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二十章 遠い再会




「これは……!」


 四階中央部。階段を上がった先には吹き抜け空間が広がっていた。壁際には三人が並んで歩ける幅の通路が上まで続いている。そして目の前の広大な闇の向こう、巨大時計の構造が視認出来た。

「無駄な費用の使い方ね。たかが時を知るためだけの物に」

「まさか。一応、最上階は大学の研究の実験場として使われていた筈だ。まあ、結局維持費が馬鹿にならなくてリストラされた訳だが」

「まだまーくんには追い付かないな。ここ何階建てだ?」

「十階。廃業の前に何度か視察へ来たからね、見取り図は大体頭に入っているよ」

「流石聖王代理。で、近道は?」

 弟は暗闇を見上げ、見て分かる通り、この時計の部品を昇っていけばいい。相当運動神経が良くないと無理だけど、とアドバイスした。

 燐と訓練を積んだ俺と、瞬間移動の使える夢使いなら可能だろうが、他の三人を置いてけぼりにする訳にもいかない。普通に長そうな通路を歩くか、と思った次の瞬間。


「嫌!来ないで下さい!!」


 頭上からの悲鳴にバッ!全員が顔をそちらへ向ける。


「まーくん!?そこにいるの!!?」

「お姉さん待て!危険だ!!」


 義息の制止を振り切り、母は敢然と歯車の一つに飛び移る。止むを得ない。

「ケルフ、俺が行く。リーズ、まーくんの位置まで先に飛んで保護出来るか?」

「駄目。シェリーが干渉しているせいか、半径十数メートルへの転移は不可能よ」歯噛みしつつ杖を振るう。「不本意ながら、あなた達の後を追わせてもらうわ」

「なら僕達は正規ルートから行かせてもらうよ」

「ああ、頼む」

 そう言った次の息でジャンプ。翻った白いドレスの後を追う。

「きゃっ!!」

「だから言わんこっちゃない!!」

 高速移動で彼女の傍らまで走り、ジャンプに失敗して落ちかけた身体を抱え上げた。

「ウィルネスト!」

「そっちの梯子から上へ行けそうだな。二人共、付いて来い」

 手を離し、先陣を切って別の歯車へ飛ぶ。俺が伸ばした手目掛け、メノウも勇気を出して踏み切った。キャッチ!腕ごと彼女を引っ張り上げる。


 ガチャガチャガチャッ!!「きゃあっ!!」――――パタッ。


 俺の頬に落ちた生温かい液体を見、メノウが絶叫した。剣を抜き、首を真上を向ける。


「まーくん、そこで伏せてろ!!天破 蒼雲!!!」


 放たれた突風が上昇気流を起こし、誠が乗った橋を激しく揺らす音がする。鳴り止むか止まぬかの内に、災禍の彼から返事が戻って来た。


「ウィル!?それにかあさまも下にいるの!!?」

「ああ!早くそこを離れて何処かに隠れているんだ!!すぐ迎えに行く!」

「駄目!頂上の鐘にアイザと美希さんが!早く助けないと死んじゃう!!」


 そうか。だから敢えて逃げ場の無い上へ向かっていたのか。たった一人、怪我の痛みを堪えてまで。


「あれ、もう来たのねマミィ」


 不気味な少女の声が闇に響く。「シェリー!!」憎々しげにリーズが叫ぶ。


「丁度良いわ。マミィ達にとっておきのプレゼントをあげる」


 途端、周囲の雰囲気が変わった。何も無い空間から飛び出してきたのは―――アイゼンハーク家の男達(但し末弟ベリドを除く)の亡霊だ!

「炎よ!焼き尽くして!」

 夢の加護を受けた炎の鳥達が、襲い掛かる奴等を次々浄化していく。

「何してるのウィルネスト!早く上がって!」

「ああ!」

 梯子を駆け上がり、復活した霊達を剣で真っ二つにしながら更に上へ続く道を探す。とそこへ、俄かには信じられない男の声が聞こえてきた。


「おや、助けを待たず逃げるのか。賢明な判断だな、小晶」


 第七対策委員はクックッと笑い、ガチャガチャ橋を鳴らしながら移動を開始した。完全に人形に操られ、献身的な追跡者と化している。だがそれとこれとは別問題。言うべき事はきっちり言わせてもらう。


「おい!待ちやがれ、この給金泥棒!!」




 血が下がり過ぎて、目の前が霞んできた。頭痛い……。

「詩野さん……しっかりしなよ……」

 アルカツォネ・ハーフの自分はともかく、人間の詩野さんにまでこんな酷い真似をするなんて赦せない……。

「ぅ……え……」

 首まで真っ赤になりながら、今にも吐きそうなのを耐える彼女は余りに可哀相で。

(誠、頼むから大人しくあそこで隠れててよね……!)

 優し過ぎるあの子なら、身の危険も顧みずアタシ達を捜しに来てしまう事だって充分有り得る。


「お姉さん達、まだ生きてる?」


 知人の身体を借りた諸悪の根源は、そう言ってニヤニヤと近付いて来た。

「当たり前でしょ……!あんたに仕返しするまで死ねるかっての!!」

「随分強気ね。でもこっちのお姉さんはそろそろ危ないみたいだよ?」

 奴は何故か詩野さんの腹から胸を撫でる。

「セクハラ!」

「違うもん。―――あなたもマミィなのね、お姉さん。でも残念。どうせ二人共ここで死んじゃうもの」

「!!?」

 こいつ、知ってて何て真似を!!

 アタシは必死になって意識朦朧の秘書、そして彼女に息衝く小さな命に呼び掛けた。


「詩野さん、気をしっかり持って!!死ぬんじゃないよ!!!」





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