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少女と孤児

「おいティコ。もう暗くなるから、今日は泊まっていけ」

と村長は言った。


「親方の許可がないと」

と俺は答えた。


「それなら大丈夫だ。時間がかかるようだったら、泊めてやってくれと言われている」

と村長は言った。


「わかりました。ではお言葉に甘えます」

と俺は答えた。


村長と村人たちは、ゴミや道具をかたづけ、それぞれの家に戻っていった。

俺は村長の家で食事をもらう。

堅いパンとカブの入った薄味のスープだった。


「まだ時間はある。暇だったら村の中を見て回るといい。まぁ何もないがな」

と村長は笑った。


俺は村長の言う通り、村の中を見て回ることにする。

たしかに、これと言った特徴のない村だった。

まださっきの少女は俺の事を見ていた。


「なにか俺に用?」

と俺は尋ねた。


「あんた、孤児でしょ。

私前にあんたの事見たことがある。

なんで働けてるの?ズルい事したの?」

と少女は言った。


俺は困った。

どう答えようか。


「まぁ、ズルかもしれんな。

でも器用やと、腕を認めてもらって、拾ってもらったんや」

と俺は答えた。


「あんた器用なの?」

と少女は尋ねた。


「器用かどうかはわからへん。でも親方は器用やと言ってくれた」

と俺は答えた。


「こっちに来て」

と少女は言った。


俺は少女の物言いに多少違和感を感じたが、

ついて行くことにした。

5分ほど歩き、村の外れのボロ屋の前に来た。


「ここよ。入って」

と少女は言った。


俺は近くにあった小石を拾い、

少し警戒しつつ中に入った。


そこには、子供ばかり10人ほどがいた。

服装とニオイから、俺はすぐに事情を察した。


「お前らは孤児なんか?」

と俺は尋ねた。


「そうよ、悪い?」

と少女は尋ねた。


「いや別に。それでなんや?」

と俺は言った。


「この家寒いの。修理できる」

と少女は尋ねた。


俺は辺りを見渡す。

藁は敷いてあるので、地面からの冷気はマシやった。

ただ隙間風が冷たい。

この村の外れというのもあるのだろう。

森からの冷気がきつかった。


「完全じゃないけど、修理はできる」

と俺は答えた。


「お金はないわ。

でも木の実ならあげる。あとここにあるガラクタなら、あげるわ。

修理して欲しい」

と少女は言った。


俺は考えた。

金ももらわずに、

親方に内緒で修理する事が、

許されるのだろうか。


俺は木の実とガラクタを見せてもらう。

壊れたおもちゃや、欠けた木の椀。糸車、なにかの棒のようなもの。

そして、

俺はガラクタの中に、錆びついた糸切りハサミを見つけた。

これなら、錆を落として売れば、多少のお金になるだろう。

そうしたら、そのお金を親方に渡せば、目をつぶってくれるだろう。

そう思った。


「わかった。それを貰う。あと手伝ってくれるか?明日井戸の掃除が終わったら仕事をする」

と俺は言った。


「もちろんよ」

と少女はようやく微笑んだ。


知らない少年と、慣れない交渉で緊張してたのだろう。

その笑顔はとても、可愛らしいものだった。


俺は見送られながら、村長の家まで帰る。

俺は村長に先ほどあった事を説明した。


「あの子たちは、皆戦争で親を亡くした子供たちなんや。

うちの村も余裕がなくてな。

村としては、あの場所を貸してやるくらいしかできん。

お前さんが、手を差し伸べてくれて助かるわ」

と村長は力なく笑った。


……


俺は早朝から井戸の掃除を行い、掃除を終わらせた。

後は定期的に水を汲み捨て、しばらく使わないように話をした。


少女がやってくる。


「仕事は終わった」

と少女は尋ねた。


「あぁ。では村長さん。この子たちの家を修理してきます」

と俺は言った。


「あぁ頼むわ」

と村長は答えた。


俺は孤児たちを連れ、川に向かい、粘土を取った。

粘土があるという事に皆驚いていた。


孤児たちの家に帰ると、早速俺は石と粘土で補修を始める。

外から光が漏れているところを探し、埋めていく。

あちこちに穴が空いていたが、30分ほどで仕事は終わった。


「できたよ」

と俺は言った。


孤児たちは家に入り、スキマ風が入らない事に喜んだ。


「あなたすごいわ。ありがとう。これでぐっすり眠れるわ」

と少女は言った。


「それは良かった」

と俺は答えた。


家から外に出ると、数人の村人が様子を見に来ていた。

村人は家に入り、スキマ風が入らないことに驚いている。


「坊や。これはあんたがやったのかい」

と老婆は尋ねた。


「そう。この子がやったの」

と少女は言った。


俺はうなづいた。


「うちもやってくれないか」

と老婆は尋ねた。


俺は頭をかく。


「もちろん報酬はちゃんとお金で払う」

と老婆は言った。


他の村人も、話に乗ってきた。


「親方に聞いてみないとわからないんですが、ちょっと村長と相談してみます」

と俺は答えた。


俺は急いで村長に相談した。


「悪いが、受けてやってくれんか。親方には俺が上手く言っておく。しばらく滞在する許可も取るし、お金も俺が受け取って、親方にまとめて支払うから」

と村長は答えた。


そういう事なら、

大丈夫そうだと俺は思い、

礼を言い、順番に作業に取り掛かった。


3日ほどで、村全部の壁の補修が完成した。


俺が壁を修理したお陰で、ずいぶん暖かくなったと、多くの村人に感謝された。

人生でこんなに感謝される日が来るとは思ってもなく、

嬉しくて、嬉しくて、隠れて泣いた。


警戒していた孤児たちとも、ずいぶん仲良くなって、色んな事を教えてもらった。

食べれる木の実や、カエルや蛇、魚や虫の食べ方。

文字は読めないが、生きるための知恵を持っていた。

皆やせ細ってはいたが、

虚ろな目をする街の孤児とは違い、イキイキとした顔をしとった。


俺はうれしく思う反面、少し胸が苦しくなった。

前世での自分があまりにも豊かだったことに、

なにかを感じたんやろう。


そして、俺は今荷馬車に揺れている。

親方の元に戻れることが、とても嬉しかった。

そして、

自分の勝手な行動に怒られやしないかと、

そういう不安も持っていた。


それは捨てられる恐怖やったんかもしれん。


でも反面、

安心感があったのは、

マドゥ親方と金蔵が重なって見えていたのかもしれへんな。


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