野蛮飯を作って腹を壊して食のありがたみを知った
この話を聞いて模倣しないでください。大変危険です。
苦しい目にあいます。生存の保証もありません。生存したとしても長期的に後遺症が残る可能性があります。
久々にスーパーに行く。
いつも食品を買いに行くときには「炭水化物」「タンパク質」「食物繊維」を買いに行くイメージで買っていた。
いつもタンパク質枠にカット済冷凍豚肉があった。
しかし、今日はそのカット済冷凍豚肉が売られていない。販売が終了したらしい。企業努力はついに限界を迎えたのかもしれない。
もしもカット済冷凍豚肉を買えたら 100円/80g くらいのつもりでいた。
カット済かつ冷凍済の条件を満たす他の妥協肉が無かったので、単純に一番安い肉を買うことにした。
一番安い肉はカットされていない鶏肉だった。
さて、なぜいつもカット済冷凍豚肉を買っていたのかと言うと、買ったものをそのまま冷凍庫に保存すれば良く、作業工程を減らせるためである。
既に切り分け&冷凍されている肉をそのまま冷凍庫に保存すれば食べたい時に食べたい量を使うことができる。
そもそも、肉を保存するためには切り分けと冷凍が必要になる。
冷凍しないと肉はすぐに腐る。
切り分けせずに冷凍すると、使うときには丸ごと解凍して必要部位を切り取るという膨大な手間がかかる。
故に、買ってきた肉は速やかに切り分けて冷凍する必要がある。
更に、切り分けた肉を冷凍する際に肉と肉を隣接させると表面の水分のせいで肉同士が張り付いてしまう。
この問題を解決するために人々は肉をラップに包んだりジッパーの付いた袋にいれるのだ。
カット済冷凍豚肉を好んで買っていたのはこれらの作業を全て省略できるためである。
カット済冷凍肉に依存しきっていたため、いざ手に入らなくなった時には肉を自分で切り分けていた頃の感覚が失われていた。
買い物を終えて帰宅した。
買ってきた鶏肉の塊を切り分けて冷凍せねばならない。それだけは分かっていた。
切り分けるためにはまな板と包丁を使う必要がある。
取り出すと酷い有様だった。
カット済食品・パック分け済食品に依存しきっていたため、まな板と包丁は錆びついていた。
よく分からない汚れが表面についたまな板と包丁を洗った。
そして鶏肉を適当に小さめのサイズに切っていった。
そのまま冷凍庫に放り込むと肉同士が結合するのが予想できた。
ラップで包もうかと思ったが、そうすると肉の間にラップが食い込んでしまうことを思い出した。
ここで、先に煮込んでしまえば表面同士が結合することもそんなにないだろうと思った。
故に鶏肉を煮込んだ。表面のタンパク質が変質して縮こまったことを確認して満足し、そのまま煮込んだ鶏肉を湯切りして冷凍庫に放り込んだ。
この時点で様々な問題が発生している。
表面を見て満足しているため、中まで火が通っていない。
煮込んだ鶏肉を湯切りしているため鶏肉の旨味成分と栄養が流出している。
そもそも、この鶏肉は、衛生状態が不明なまな板の上に乗せて、衛生状態が不明な包丁で切断した鶏肉である。
翌朝、冷凍庫に放り込んだ鶏肉を100g取り出して調理しようとした。表面の水と油脂により肉同士が結合していたが、力を込めれば分離できる程度だった。力を込めても分離できない塊は湯で適当に表面を解凍して分離した。鶏肉を見ると概ね表面に火が通っているが部分的に生の表面が見えた。
前日に行った杜撰な下処理を思い出した。中まで火が通っているとは到底言えないため、まず煮込んでから炒め物にしようと思った。肉を煮込んだため、再び旨味成分と栄養素が流出した。
今思い返すと、やっていることはクソを作っているのと同じだ。旨味と栄養を流出させ続けるなど、ただ腸内細菌による腐敗工程が行われていないだけのクソ作りだ。
煮込んだ後で炒めて表面に醤油味をつけた。食べると表面には醤油味がついているものの、味付けのない肉という素材本来の味が噛めば噛むほど口内を支配していった。
一口食べただけで胃が次の一口を拒否した。試しに口に入れてみたら飲み込めなかった。
飯が不味すぎて吐くという話がフィクションではなく現実的に起こり得ることを知った。
この瞬間、料理の偉大さを理解した。
複雑な調理工程は幸福な食を謳歌するために必要であると同時に、最低限の食える食事を用意するためにも必要なのだ。
あまりのストレスにしばらく呆けていた。
呆けている間に料理の偉大さを更に理解した。美味い食事は労働生産性を上げる。
食事でストレスを受けていては、労働にストレス資源を回すことができない。
食事で幸福を感じていれば、労働に回せるストレス資源が増える。
創作物の貧民が美味い食事にありつけた時に涙を流して喜んでいるのは現実的に起こり得ると知った
30分後に寒気と腹痛に見舞われた。
この瞬間、衛生の偉大さを理解した。
体内に侵入した異物の量が少なかったため、出るものが出た後は腹痛と寒気は治まった。
人体はよくできている。普段は24時間かけて消化しているにも関わらず、異物が侵入すると直ちに受け入れを拒否し、徹底的に締め出そうとする。
上から排出することで解決するのであれば速やかに上から排出し、上からの排出が叶わなければ、すべての消化工程を破棄し、腸管内の物を全て体外に排出すべき異物とみなして処理しようとする。
事が終われば体内が有事から平時に戻り、何事もなかったかのように生命活動が粛々と行われる。
昼飯にはいつもコンビニで買っている鶏肉を食べた。
とてつもなく美味かった。
この話は昨日一昨日の出来事であり実話です。
食を取り巻く衛生環境や人々が営む美食への探求に感謝して日々を生きましょう。
安全なものを食べられるのは当然のことではなく、人々の努力の上に成り立っています。
美味しいものを食べられるのは当然のことではなく、人々の努力の上に成り立っています。




