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09話 記念日


「お前、本当に貴族だったんだな。」


少年はきょろきょろと辺りを見回しながら言った。

まぁ、こんな田舎の男爵家ではあるが

一応貴族だもんな。

家も貴族にしてはだいぶ地味な方ではあるが、

この辺の一般的な家と比べれば少しだけ大きい。


「まぁまぁ、とりあえずご飯にしましょ!メイドに話をつけて来ますね!」


「あぁ、よろしく頼む」

「ありがとう!ディビッド!!」

「ありがとう!」


3人の子どもたちは口々にそう言った。





俺はリリーを探しに台所へ来た。

……おっ!良かった、ちょうどいるじゃないか!

よーし、リリーには突然で申し訳ないけど

ご飯頼んじゃおーっと!


「リリー!ちょっとお願いがあるんだけどいい?お昼ご飯を作って欲しいんだけど…………。」


そう言うとリリーはこちらへ振り返って言った。


「もちろんそのつもりでしたよ!なんで改まってお願いを?いつも作ってるじゃないですか。」


そうです、その通りです!

いつもありがとうございます!

でも今日は作る量がいつもと違うんだぁ!

申し訳ねぇ!


「実は僕1人分だけではなくて、4人分のご飯を……」


そう言うとリリーは目を丸くしながら言った。


「も、もしかしていつもの量では足りなかったのですか、!?ごめんなさい、今まで気づくことが出来ず!

……そうよね、育ち盛りなんだものこんな量ではそれは足りるはずがな……………………」


リリーはずっとブツブツと言っている。

なんだか変な勘違いをさせてしまって申し訳無いなぁ


「リリー……そうではなくて、4人分を友達と一緒に食べるのです。僕1人で平らげるのではなく…………」


そう言うとまた、リリーは大層驚いた顔をした。


「そうだったのですか!安心しました……。

…………って!そんなことより!お友達ですか!?家に連れて来るのは初めてですね、どんな方々なのか気になります。あと、どんなものが食べたいですか?今のところハンバーグにしようと思っていたのですが…」


「ハンバーグ!そのままでいい!楽しみにしてます!なんだかもうお腹がすいてきました!」


そう言うとリリーはフフっと笑ってまた、

料理の下準備へと戻った。





「戻りました!ご飯作ってくれるって! 」


俺はいつもと変わらない表情で微笑みながら言った。

すると少年は少し悲しい顔をして言った。


「ありがと、お前ら思ったより良いやつなんだな、あの時は理不尽に怒ったりしてごめん。」


ほぅ、意外と素直じゃないか。

この子たちも思ったよりいい子なのかもしれないな。

………………………………………………。

あー。よくよく考えればあの時あの女の子……名前なんだっけ、まぁその子はハリーに対して元から好意的

だったもんな。いい子の素質は十分にあったか。

……しかし!これっぽっちでハリーが許してくれるかは別だぞ!君らはそれぐらい悪いことをしたんだ!

ハリーから許して貰えなくても、当然のことなんだからな!?



…………ふっ、俺は横を見て少しばかり笑みが漏れた。

ハリーのこの顔、もう2人に怒ってはいなそうだな。

俺は勝手に嬉しくなった。

やっぱりハリーはハリーだな……。



「そういえば、僕達まだ自己紹介が済んでいませんでしたね!お2人の名前を聞かせて下さい!!」


俺は、今更だがここで自己紹介タイムを設けることを提案した。すると少年は驚いた顔をして言った。


「あぁ、俺たちまだ名前も教えてなかったか!

すまん今から教える。俺の名前はオリバー、

6歳だ。お前たちより1個だけ上だな。どんどん頼ってくれてかまわない。」


オリバーは爽やかな笑みを浮かべてそういった。

すると彼は横を見て、モジモジとしている女の子にも

声をかけた。


「おい、どうした?珍しいな!いつもは誰彼構わず話しかけに行くのに……。ほら、2人に自己紹介は?」


すると女の子は恥ずかしがりながら言った。


「わたしアメリ!助けてくれてありがとう!!

2人はわたし達の「ヒーロー」だね!」


するとオリバーは一瞬驚いたような顔をしてから

少し微笑んで言った。


「あぁ、そうだな!」




全員の自己紹介を終えると、図られていたかのようにちょうどいいタイミングでリリーの手作り昼ごはんが届いた。


「お待たせしました、熱いので気を付けてお召し上がりください。」


リリーは4人全員に微笑んでそう言った。

………するとリリーは突然こっちに擦り寄ってきた。


「うわぁっ!なんですか!もぉ!!」


俺がそう言うとリリーは少し怒っている様に言った。


「なんですかじゃないですよ!この子たちはどこで見つけて来たんですか!!」


??なんでそんな質問を?

……………………………………………………………。

っ!忘れてた!この世界ではなぜか孤児とハリーが

蔑まれてるんだった!!!

あぁ、そうだよな。リリーもこの世界の住民だ。

当然例外ではないよな……。

心のどこかでリリーだけは違うと思っていた。

やはり自分中心で考えるとこういう事が起きる。

これからはちゃんと気を付けていこう。


にしてもやはり、ここで引いては行けない気がする。

なんとしてでも!ここでリリーを説得しなければ!


俺はできる限りの申し訳なさそうな顔を作って

リリーに謝罪混じりの事情説明を始めた。


「すみません、すみません!この子はたちは教会で見つけてきて……いや、本当にいい子たちなんですけどね?……」


もう!本当にいい子たちなんだよ!伝われ!

しかし、俺はこういうプレゼン的なのが大の苦手である。そう、あの引きこもりの前世からな!

俺の言葉は次第に続かなくなり、ついにはごにょごにょとし始めた。


するとそこでリリーが勢いよく話に割りこんできた。


「いえいえ!そう言う意味ではなくて……!ただ、

ディビット様が同年代のお友達をお連れになられたことに驚いて……」


え?あぁ、そっち?

俺が年相応の友達連れてきたことにびっくりしてるだけ?俺は何だと思われてるんだ。

俺はごく一般的な5歳児だろ!

……いや、まぁ、ね?見た目は5歳だから。


って!そんな事を言いたいんじゃなくて!

逆にリリーはこの3人を見ても何とも思わないのかって事を聞きたいんだ。

あきらかにバルミー伝説の少年であるハリーに

この世界ではなぜか嫌われているという孤児の2人。

リリーは歩くウィキだ。

流石に気付いていない訳では無いだろう。

この異様な組み合わせを見て何とも思わないのか!?


俺は深刻な顔をして聞いた。

この3人の事は何とも思わないのか、と。

するとリリーは拍子抜けしてしまうほどに

軽い感じで答えた。


「別になんとも思いませんよ?かわいい子たちじゃあないですか。それに私はバルミーで生まれ育った訳ではありませんからね、そんな事信じてませんよ〜」


俺は一気に肩の力が抜けた。

……そうか……リリーは俺と同じ感覚なんだな。

なんだかそう考えると嬉しくなってきた。

俺はこの世界に来てから人と同じ感覚を持つ事が少なくなっていたから。

ここも前世と同じところがあるのだと安心する。

………しかしだ。

バルミー伝説がこの地以外で生活していたリリーに馴染みがないのは当たり前の事だろう。

でも、まさか孤児の差別までリリーの地で馴染みがなかったなんて……。

リリーは比較的栄えている所で生まれ育ったと聞いている。やっぱりこう言うのは田舎特有なのか……?

……まぁ考えても仕方がない!

ここはリリーが3人を歓迎してくれた事を素直に喜ぶことにしよう!





「ハリー、オリバー、アメリ、これからも色々あるかと思いますが少なくとも僕はいつも味方でいます。

……………………だから、僕の………友達になってはくれませんか?」


俺はそう言った。

友達なんて久しぶりに作るから今までどうしていたのかさえ忘れてしまった。

普通は友達って、こう改まって「友達にならない?」

なーんて言わなかった気もする。


……だが、この3人ならこんな可笑しい俺の事を笑わないで受け止めてくれるだろう。

…………………この3人なら信じられる気がするんだ。





すると3人は可笑しそうに笑いながら言った。


「ディビット!僕達ってまだ友達じゃなかったの!?最初に友達になろって言ったじゃん!ひどいよぉ!」


「おいおい、さっきみんなで認めあった所だろ?

そんな確認なんかしなくたって俺らはもうとっくに

「仲間」だ!!」


「私たちはもうとっくに「友達」!」



はぁ、さっき笑われないって思ったばっかりなのに

もう笑われちゃった。


そう考えていると、俺の表情は自然と緩んだ。


…………悪い気分はしないな。



「それじゃあ皆さん!良き出会いに感謝してリリーの

ご飯を頂きましょう!」


俺が笑顔でそう言うと3人は一斉にうんと頷いた。

リリーも微笑みながらこちらを見ている。


今日はきっと今世で1番の記念日になるだろう。






「それでは!頂きまーーす!!!」





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