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External Chapter.リセットセット

 ところで植芝さんがいないのだから、あの日の出店で提供されたラーメンには当然、植芝さんから抽出した出汁は入っていないことになる。


 過去に味わった通り、樋口さんの実力百パーセントで作られた料理は凄まじく不味い。それをお客さんに食べさせてどうなったかというと――、実はどうにもならなかった。


 いや、実際はどうにかなったのだが、何にも起きなかったことに結果としてなった。



 どういうことかと言うと、樋口さんの作ったラーメンを口にしたお客さんたちは次々と、「食べた」という記憶を喪失していったからだ。


 『包々軒』ののぼりが建てられたテントの前。ラーメンの入った椀と割り箸を受け取り、お手並み拝見と麺を少量、あるいはスープを一口だけ啜るお客さんたち。殲滅戦の後をイメージさせる強烈な味が舌を通して脳へと伝わると、即座アラートが頭の中で鳴り響き、彼らは「食べた」という記憶を本能的にゴミ箱にダンクする。


 だからその日、「『包々軒』の四代目(予定)が作る料理は壊滅的に不味い」という事実が白日の下に晒されることはなかった。人々はみな、あの食べる拷問器具とも形容できるあの味を、脳内に一ビットたりとも残さずクリーンアップしたからだ。


 これが後の世で語られる、出店記録があるのに誰も『包々軒』のラーメンを食べた者がいないという怪談話の真相であった。


(今度こそ了)

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