表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

とある世界の末路

作者: ふるふる

作者の闇を少しだけ吐き出しました

 「これより、第238次地球人召喚の議を執り行う!」


 王宮の大広間にカルスメニア王国国王であるウィリアム・カルスメニアの声が響き渡る。

 大広間の中央には巨大な魔法陣が描かれ、その周囲には大量の魔法使いと、彼らを守るように騎士たちが配置されている。

 いかにも、異世界から人を召喚しますと言わんばかりの光景である。

 このカルスメニア王国が栄える地は「神に愛された地」と呼ばれ、この世界・テルミアで最も栄えており、とある方法(・・・・・)によって魔力にも満ち溢れて国民は非常に幸せな生活を享受している。

 ……いや、していたというべきであろう。たった今この時まで。



 「今回の召喚の議もつつがなく終了しそうですわね」


 「そうだな。また1年、この国は安泰だ」


 魔法使いたちが詠唱を始めて数分、国王ウィリアムと王妃マリアが徐々に強く光る魔法陣を眺めながら言った。

 ウィリアムの言う通り、この儀式には国の存亡もかかわっている。そのため、絶対に失敗するわけにはいかないのだ。

 二人が会話をしている間にも徐々に光は強くなり、魔法使いの詠唱が終わると同時に光がはじけた。

 はじけた光によって大広間にいた人々は一瞬目が見えなくなり、回復した後、魔法陣のほうを見て驚愕した。

 たった一人(・・・・・)の少女しか召喚できていなかったからだ。

 しかし、召喚は今までと同じように行われ、成功していた。ならば、この少女にとてつもなく強い力があるのではないか。

 そう考えた何人かの魔法使いは、少女を拘束(・・)すべく魔法を放とうとした。

 彼らの行動は迅速で、優秀さを示すものでもあった。しかし、もう少し無能であれば、後数分は長生きできただろう。

 その瞬間、


 ビュ!


 風を切るような音とともに魔法を放とうとした3人の魔法使いの、首から上と下は永遠に別れることとなった。

 

 「……は?」


 ウィリアムの口から声が漏れる。隣にいるマリアも呆然と目を見開いている。騎士や魔法使いたちも何が起こったのか理解していなかった。


 誰もが呆然とし、動けない中一瞬で3人の魔法使いを殺した少女が口を開く。


 「初めまして、誘拐犯の皆さん。突然ですが、今から皆さんを地獄にご案内させていただきま――」


 その言葉は最後までは続かなかった。目の前で守るべき対象を殺された騎士たちが少女を殺し、敬愛する主君たちを守るべく一斉に動き出したからだ。

 しかし、彼らの行動が報われることはなかった。

 少女が一度指を鳴らすと大広間にいる、王と王妃以外全員の四肢がちぎれ、それにもかかわらず彼らは死ぬことも気を失うこともできなかった。

 ただ、激痛と恐怖と混乱の中でうめくことしかできなかった。

 一息に死ねた分、最初に殺された3人の魔法使いたちのほうがはるかに幸せであっただろう。

 彼ら3人以外の人々はもう、苦しみの中で死んでいく選択肢しか残されていないのだから。


 「さて、邪魔者は放っておいて少しだけ、お話をしましょう。誘拐犯の親玉さん。それと、そこで寝ている人たちは少し黙っておいてください」


 彼女がそう告げると、うめき声が一切聞こえなくなる。

 ウィリアムにはもう、何が起こっているのかわからなかった。王妃は、騎士たちの四肢がちぎれた光景を見て失神している。今この場で彼女を問い詰められるのは自分しかいないと悟った彼は、口を開く。


 「貴様……、なぜこのようなことをする……」


 「今までの私の言動でわかりません?無能な誘拐犯さん。あなた方への復讐ですよ」


 「私を侮辱するな!」


 「この状況ではじめに言うことがそれですか?っとに無能臭いですね。まあ、あなたのペースに乗っていたら一生話が進まない気がするので説明させていただきますね」


 愚かな王の言動に呆れつつも、少女は話し始める。


 「あなたは、地球人召喚による地球への影響を考えたことがありますか?」


 「あるわけなかろう。贄の住処のことなど」


 「やはり、そのような認識なのですね。……まあ、そのほうが心置きなくあなたたちに復讐できますが」


 「なぜ私が復讐されなければならん。魔力を大いに持ちながらそれを扱う才も知能もない貴様らを有効活用してやっているのに」


 自身が絶体絶命の状況に置かれているとも理解していないのか、少女を挑発するウィリアム。

 少女はもはやそれを歯牙にもかけず、言葉を紡いでいく。


 「あなた方が地球人召喚を行うことによって、多くの人間が行方不明になっているんですよ。その影響によって人生を狂わされた人の数は数え切れません」


 ま、他人のことなどどうでもいいんですけどね。と告げた後、少女は初めて明確な怒りを見せながらウィリアムを睨む。


 「だから、私はあなた方この世界の住人を許さない。私から、唯一の家族の妹を奪い、使いつぶした貴様たちを」


 王族として生まれ、これまでの人生で明確な敵意を向けられたことのなかったウィリアムは、少女が発している濃密な殺意に心臓が止まりそうになった。

 そして、話し終えた少女は行動を起こすべく動き始める。


 「さて、身の上話も終えましたし、復讐を始めていきましょう。まずはそこでぐっすりと眠っておられる王妃様からです!」


 少女が再び指を鳴らすと、四肢を失ってうめいていた騎士や魔法使いが姿を変える。10秒後には全身真っ黒で芋虫のような見た目、そこに触手や牙が生え、異臭まで漂っている化け物が誕生していた。


 「ひっ!」


 あまりのおぞましさにウィリアムは声を上げる。

 しかし、生み出された化け物たちは彼には目もくれず、マリアの方だけを向いている。


 「いけ」


 それからの光景は地獄であった。

 守るべき対象であった王妃に化け物になり果てた騎士たちが群がっていく。

 その衝撃と異臭で目を覚ました王妃は逃げようとするも、何十もの化け物に群がられて逃げることができない。

 そのまま、化け物の群れに飲み込まれた後は、ただ絶叫するだけだった。

 しかし、その声も徐々に聞こえなくなっていった。


 「……そろそろ終わりですかね」


 そうつぶやいた後、少女はまた指を鳴らす。

 それと同時に化け物は消え去ったが、残っていた光景は地獄の残滓であった。

 美しかった王妃は服を剥かれ、犯され、手足は半分以上失い、臓器や顔も一部食いちぎられていた。

 半分残った顔は苦悶の表情を浮かべていた。


 「ふふっ、良い眺めです」


 妻の無残な最期を見、少女の言葉を聞いたウィリアムはようやく悟った。

 この少女は自分を絶対に無残に殺す。逃げるには、少女に殺される前に死ぬしかない。と。

 覚悟を決めた彼は、少女が王妃の死体を眺めている間に、床に落ちていた騎士の剣を拾う。そして一息に心臓に突き刺した。

 目論見は成功し、彼は一度死んだ。しかし、その瞬間生き返った(・・・・・)


 「何……が……、わ、たしは今、死んだはず……」


 「ひどい王様ですね~。奥さんが亡くなったのにその死を悼むどころか、自殺して私から逃げようとするとは」


 王妃の死体から離れ、ウィリアムのもとへ向かってきた少女があきれながら声をかける。


 「まあ、王妃様が死んで気分がいいのでネタ晴らしをしてあげます」


 少女は本日何度目かわからない、魔法行使のための指パッチン。今回は、10歳程度の少年少女が現れる。2人はこの国の王子と姫。ウィリアムとマリアの双子の子供である。

 しかし、そのうち少年のほうは死んでいた。片割れを失った、姫である少女は少年の亡骸に縋り付いて泣き叫んでいた。


 「アルベルト……死んでいるのか?」


 「はい、そうですよ。これはこの国の全国民にかけたある魔法の効果です」


 「魔法……?」


 「この魔法は最初にマーキングした人が死亡すると、2番目以降にマーキングした人の命を使って蘇生させるというものらしいです」


 ただし、と少女は付け加える。


 「この魔法は異なる人物の魂を分離できないくらいに混ぜ合わせる者なので、蘇生に使われた人、蘇生用の魂のストックが亡くなって本当の死が訪れた人は2度と転生することも、死後に救われることもないそうですよ。永遠に苦しみ続けるそうです」


 この言葉をウィリアムの脳は理解することを拒否した。

 自分は生きている間も、死んでからも救われない?妻に続いて息子も死んだというのに、彼はそのことだけを考え続ける。


 「ま、百聞は一見にしかず。早速実践してみましょう」


 その言葉とともに、少女はウィリアムの頭を吹き飛ばす。

 意識が一瞬消えた後、ウィリアムはまたも五体満足で復活していた。しかし、その代償に次は彼の娘が死んだ。


 「さて、お判りいただけましたか?」


 「き、貴様には心がないのか!その子たちはまだ10歳なんだぞ!」


 「一度も家族の死を悼まなかったあなたに言われたくないですね……」


 それに……、と。


 「お前たちが地球から召喚した人の中には、お前の子供くらいの年齢の子だっていたはずだ。その子たちをいけにえにしたお前の子が魔術のいけにえになって殺される。面白いでしょう?」


 この国は、地球から多くの魔力を持つ人間を召喚しては、無理やり魔力を奪い、死にそうになるとその命を対価にしてまた新たな地球人を召喚していた。

 その儀式によってこの国は魔力に満ち溢れ、「神に愛された地」とまで呼ばれるようになった。

 その報いを今、ついに受けている。

 そのことにやっと気が付いたウィリアムが次にとった行動は。


 「頼む!私だけでも助けてくれ!」


 命乞いであった。


 「この国の国民……、いや、この世界をすべて滅ぼしてしまってもいい!だから、私だけでも助けてくれ!何でもするから!」


 「……本当に何でもしますか?」


 「何でもする!だから……」


 その言葉を聞いて、少女は少しだけ考えるふりをする。

 そして、永遠とも思える時間がたった後、口を開いた。


 「やっぱり嫌です」


 少女は笑顔で言った。

 その言葉を聞き、ウィリアムの中で何かが切れた。

 そして……


 「あはっ、あははっ、ははっ。ヒャーッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!」


 ついに理性が崩壊した。

 それを心底詰まらなさそうな目で見た後少女は、彼を苦しめるべく行動を開始した。



 それからの一週間は地獄であった。

 少女はウィリアムを即座に正気に戻すと、刃物で刺し、鈍器で殴り、はらわたを引きずり出し、窒息させ、毒を打ち、獣に食わせ、燃やし、感電させ、溺れさせ……、ありとあらゆる苦痛を与え続けた。

 何万回も死にかけ、何千回も死んだウィリアムはもう、五体満足となっても動く気力は残されてはいなかった。


 そして復讐鬼たる少女はついに復讐を終える。

 二人のいる城以外の世界中、本当にすべてを滅ぼしつくしてウィリアムの復活用の残機を潰した後、彼の四肢を切り落とし、血液が流れ出るのを後れさせる魔法をかけて放置する。

 四肢を奪われた激痛と、徐々に血液が流れだしてゆく恐怖の中、ウィリアムは少女の目前でついに絶命した。

 しかし、その魂は死後も救われることもない。神に愛された地・カルスメニア王国の王の最期はあまりにもみじめなものであった。



 「真理……、終わったよ」


 ウィリアムが死んだことを確認してつぶやく少女。それと同時に床に倒れ伏す。

 その少女の頭上に影が差す。影は心底面白い見世物を見た後のようなテンションで少女に語り掛ける。


 「どうだい?復讐を果たした気分は」


 「まだ果たしてない……、けれど、少しだけすっきりしたわ」


 影の正体は地球とテルミアを管理している神である。

 しかしその本性は神の中でも残酷な部類に含まれ、自身が管理する世界に様々な悲劇を引き起こし、それを鑑賞するのが趣味であるという糞みたいな神である。

 カルスメニアに異世界召喚の手順を教えて地球人を召喚させ続けたのも、その事実を時折異世界人に教えて反応を楽しんでいたのも、それによって巨大な復讐心を募らせた少女に力を与えてテルミアを滅ぼさせたのも、すべてこの神の遊びに過ぎない。


 「私はここで死ぬ……。けれど、魂だけになろうと、その魂が砕かれようとも、いつかアンタを探し出して潰す。それまで、せいぜい人間をなめ腐ってなさい……!」


 「ほう……復讐を一部終わらせ、死を目前にしてもまだそれほどの憎悪を抱き続けるか。ならば、君が転生するまで、また世界で遊んで待っていることにしよう」


 その言葉を聞き、少女は息絶えた。


 それを見届けた神は、人々が死に絶えたテルミアと、用済みになった地球を消し去る。

 魂を酷使した少女が転生するまでは少々時間がかかる。そう考えた神は少女が転生するまで、どんな世界を作って遊ぶか考える。

 悲劇はまだ、終わらない。

作者の闇を吐き出しただけの作品をここまで読んでいただき、ありがとうございます。

もし何か誤字脱字や設定の疑問があれば指摘してください。できる限り対応いたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] セリフの前に無駄なスペースがあって読み辛い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ