『短編詐欺』を読者、作者双方の視点から考える
これは一時期『短編詐欺』と騒がれた、短編に長編前提の話を掲載する事に関するエッセイです。著者はどちらかといえば肯定的な立場ですが、否定派の方々の意も汲み、互いが妥協できるのではないかという着地点を考察、提言しております。
例外なく認められないという方には適さないエッセイかと存じますので、申し訳ございませんが該当する方は閲覧をご遠慮下さい。
皆さんは『短編詐欺』という呼称をご存じでしょうか? これは小説家になろうにおいて短編投稿欄に長編前提の作品を投稿する事を、一部の読者の方々が批難する際に使われ始めた言葉です。では何故批難されるようになったのか。その理由からおさらいしていきましょう。
批難される理由(読者側の意見)
①短編としての体をなしていない作品を読んでしまってガッカリさせられる
短編と思って見てみたら、中途半端なところで終わり、後書きには『評判が良ければ連載を考慮します』といった文面。確かにこれはガッカリします。酷いものになると、あらすじに書いてある事すら書き切らずにぶつ切りにする場合もあるとか。確かに時間を無駄にしたと読者が怒られるのも無理はありません。
②短編ランキングが上記の作品に埋められ、一話完結である本来の短編に光が当たらなくなる
これもまた短編読みの方々にとっては由々しき問題であります。①で紹介したような作品は、批判される方もいますが、そのやり方を別段気にしない、あるいは好意的な読者もいます。そういった方々は上記の作品にもポイントを入れるため、純粋な短編書きが埋もれてしまう。それによって反応を得られなかった短編作者が去ってしまう危険性があるとして批難される方もいるようです。
他にも様々なご意見があるかとは存じますが、大きな理由としてはこの2つに絞られるでしょう。どちらもごもっともかと。では作者側の投稿する理由も見ていきましょう。
長編前提の作品を投稿する理由(作者側の意見)
○市場のリサーチとして非常に有用である為
唯一にして最大の理由と言えるでしょう。読者の方々の読む時間が有限であると同じく、作者の作品に充てられる時間も有限です。長期間の準備を経て発表した作品が、鳴かず飛ばずであった時の絶望感は、まさしく筆舌に尽くしがたいものがあります。それが原因で引退してしまう作者もいる程に。そういったリスク回避の手段として、短編としての投稿は非常に有用なのです。
新作のお菓子やジュースを売り出す前に、ターゲットとなる層に試食、試飲してもらってデータを取るのと似ていますね。事前調査を軽視すると、大抵失敗します(実体験)。
お試しの作品を投稿するのは、マーケティングの観点からしたら当たり前の行為なのです。規約、ガイドラインを再度確認いたしましたが、違反行為でもございませんでした。
事実、上記のお試し版を投稿して反応が良かった作品を連載化した所、一定の読者の方々に読んで頂けるまでになりました(なろう、カクヨム合わせて5,000ブクマ程)。
以上が双方の代表的な意見です。私はお試し版も利用したことがある作者の為、後者寄りの立場ではありますが、そちらの立場に立ってばかりでは話は何も進まないので、短編読者に対して作者が出来る事を考えました。
①『短編としての体をなしていない作品を読んでしまってガッカリさせられる』に対して作者が出来る事
a.お試し版の序章であるにせよ、何らかのオチは付ける
これを行えば、それは短編(読み切り)だと私は思います。もし仮に短編詐欺を嫌う方が読んでも、そこまで不快感は与えずに済むのではないでしょうか。
b.分かりやすい場所に【読み切り】あるいは【お試し版】等の表記をする
タイトルかタグなどにこの記載を行えば、誤って読んでしまう確率も減らせます。逆に、そういったお試しを読む方への目印にもなります。
(既に投稿して時間が経っているので影響はないかとは思いますが、一応自分が投稿したお試し短編のタグには【読み切り】を追加しました)
②『短編ランキングが上記の作品に埋められ、一話完結である本来の短編に光が当たらなくなる』に対して作者が出来る事
こちらに関してはなかなか難しい問題です。ランキングに載らなくても良いと考える作者でしたら、評価を非公開にすれば良いのですが、反応を見るのが目的でもあるので、最初からは難しいでしょう。ランキングに掲載されて十分な反応が得られ、連載が開始されたら非公開にするといった配慮があれば良いかもしれませんね。
以上が、私の考える作者が短編読者に対して出来る事でした。お試し版を投稿しようと考えている作者の方は、意見の一つとして考えて頂ければと存じます。
読者の方々が出来る事、に関しても書こうかと思いましたが、作者側が書いては押しつけがましくなってしまう為、今回はここで筆を置きます。
一つだけ、読者の方々にご理解頂きたい事がございます。お試し版を投稿する作者は決して悪意でその様な事をしている訳ではありません。
マーケティングの観点も勿論ですが、根底には皆さんに喜んで貰えるような作品を書きたいという気持ちもあるのです。それだけは、ご理解頂けると幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。小説家になろうという自由な執筆の場がより素晴らしいものになりますように。
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