無関心の不死者
元々、新作連載のつもりで書こうと思ったのですが、没にしたのを、時間のある時にコツコツ書いてようやく完成したので短編として投稿しました。
「お前とはここでお別れだ」
僕達のパーティリーダーであるヴィスは僕に突然そう言ってきた。
僕達パーティは、悪童と言われた剣士ヴィスをリーダーに回復魔法の使い手である、僕の婚約者のファニー。武闘家のラプチャーとラプチャーの妹で魔法使いのシェイム。皆、僕の幼馴染達だ。
僕の名前はカルディア。魔法剣士として、このパーティに貢献してきたつもりだ。
今日だって、皆の代わりにクエストを一人でこなしてきた。それなのに?
ヴィスは僕の婚約者であるファニーを肩に抱いている。
「ま、待って!? どういうこと!?」
「あんた気持ち悪いのよ!!」
「そんな、ファニー「触らないで!! 私はヴィスの女なのよ!!」……え?」
「という事だ。このパーティでお前だけが不要なんだよ」
ヴィスは笑いながらパーティメンバーである幼馴染姉妹達の肩を抱く。
夜な夜な部屋で何かをしていたとは思っていたけど、どういう事?
「み、みんな……」
ダメだ。ヴィスにこれ以上何を言っても無駄だ。彼は昔から人の話を聞かない人だった。こうなったらもう駄目だ……。故郷に帰ろう。
「わ、分かったよ……。僕は抜けるよ」
「あぁ。その前に、今までお前に受けた迷惑を体で支払ってもらう」
「え?」
あれから何時間経っただろう?
あぁ……。
体中が痛い……。
血で、顔が気持ち悪いけど、それを拭う腕はもうない。
痛いから、治療院に行きたいけど、歩く足はもうない。
あぁ……。僕の人生はここで終わるんだ……。
『生きたいか?』
何か声が聞こえた。
『生きたいか? と聞いている』
別にどうでも良いよ……。もう疲れた。
『復讐したくないのか?』
『今なら、お前が望む形で力をくれてやろう……』
だから、どうでも良いよ。
このまま休ませてよ。
力があっても、もう生きる気力を失ったよ。
『何故だ?』
何故って、愚直に信じた結果がこれだよ? 裏切られたのも、僕が彼等に殺されるのも現実なんだろう?
これが現実だというのなら、こんな現実もうどうでも良いよ……。復讐なんて、どうでも良いよ……。
僕は、好きに生きたかっただけなんだ。
それが出来ないのなら、もう眠らせてよ……。
『ふむ。つまり、お前は生き返っても、復讐はしないのだな。ただ好きに生きたいと……』
そうだね……。
復讐しても、一時的な愉悦にしかならないでしょ? その先に待っているのはむなしさだけだろうしね。
でも、あいつらの前に出てしまえば、怒るという感情を持ってしまうかもしれない。それも嫌なんだ。
あ、そうだ!
もし、僕を生き返らせてくれるのなら、僕から感情を奪って欲しいんだ。いや、彼等の為に感情を無くすのは勿体ないよね。彼等に無関心になれればいい。そんな都合のいいこと出来ないよね?
『ほぅ。それは面白い。よし、お前が一度興味を無くしたモノには、無関心でいられるように改良してやろう』
本当に? それなら生き返りたいね……。それなら、何も気にせず生きていけそうだ。
まぁ、無理だと思うけどね……。
あ、意識が無くなって来た……。
ははは……。僕の人生もここまでか……お休み……。
≪冒険者ギルド≫
「あれ? カルディアさんはどうなさったんですか?」
「あぁ。アイツは裏切ったんだ……。突然、俺達に襲い掛かって来た。その結果、殺す事になってしまった……」
「うぅ……。きっと、婚約者だったカルディアは魔王に乗っ取られていたのよ……。うぅ……」
あれは……。
ファニーは演技が下手だなー。演技なら、せめて涙くらいだそうよ。滑稽過ぎて、笑えないよ。
そんなどうでも良いことよりも、冒険者登録の方が大事だよね。
「冒険者ギルドの登録変更したいんだけど」
受付のお姉さんは僕を見て驚く。おかしいな。血はちゃんと拭いてきたから、驚く事はないと思うんだけどなぁ。
「貴様!?」「なんであんたが生きているのよ!!」「そんな馬鹿な!!」「確かに殺したのに!!」
ヴィス達は僕を見て怒鳴る。うるさいなぁ。
まぁ、知らない顔じゃないし、挨拶くらいはしておこうかな?
「あぁ。偶然だね。まさか同じギルドに来るなんて。あ、受付さん。今日で、このパーティから離脱してソロで冒険者をするつもりなので新規受付用紙くれませんか?」
「え?? ま、待ってください。カルディアさん。魔王に乗っ取られて操られて、ヴィスさん達に殺されたんじゃないんですか?」
魔王? なんだそれ?
「殺されはしましたけど、魔王って何ですか? 彼等が言っていた? 一応聞きますけど、何故魔王に操られていたってわかるんですか? 魔王っていうのは操ってから、わざわざ名乗るアホなんですか? そもそも、こんな無名パーティの人間を操って何の価値が? ヴィスは勇者じゃなく、ただの節操のない弱い剣士でしかないんですよ?
僕が殺された理由は、ヴィスのハーレムパーティに僕が不要だっただけです。まぁ、そんなことはどうでも良いんで、早く受付用紙くれませんかね?」
僕は受付用紙を再度要求する。
だけど、受付の女性は用紙を用意してくれない。ヴィス達はまだ怒鳴っている。
「嘘だ!!」「皆、騙されちゃダメよ!!」
「騙すなんて人聞きの悪い。君達を騙して、僕に何の得があるんだい?」
僕が、呆れてため息を吐いてヴィスたちを見ていると、受付の人が僕に操られていない証拠を見せろ言ってきた。
証拠ね……。
そんなもの、どう答えろというのか。
「魔王に乗っ取られてないよー」とでも言えば信じて、もらえるわけないよね。
「それって悪魔の証明だよね。証明できないことを証明させるってこと? 仮に、貴女が僕と同じ立場で証拠を見せろと言われたら、どう見せる? 不可能だよね? あ、もしかして、冒険者ギルドも僕を騙して殺す算段でも考えているのかな?」
とはいえ、生き返ったことを考えると、殺されたとしても生き返って逃げられそうだけどね。
面倒事は嫌だし、どうやって逃げようかな?
「いえ。正直な話、彼らの話よりはカルディアさんの話の方が信用できます。カルディアさんは、いつも誠実にクエストを受けていらっしゃいますから。それとは逆に最近のヴィスさん達は、評判も悪いですし……」
「あ、そう。なら、早く手続きをして?」
受け付けさんは登録用紙を取りに席を外す。
「ま、待ちなさいよ!! 無視してんじゃないわよ」
ファニーが僕の肩を掴むが、僕は振りむきファニーのお腹を殴る。
ファニーはその場に崩れ落ちた。
「うぁあ……」
僕は掴まれた肩を拭く。
「汚い手で触らないでよ。気持ち悪い女だなぁ……」
僕はそう言って、受付さんを待つ。
「ファニー、大丈夫!? あんた、元とはいえ婚約者になんてことをするの!!」
「うるさいな。君達は僕を殺したことによって目的を達成したんだろ? ヴィスのハーレムパーティになったんだから、僕に構わなくてもいいだろ? 鬱陶しい」
「ハーレムパーティ? どういうことですか? カルディアさん」
受付用紙を持ってきた受付さんが、ヴィス達を冷たい目で見ながら僕に聞いてくる。
「さっき話した通りですよ。ヴィスが僕の元婚約者のファニーを含めたパーティの女性全てと肉体関係を持ち、唯一の男だった僕が邪魔になり殺したんですよ。自分達の立場すら忘れてね」
僕は涼しい顔で説明する。何で僕が彼等の説明をしなきゃいけないんだ?
「な!!?」「え? いや」「騙されるな!! こいつはここで殺しておかなきゃいけない!!」
ヴィスが剣を抜く。
ここは冒険者ギルドだよ? 確か冒険者同士の揉め事で殺しをしたら、重罪じゃなかったっけ?
あ、ということは、元々彼等は重罪人だ。
それとも、これをギルドは放置するのかな?
「受付さん。これが冒険者ギルドの総意?」
「え? そんなわけありません!? ヴィスさん剣を納めてください!!」
受付さんが必死にとめようとしているけど、それはいいや。
あ! そういえば、証拠があったね。
「殺されたという証拠ならあるよ?」
「え?」
「ほら、ここ。心臓を貫いた傷があるでしょ? 服が破れているし、それにこの腕も、斬り飛ばされた跡が生々しく残っているでしょ? これが両腕両足にもあるんだ。くっつけるのに大分苦労したんだよ? 最初は痛くて動けなかったしね」
「待ってください。そういえば、さっきから生き返っただの殺されただの言っていましたよね? カルディアさんはゾンビなんですか?」
ゾンビ? その譬えは正しくないかな?
「違うよ。ちゃんと心臓も動いてるし、触ってみる?」
受付さんが僕の左胸を触ろうとすると、ヴィスが僕に斬りかかってくる。
この程度の遅さ僕なら避けられるけど、死なないんなら避ける必要は無いかな? 避けたら受付さんが斬られるし。
「死ね!!」
「痛い!!」
斬られると痛いよね。
どうせ不死者になるんなら、痛覚も消しといてほしいよ。
「お前が生きていると困るんだよ!! 死ね死ね死ね死ね!!」
ヴィス達パーティは、寄ってたかって僕を痛め付けて殺す。
「あ……あ……」
「……」
あ、また意識が……。
「キャーー!! 貴方達、なんて事を!?」
「今の悲鳴は何だ!! な!? これは、どういう事だ!!」
「こ、こいつは魔物だ!! ゾンビだ!!」
「なに? これはお前らの仲間じゃないのか? 少し、見せてもらうぞ」
意識が戻った。僕を触ろうとするおじさん。これはギルドマスターかな?
僕は立ち上がる。
「あー。痛かった」
今回の復活は早かったね。斬られたところがムズムズするよ。痒いというか、気持ち悪いんだよね。
「な!? お前。生きているのか!?」
「え? 死んだよ?。生き返っただけ」
「お前、不死者になったのか!?」
不死者。一応死ぬから不死者という訳ではないんだけど、面倒だしそれでいいか……。
「そうみたい。あぁ。不死者は人間じゃないから魔物として討伐する?」
確か、僕の記憶が確かなら、英雄王とかいうのも不死者じゃなかったっけ?
「ふむ。自我をしっかり持っているようだな。敵対しなければ問題はない」
「ギルマス!!」
自我を持っていると不死者でもいいのか。緩いギルマスだなぁ。
ヴィスが驚いた顔をしているね。何をそんなに驚いているんだか。
そうだ、手続きの続きをしなきゃ。
「じゃあ、えっと、冒険者登録の続きをお願い」
「ちょ、ちょっと待て!! ギルマス!! こいつは魔物だ!!」
えっと……。これでいいかな?
「えっと、これでいい?」
「あ、はい。あ、ここ間違ってますよ」
あー。やっぱり間違ってたか。僕はこういう書類が苦手なんだよね。
「ごめんね。すぐに直すよ」
「無視するんじゃねぇ!!」
本当にうるさいなぁ。正直、もう関わりたくないのに。
「なに?」
「お前は俺達が殺したはずだ!!」
なに? 殺したことを自慢したいの? 好きにしなよ。
「そうだね。だからそれでいいって言ってんじゃん。好きなだけ自慢するといいよ」
「ふざけんな!! お前は俺のパーティに邪魔だから死ななきゃダメなんだよ!!」
「それで殺したじゃん。別にハーレムパーティでも何でも、勝手にやってればいいじゃん。君のモノになった婚約者には興味もないし、幼馴染とはいえ僕を殺した君達にも興味が無い。町中ですれ違っても他人としてすれ違えばいいだけの話じゃないか」
僕は溜め息を吐く。
「待ちなさいよ! 興味が無いってどういうことよ!!」
「え? 君、僕のことを気持ち悪いって言ってたじゃないか。同じだよ。一人の雄に群がる雌に興味がないだけだよ? もしかして嫉妬してもらえるとか思ってた? やめてよ気持ち悪い」
どうして、そんなに自意識過剰なのかな?
「「「「な!!?」」」」
「君達は動物のように雄に群がって盛っていればいいんだよ? 無関係な僕には関係ない事だ」
「これ以上ヴィスさんへの暴言は許さないわ。仮令カルディア君でもね!!」
「うるさいなぁ。別に君に許してもらう必要もないよ。話かけてこないでよ、汚らわしい。分かっているの? 君達が絡んできているんだよ?」
「貴方と違ってヴィスさんには魅力があるのよ」
「あ、そう。良かったね。あ、書き直しましたよ?」
「あ、ありがとうございます」
受付さんが書類を見直す。これで大丈夫だと思うけどどうかな?
「これでカルディアさんは単独冒険者になりました。ただ、ランクは最下位のFランクからですので……」
「うん。それは分かっているよ。今日からクエストを始めるね」
「はい」
僕は掲示板を見に行こうとするけど、ヴィス達が邪魔をする。
「あ、邪魔なんで、どいてくれる? 掲示板を見に行きたいから」
「待て!! 話は終わってない!!」
話は終わっていない? 終わったよ。しつこいなぁ。
「はぁ。何を話したいの? しつこいよ?」
ファニーが前に出る。
今更、何の話をするんだか……。
「私は貴方の婚約者な「君がそれを放棄したよね? 今さら婚約者面しないでよ。顔を見るだけで吐き気がするから消えてくれない?」……ど、どうして?」
ファニーは目に涙を浮かべている。なんで?
「頭おかしいの? 婚約者がいるのに別の男に抱かれる女は気持ち悪いって言ってるだけだよ? 別に君が僕の元婚約者でもなければ気にもしないけどさぁ。もしかして、自分は美人だから何をしても許されると思ったの? 目の前を見なよ。受付さんの方が数倍美人だよ?」
僕の言葉に受付さんは顔を真っ赤にさせている。
しかし、何を今さら言ってるんだろうね。自分がかなり立場を悪くするという選択肢を、自分から選んだという事実に気付いてないのかな?
今度は幼馴染み姉妹が前に出てきた。
「私達、幼馴染じゃない「その幼馴染を殺したのは君達だろ? しかも笑顔でね。ついさっきの事なのにもう忘れたの? 脳みそ入っている? あぁ。毎日盛っていから、脳みそがとろけちゃったかな?」……ひ、酷いわ」
姉であるラプチャーが泣き崩れる。その姉の肩を抱く妹のシェイム。僕を睨んでいる。
しかし、僕には気になることがあった。
「ねぇ。幼馴染を笑顔で嬲り殺すことより酷いことってなに?」
「そ、それは……」
僕は、ラプチャーに聞くが、答えない。答えられないよね? 馬鹿だから。
「姉さんを馬鹿にしないで!」
「いや、君もラプチャーと同じだろ? なら代わりに君が答えてくれるかな? 幼馴染を殺すより酷いことって何? 答えてよ。答えられないのなら、君も脳が腐っているということだよ?」
「ひ、酷すぎる……」
「だから、殺すより酷いことって何?」
僕の言葉で姉妹が泣き崩れる。
そんなことして同情してもらえると思うの? 馬鹿じゃないの?
そんな下らないことで僕の時間を費やしたくないんだけど?
「そもそもさぁ、僕は君達に興味を無くしたんだよ? あそこ見てごらん? 小石が落ちてるでしょ? 君達はあれと同じなの。いや、ごめん。あの小石は投げれば武器になり得るから、あれ以下だったね。ごめんね小石さん」
僕は小石を拾い上げる。
その行動に三人は目を見開いて驚く。
「「「え?」」」
「今さらなんでそんな反応してるの? あ! もしかして君達を奪われたから、復讐するとでも思ったのかい? ないない。今の君達にそんな価値は無いよ?」
僕はファニーの顔を見る。
そして溜め息を吐く。
「ファニー。君にだけはもう一度話さなきゃいけないと思っていたんだ。君の行いの結果、君の家はもう終わりだよ? 婚約者としての立場の意味すら理解してなかったとは、馬鹿としか言いようがないね」
「え? どういうこと?」
本当に理解してなかったんだね。
はぁ、一時的にでも、こんなに頭がない馬鹿が婚約者だったことを恥じるよ。
「君は、僕との婚約の意味を理解していなかったのかい? 君の父親が、幼馴染である僕に頼みこんだことで、君は僕の婚約者としての地位を手に入れただけなんだよ? そうでなきゃ、君の家は没落していたからね。まぁ、もう没落するんだけどね。僕を殺したという実績があるからね」
「そ、それは……家族は関係「無いわけ無いだろ? 君は馬鹿か? 自分の立場もわからないくらい馬鹿なのかな?」そ、そこまで言わなくても」
「そこまで言わすことをしたんだろう? 馬鹿でも分かるように話してあげているんだよ? そう言えば、ここにいるみんなも同じだったね。君達も僕の幼馴染だし、もう、故郷に帰れると思わない方がいいね? 領主の息子である僕を殺したんだからね」
僕はヴィスを見る。
「町の人の評判が悪かった君が大胆な事をしたなぁ……。少なくとも、僕達の故郷の町では君の言うことなんか誰も信じないっていうのに、どう言い訳するつもりだったんだい? そもそも、僕達のパーティが贅沢を出来ていたのは、僕の家の資金提供があったからということすら忘れていたのかい?」
「ま、待て!! それとこれとは話が別「なわけがないじゃないか。脳みそまで股間に置いているのかい? 僕がいないだけじゃなく、僕を殺した君達パーティに殺すための刺客を送るならまだしも、何故お金を渡す必要があるんだい? そもそもだよ。僕には監視がついていると話したことがあったよね?」
「な!!?」
「ヴィス。君も僕の立場を知っていたはずだよ? そうでもなきゃ、町の厄介者の君なんかが、僕のパーティに入れるわけないじゃないか。今回のことは、僕の家族は勿論、下手をすれば国にまで報告されるんだよ?」
当たり前だよね。僕の家は僕がいたから出資してたんだよ? 他の貴族もそうかもしれないね。
「よかったね。君達が僕を殺したことにより、君達の家は破滅して家族全員路頭に迷う……いや、一族郎党皆殺しかもね。僕の兄がどんな性格か忘れたかい? それに、君達も破格のお金で調達していた武具ももう調達できないから、武具の性能に頼った戦いはもうできない」
僕の兄は、王国の英雄と呼ばれた人で、僕を可愛がってくれていた。今回も、素行の悪いヴィスが同じパーティにいるのを最後まで反対していたのは兄だけだ。
僕はそう言って、溜め息を吐く。
しかし、ヴィスは馬鹿にしたような笑いかたで僕を睨む。
「ふん。俺達には実績と冒険者として稼いできた金がある。お前なんかよりもギルドに重要視されている」
は? 何を言ってるの?
「何を言い出すのかと思えば……馬鹿なの?」
「あ?」
「君達には1リアも蓄えはないよ? それに実績って君達、最近クエストを受けていないじゃないか」
「な!!?」
ヴィスは心底驚いているようだけど、やはり頭の中身も股間に移っているみたいだね。少し考えればわかると思うんだけど?
「だって、当たり前じゃないか。あれだけの贅沢を毎日しててお金が余るとでも思ってたのかい? お金の価値を知っているのかい? 最近の贅沢の資金は、僕の貯金を切り崩していただけだよ? それにギルド規定では、最低月に一度は登録された本人がクエストを受けなきゃいけないのに、君達は受けなかったよね? 僕は君達に言っていたよね? ランクが下がるよって。ちなみに僕だけはしっかり受けていたよ? 君達のランクは下がり続けた結果、今の僕と同じFランクのはずだよ?」
僕が丁寧に教えてあげると、ギルドマスターが僕の肩を叩く。
「おい。カルディア。詳しく話してくれないか?」
僕は、最近の近況を説明してあげる。そして、僕の家のことも……。
それを聞いたギルドマスターは、深くため息を吐く。
「はぁ。お前等、自分達の立場を理解していたのか? 特にファニー……お前はカルディアの何に不満があったんだ?」
僕の家の状況を聞いて、受付の人も何度も頷いている。
「そもそも、ヴィスの様な威張り散らすだけで実力も何もないカスに魅了されるのも意味が分からん。お前等はそういった行為にしか興味が無いのか?」
「「「え?」」」
ギルドマスターの言葉に三人の顔が若干青褪める。
「ここに、お前達のパーティの功績を表にしたものある。見てみろ」
表には、僕達の活動記録と、各個人の功績が載っている。
僕の功績だけが圧倒的に大きいね。
まぁ、当たり前だけど。
「「「「な!!?」」」」
「え? 君達知らなかったのかい?」
嘘でしょ?
毎日盛るだけで? 功績が伸びるわけが無いじゃないか。そもそも、君達が最後にクエストを受けたのはいつだい?
「お前は気付いていたのか?」
「いや、気付くもなにも、最初っから僕一人でクエストをすることが多かったですからね。最近だとドラゴン討伐を一人でしたくらいですか」
僕がそう答えると、ギルドマスターの顔が驚きに変わる。
「お前、そんなに強かったのか?」
「強い? 普通でしょ? だって、勇者の称号を持っていたんですよ? 今は不死者になってしまっているので、勇者の称号はなくなっているでしょうけど」
僕の言葉にファニーが顔を青褪めさせ叫ぶ。
「貴方、勇者なのを隠していたの!!?」
「隠していないよ? だって、君の父親が僕を欲しがったのは僕が勇者だったからなんだよ? 勇者の配偶者の家というだけでも箔がつくしね。君も知っていただろ?」
「え? あ!!」
「監視されていたのも、僕が勇者だからだよ? お金の出資もね? 何言ってるの?」
あぁ、忘れていたんだね。
流石は盛った雌だね。おめでたい頭をしているよ。
「まぁ、もう遅いけどね。僕が勇者であろうがなかろうが、君には関係ないからね」
僕はファニーを無視する。婚約者は床に手を付き、泣いている。
「そうか……。お前達は勇者を殺そうとしたってことだよな?」
ギルドマスターの表情がキツくなる。でも、間違いは正さないと。
「違いますよ。殺したんです」
「そうか、そうだったな」
「ま、待ってください!! 私達は知らなか「知らなかったとしても、仲間殺しをしたのは事実だ。しかもこの冒険者ギルド内でな。それだけでもお前達には死罪が適用される」
僕には関係ないので、クエストが貼ってある掲示板を見て、クエストを吟味する。
「そ、そんな!! たすけてカルディア!!」
ファニーが僕の腕を掴んだので、思いっきり振りほどく。
「触らないでくれるかな? 気持ち悪い。君達がどうなろうと、僕の知ったことじゃないよ」
「私達は幼馴染でしょ!?」
僕はおかしくて吹き出してしまう。
「面白い事を言うね。確かにそうだったね。でも、君達がそれを放棄したんだよ? 一時の快楽に堕ちてね。でも、良かったね。身体を捧げた雄と一緒に死ねて。もしかしたら僕みたいに不死者になれるかもしれないよ?」
『なれるわけないがな』
ん? この声は、僕が死んだときに話かけてきた声?
「ま、魔族!!?」
へぇ、彼女は魔族なんだ。また、珍しい人に助けてもらったものだね。
『我を魔族と一緒にするとは失礼な奴らだな。我は邪神だ』
ふーん。
邪神なんだ。凄いね。
神様と言われるだけあって、凄い美貌だとは思うけどそんな事よりクエストを見に行こうかな。
『おい。無視するな』
どうやら、僕と話したいみたいだね。
「何?」
『お前。復讐しないと言っていたが、しっかり復讐してるではないか』
僕が復讐? 馬鹿言わないでよ。
「僕は何もしてないよ? 彼等が勝手に騒いでるだけで、僕は真実を話しているだけだよ? ねぇギルドマスター」
「あぁ。そうだな……。しかし、邪神か……」
『そうだが、別に人間をどうかしようとなんて思っちゃいないぞ?』
邪神なのに、何もしないんだね。
『お前の感情を喰ったことで、暫くは腹が減らん』
僕の感情を食べたんだ。でも、僕の感情は残ってるけどなぁ。
「あ、そう。まぁいいや。僕はクエストに向かうね」
『はぁ……。無関心というのは恐ろしいものだな』
「あぁ。あそこまで興味を無くすものか」
僕は泣き叫ぶ元婚約者や元幼馴染達を無視して、クエストに励むことにした。
その後、ヴィス達パーティは、勇者を殺した(生き返って不死者になっているけど)罪で捕らえられたうえで、拷問され処刑された。ヴィス達の家族も一族郎党、全員死罪となった。その中には幼い子供もいた……。
流石に子供も処刑になるのは心が痛むと思ったが、そうでもなかったみたいだ。僕にとって興味のない人間だったのだろう。
僕はというと、ファニーよりも遥かに綺麗な聖女と、頼れる仲間達と共に、冒険者を続け魔王を倒した。
どうやら、不死者でも勇者はできるみたいだ。
その後、恋仲となった聖女と結婚して、二人の子供もでき幸せになった。仲間達も祝福してくれた。
どうやら、僕が無関心になったのは、彼等だけだったようだ。今となっては、復讐したのかどうかも分からないが、魔王を倒した後に、邪神に不死者の呪いを解いて貰った。
邪神は最後に『久しぶりに腹いっぱいになったから、数万年は寝れるわ』といって、消えていった。
少しでも面白いや続きが気になるという方がいれば幸いです。
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他にも連載していますのでよろしくお願いします。
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