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気づけば彼は神様だった  作者: カワチカ カナタ
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序章

歴史小説を書きたかった学生、カワチカです。

平安の都を書いたつもりですが、歴史が苦手なので色々可笑しいと思います。

温かい目で見てください。

真っ赤な月が出る夜だった。

旅人である草四(そうし)は、月を見上げて呟いた。

「赤い月が出る日に道に迷うと言うのは、

本当だったのか」

そう、草四は今まさに、山中で迷っていたのだ。

故郷を修行のために出て早二月ばかりが経ち、

そろそろ田舎に来て宿に困り始めている頃だった。磨り減った草履は足を前に出す度にかかとから離れて地面を滑る。紺の薄い羽織の隙間を冷たい風が通っていった。

「今夜は野宿でこらえるか」

喉笛をひゅうと冷気が通ると、草四は思わず身震いした。

背中に背負っていた籠をどさりと下ろした時、

不意に背後に黒い影が現れた。

「こないな所で、なんかしはるんですか」

京の方の喋り方、のように聞こえるがどこか違うような雰囲気をまとった高めの声は、草四の背中にぞくりという悪寒を走らせた。

「おや、そないな大きい籠で、旅人か、はたまた

商人か、」

少し前のめりになって尋ねる黒い影にますますぞくりとし、仰け反りながら声を搾り出す。

「そうです、旅をしております」

「そげな口調で話さんでもええやないか、

あ、そやそや、あんたいくつや」

はは、と愉快な笑いを響かせながらかなり失礼なことを尋ねてくる影に、草四は少々むっとした。

「十四です」

そういった途端、彼は目を見開いた。気がした。

「ほう十四か、思うたより若いのう。十四やった

ら…吾空とも同い歳っちゅう事になるわな」

「あこう?息子さんですか」

こちらが首を傾げると影はまた、はっはっはと軽快に笑って答えた。

「おもろい事言うなぁ、まだ我も十四じゃ」

「そ、そなたが十四だと?そんな訳あるまい、

何せその背と佇まい、十四とは思えません」

影はまだ愉快そうに笑っている。

「偉い褒めてくれるなぁ、さては我のこと、誰か

分かってへんな?」

「ま、まあ旅先で初めて会う人など……

それに私は顔が狭いものですから」

「ほう、そうか、我は一蹴派得業の位、愉笑と

申す」

少しばかり得意そうに言ってのけた彼に、今度は草四が目を見張る番だった。

「いっしゅうは、とくごう…ゆえ?」

「そうや」

しばらく止まった思考回路がやっと動き出し、草四はとっさにその場にひれ伏した。

「私どもが…大変失礼を致しました!」

「やからそないな態度取らんでもええと言ったやないか、おもろいなぁ、まあ面を上げえな」

恐る恐る顔を上げた草四には、初めてそこではっきりと影の姿が見えた。

赤い月を背に立つ、真っ黒の浴衣に低めの背、そして何より印象的な金の猫目の少年。

彼は神の血筋と称される名家の得業の位(特に優れた才を持つ子供に与えられる位)の通称楽(らく)の神、愉笑(ゆえ)様だった。


読んでくださりありがとうございます。

頑張って書くのでこれからもよろしくお願いします。

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