとの修行を
再開させないか?」
俺の顔はたちまち明るくなる。
答えはもちろんYESだ。
翌日、俺はまた師匠宅へ来た。
「こんにちはー………ってどうせまた居ないよ!
いつも家の中に居ないもんね、知ってるよ。」
そう俺が呟いた時、部屋の窓が勢い良く開いた。
「おい!遅せぇ!さっさと外出て稽古始めるぞ!!」
わぁっ!!びっくりしたー!!
「は、はい!!今行く!」
「はぁ、……ディビット、前より弱くなったな?」
「は、はい……。最近は練習サボッテマシタ……。」
するとしばらくの沈黙のうち、師匠は少し笑みを浮かべながら言う。師匠の背景には炎が見えるようだ。
「特訓し直しだなぁ?」
ひいいぃぃぃぃい!怒ってる!!!!
「……まぁ今日はこの辺にしておこうか。やりすぎてもかえって良くないしな。」
「やったー!今日はここで終わり?疲れたし早く家に帰ろっと!じゃあね、師匠!!」
「あぁ、気をつけて帰れよ。」
帰ったらまず何をしようか……。
魔法で遊ぶか?それとも久々に絵を描く?
スタンダードに寝るでもいいな……!
あぁーっ!何だかこの体になってから、全てが目新しく見える!する事なすことにわくわくが止まらない!
「だっだいまー!!」
……………………………………………………、
誰もいない?そんなはずは無いんだけどなぁ?
もー!!せっかくみんなの絵でも描いて見せようと思ったのに!
すごいんだぞ!?俺!
前世では中学生ながらにフォロワーが11万人もいたんだから!高校に入ってからは絵をさっぱり描かないまま死んじゃったけどね。
はぁ〜ああ!!いいよもう!
自分だけで絵を描くから!
……………………………………………………。
「…………………で…………だから………!!」
ん?どこからこの声がするんだ?
俺はよーく耳をすましてまた声の出処を探る。
…………………………………………。
これは、あの衣装室?
普段は人なんて居ないのになぁ……。
誰だろう?
俺はその衣装室をドアの隙間からそっと覗いた。
何だか自分の正体を明かしてはいけない気がして。
そこにはメイドのリリーと母親のジェンナがいた。
2人の間には深刻な雰囲気が流れる。
どうしたんだ~?らしくないなぁ、2人とも!
いつもはとっても元気なのに!!
これは俺が行って元気付けてやるしかないな!
この俺の癒しパワーを食らうが良…………い?
そう考えていた瞬間、
ディビットの耳は2人の会話を捉えた。
それは、とてもとても恐ろしく、
ディビットが1番望んでいないものであった。
「やつはいつ来るの?」
「早くて2ヶ月後かと……。」
「遅いわ!そんなんじゃあの子が覚醒してしまう!」
「これ以上予定を早めることは出来ないそうです。」
「はぁ、仕方ないわね。じゃあそれでいいわ。」
「はい、申し訳ありません。」
「きっとあの子は悪魔の子よ。ここに長く置いていてはいけないわ。」
「はい、わかりました…………。」




