追想の八夜目4
ただ、当時は周りの誰一人教えてくれなかったけれど、母の霊力を最も受け継いでいたのは、私だったらしい。
私は余りものので、芸事の才のないみそっかす。
そんな風に私は思っていた。
私に霊力のことを教えなかったのは、母だ。
ミリアはのびのびと育っていたから、そのまま育ってほしかった、と先日教えてくれたのだ。
三年前の行軍で私は野ネズミを治癒させて、解放したらしい。当時はなぜか野ネズミが勝手に治癒していたと理解していたけれど。
「助かった。一度死んだ上に、死にかけている野ネズミに乗り移ってしまったようだ。器の中で死に絶えるかと思った」
肩をすくめるキリムド様。その仕草はウィリエール様のお姿でありながらも、まるで似通っていない。
「あの後は、どのようにして王宮にお戻りになったのですか?」
「研究熱心なラルズスが検体としてフィールドワークで捕まえてくれた。その後は、ベアラルの温室に忍び込み、取り憑きながら暮らしていたのさ。ルートランもキーリムも、ひどいことをする。あんなに優秀な弟達を使い魔の生贄として失ってしまった」
「キリムド様が操っていらっしゃったのでしょう?ランドルフ様も、そして、他の王子様達も」
キリムド様は頷かない。
「ミリアを巫女にしておくのはもったいない。王妃になればいいさ。そのために必要なものは、ミリアの中に揃っていると思うよ」
必要なもの。
それは、ウィリエール様の魔力、ヴィルヘルム様の守護者の息吹、そして、キリムド様の采配者の力。
このお部屋で事に及んだのは、ランドルフ様だったのか、それとも、キリムド様だったのか――――
「父上は私に即位して欲しいようだ。ならば、ミリア王妃になってくれ」
ウィリエール様のお姿で、まったく違った言葉をお話になる。
「キリムド様、それは求婚のお言葉ですか?」
「それ以外の何があるんだい?」
「分かりました」
「それは、了承ととらえていいのかな?」
その問いに私がお答えすれば、キリムド様は頷いた。
目を見つめていたら、口づけがやって来る。




