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02

 

「だから!その何とかって先輩がヴァンパイアだったってことなの!」


 豪語するのは少女だ。


 あの後言われるがまま家に連れ帰ってしまった少女だ。


「そ、そうなんだね...ところで、おうちに帰らなくていいの?僕でよければ送っていくよ?」


 既にあの出来事が昨晩と呼べてしまう時間である。


「私を子ども扱いしないで!役目はしっかりこなすので!」


 そう言い頬を膨らませる姿はどうしようもなく少女である。


 というか、連れて帰ってしまった時点で誘拐や拉致として事件になったり、犯人として捕まるなんて事になったりしないだろうか...。


 役目ってのも、ジェシーとやらの言ってた僕の()()なんだろうし、言い逃れの余地はありそうな気もするけど。


「でも、ママとかパパに連絡入れなくていいの?心配してるだろうし」


 少女は少女らしからぬ暗い目をしたかと思うと。


「家族はいないんだ、心配する人も、だから気にしなくてもいいよ」


「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ...本当ごめん」


 まさか...想像できないじゃないか、少女は少女なのに少女らしからぬ、なんて...。


「そんなことより、いい加減失礼だと思う!」


「な、なにが?...膝の上に向かい合わせで座らせてること?じゃないだろうし...ああ、お茶出してなかったね!」


 大先輩として接客態度で先輩風を吹かそうと迷走してしまうところだった。アブナイ


「いや!ちがうよ!全部違う!」


 何?お茶ではない...では家族への挨拶?でもうちに帰ってきたときにはもう寝てるみたいだったし、起こすのも少女をお持ち帰りしたと勘違いされるのも面倒だったから...。


「まず、膝の上に座らされたのはびっくりしたけど、そういう趣味もあるって聞いたことあるから、しかたなく座ったけど」


 あれ?なんでだろ、すごく犯罪の香りが強くなった気がする。あれ?無意識のまま僕から膝へ誘導してしまったのか?それはまた失礼してしまったな。


「名前だよ!名前を教えて!呼び方わからないから!」


 膝上から飛び降り、少女は短い腕をぴんと伸ばし僕の顔へ指をさす。


「ごめんごめん、自己紹介してなかったね。僕は鳥崎 ヒロキ(とりさき    )っていうんだ、よろしくね」


「ヒロキね!友達の名前と似てるからヒロってよぶね!よろしくヒロ!」


 少女は嬉しそうに語る。


「私は...ミニっていうんだ。呼び捨てでいいから名前で呼んでね」


「そっかそっか、ところでミニちゃんは何歳になったの?」


「わからない!年齢不詳の女は魅惑の女になれるって!ジェシーが言ってた!」


 子供に何てこと教えてるんだ、あの人。


「珍しいね」


「僕が?何か変なことしたかな?」


「変なことは家に帰ってからずっとしてたよ。でもね、そうじゃなくって!落ち着いてるなーって」


 ああ、そっちか...。


「屋上の出来事だよね、たぶん現実味がなさ過ぎて、家に帰って来たから尚更さっきのが夢だったんじゃないかなって思って、落ち着いてしまったんだ」


 ミニは大きく首を傾げ、あごに手を添えた。


「でも、夢だったらミニはここにいないよ?」


「そう...なんだよね、だから今も夢で、いつか目が覚めるんじゃないかなって、期待してる」


 本当は夢じゃないのは自覚してる。ジェシーの指先から伝わる体温も、次第に冷たくなる先輩の体も、ミニの手から伝わる熱も、どれも触れたから。


 でも、言葉だけでも否定しておかないと、頭がおかしくなりそうなんだ。


「ヒロはこれからどうするの?」


 ミニは僕の膝に手を置き、僕の顔を見上げた。


「どうするんだろ...」


 僕に何か選択肢があるのだろうか。


 例えば、昨晩の事を警察へ?それとも何事もなかったかのように普段の生活に戻るとか?他には、先輩の敵討ちとか?


 ジェシーに口止めされたのは忘れてない、けど黙ってて良いものなんだろうか。


 いくら現実味がないとはいえ、信憑性がないとはいえ、僕は犯人を知っている。


 瞬く間に校舎を破壊した人も、あっという間に先輩を殺した人も。


 知ったうえで黙ってるのが正しいのだろうか?


 正しさだけで言うなれば、あの場で警察に通報するのが一番正しかったんだと思う。


 そうなるともうすでに遅いわけで。


「ちょっと散歩してから考える?」


 ミニは僕のベットにジャンプして腰かけた。


「そうだね、とりあえず僕は明日、見に行こうと思うよ...」


「そっかそっか。じゃぁまた明日」


 ミニはそのままパタンと倒れるように眠りについた。そう、僕のベットで。


 さて、どこで寝たものか...。

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