3話 道場にて
今回は湊夜視点です。
「なるほど…俄には信じられぬがお前さんはこことは違う世界…異世界から来たということだな?」
「はい、その通りです。」
この話をしているのは、この道場…クローズ流の師匠であるメイル・クローズである。そして先程からその会話を聞いているのがメイルの孫娘であるメイス・クローズだ。まだ雑用係と聞いたが、十分な戦力ではあるらしい。
「ふむ…前例がないからやはり判断し難いが、この見た事の無いコインに書いてある文字らしきものを見るとの…信じざるを得ないかな…」
そう、このことを信じてもらうために、自分の持っていた500円玉を見せたのだ。
「まあ、異世界があることは信じるがの…これからお前さんはどうするんだ?」
「これからですか…」
湊夜はまだ、その事について何も考えていなかった。
(確かにどうしよう…このまま外に出ても魔物とやらに殺されてしまう…あの時の殺気を思い出しただけでどこにも行けなくなるなぁ…)
若干ニート願望が生まれた湊夜。そこに鶴の一声が。
「おばさまが面倒を見てあげれば?」
そう言ってくれたのは先程から会話を聞いていたメイスだ。
「確かにいいかもしれんね…。よし、うちで見てやろう!暫くはメイスから色々学べ。基礎トレーニング等もやるが、逃げるなよ?飯は3食保証してやるし部屋も用意しよう!明日から頑張りな!」
「あ、ありがとうございます!し、師匠!」
「また1人弟子が増えちまったな…悪い気はしねえが。じゃあメイス、道場内を案内しな。」
「はい。分かりましたおばさま。」
そう言われて、道場内を案内された。トイレの場所はココとか、部屋は何処だ等。その途中いろんな話をしていた。
「へえ、メイスさんは道場内では雑用なのにそんなに強いの?」
「この道場の人たちはみんな強すぎますからね…それと、さんは付けなくてもいいですよ?」
「そうかな?じゃあメイス、これから宜しくね。俺も、湊夜で良いからね。」
「はい、ソウヤ。こちらこそよろしくお願いしますね。」
(とても優しくて、温かみのいる人だなあ…綺麗な人だし…)
メイスとは同い年なので、会話が弾んでいた。もっと仲良くなりたいなと思いながら、案内されていた。
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「まあ、みんな聞いてくれ。今日からうちらの仲間の弓長湊夜だ。仲良くしてやってくれ。何でも故郷が遠いらしい。可愛がってやれな。以上だ。飯を食おうか。いただきます!」
『いただきます!』
師匠の号令でご飯を食べる。ご飯を作っているのはメイスらしい。とても美味い。知らない肉だし知らない野菜が多いが、味付けは湊夜好みだった。するとメイスが横にやってきた。
「どうですか…?お口にあいましたか…?」
「うん。すっごく美味しいよ!」
そう言うと、少し頬を赤く染めて、嬉しそうにしていた。
「メイスは、毎日ご飯を作ってるの?」
「はい、朝と昼はおばさまが、夕食は私が作ってます。」
「なら、毎日の夕食が楽しみになるな」
「えと、お、お世辞でも嬉しいです…」
(小声で言ったつもりだが聞こえてしまったらしい。ちょっと恥ずかしい…。)
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今は夜の8時くらい。何しようかなーと考えながら部屋にいると。コンコンッとノック音が聞こえた。
「はい?誰でしょうか」
「メイスです。おばさまが、ソウヤに勉強を教えてやれと言われて来ました。入ってもいいですか?」
「あ、うん。今開ける。」
「お邪魔します…」
内心、すごく喜んでいた。もう夜なのに女の子1人を男の部屋にいれるなんて…この世界の人大丈夫なのか!?でも、神様ありがとう!!などと考えていた。
「どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもない…」
「あ、内容はですね。ソウヤもこの道場で一人前になれたら、冒険をしながら人間界に行くと思います。でも冒険中は危険があります。計算ができないといけないし、地図もある程度分からないといけません。なので勉強です。」
「俺、計算くらいならできるよ?」
「ほんとに?凄いですね!独学ですか?」
「いや、学校で勉強したんだよ。」
「あ、ソウヤは異世界から来たんですもんね。学校が普及してて良いですね。」
「こっちでは、普及してないんだね。」
「はい、貴族が行くものとされています。」
(なるほど、この世界は少し馬鹿が多いのかもしれないのか…めんどそう。)
「そういえば、文字は読んだり書けたり出来るんですか?」
「ううんと…まず文字読んだこと、この世界では無いや…」
「じゃあ、書いてみるので読んでください。」
そう言って、色々書いてあった。なになに…
私の名前はメイスです。好きなことは料理を作ることです。歳は15です。
「うん、読めるみたいだ。」
「では、次に何か書いてみてください」
(え…何書けばいいんだ…書き方わからないし…日本語で書いてみるか…)
私の名前は弓長湊夜。好きなことは本を読むこと。歳は15です。
「あら、書けるみたいですね…では、地理についてからやりましょうか。」
(そう言って、10時くらいまで勉強していた。うん、美少女から教わると覚えが早い気がする。)
「す、すごいね…たったの2時間なのに…すぐ覚えちゃったよ。」
「褒めてくれてありがとう、メイス。」
2時間ほど一緒にいたおかげか、メイスが敬語をやめてくれた。
「じゃあ、明日からクローズ流の特訓だね。結構キツイからお互い頑張ろうね!」
「うん、ついていけるか分からないけど…俺も頑張るよ!」
そうして、メイスは部屋から出て、湊夜はもう寝ることにした。
メイスは結構可愛いですよ。こんな嫁さんいたらいいですねえ。次話は今日出せたらな、と思っています。誤字脱字等の報告はありがたいのでお願いします。