ゴミ屋のドム
身分証を作ってから一月が過ぎた。
「ティコ。これから街に行ってこい」
と親方は言った。
「はい。お使いですか?」
と俺は答えた。
「なんか、自分で受けられる仕事がないか探してこい」
と親方は言った。
「そんなんイキナリムリですよ」
と俺は答えた。
「大丈夫や。あのな……、お前ができる仕事やったら、タダで受けても良い。それを餌に仕事釣ってこい」
と親方は背中を叩いた。
俺はパンとハーブ水、そして道具を持って、街に行かされる。
子供の俺には広い街。
どこを当たればいいか……、
見当すらつかない。
「修理の仕事いりませんか」
と俺は広場で言った。
誰も聞いてもくれない。
「修理の仕事いりませんか」
と俺は叫んだ。
ちらっと大人が横目で見るが、
すぐに通りすぎていく。
「修理の仕事いりませんか」
何度言っても、誰も声もかけてくれない。
身分証を持ったのに、
広場ではただの子供だった。
仕事を取るのって大変なんだと……。
そう気が付いた。
やはり親方の信用がなければ、
誰も相手にしてくれない。
俺はあちこち歩き回って、
宣伝した。
しかし誰も立ち止まってくれなかった。
諦めかけたころ、
道の端で、
何かを売っている少年を見かけた。
近くに寄ってみると、
片方だけの靴とか、
穴の開いた服、
壊れたおもちゃなどを並べていた。
「ねぇ。
君は何を売ってるの」
と俺は尋ねた。
「見て分かんねぇのか?商品だ」
と少年は答えた。
「でも壊れている」
と俺は言った。
「そうだ。拾いものだからな」
と少年は答えた。
「売れるの?」
と俺は尋ねた。
「値段が安いからたまには売れる。でも多くはない」
と少年は言った。
「例えば、修理してあったら高く売れる?」
と俺は尋ねた。
「そりゃそうだ。修理してあったら、買う人も増える」
と少年は言った。
「じゃあ、なんで修理しないの?」
と俺は尋ねた。
「売れるかどうかわかんないものを、修理なんてできない。修理代金を払えない」
と少年は答えた。
「自分では修理しないの?」
と俺は尋ねた。
「モノを売るのは得意だけど、修理は苦手だ。不器用なんだ」
と少年は頭をかいた。
「あのさ、俺修理できるんだけど。もし商品を修理して、高く売れたら、修理代金を支払ってくれる?」
と俺は尋ねた。
「それはいいけど、でも売れるかどうかわからないんだぞ」
と少年は不思議そうに言った。
「うん、わかってる。俺は修理屋の修行中なんだ。修理するものは沢山あったほうが良い。
君の商売手伝わせてくれないかな?」
と俺は尋ねた。
「本当にいいのか?俺は孤児で家無しだぞ」
と少年は言った。
「俺も孤児だし、前は家無しだった。今は親方の元で住み込みで修行してる」
と俺は答えた。
「親方には怒られねぇか?」
と少年は心配そうに言った。
「親方が仕事を探してこいって言ったから、大丈夫だと思う」
と俺は答えた。
「そうか……、じゃあやろう。俺はドム、ゴミ屋のドム」
と少年は手を差しだした。
「俺はティコ。修理屋のティコ」
と俺はドムと握手をした。
(ぐー)
ドムの腹が鳴る。
「ドム。お腹空いた?」
と俺は尋ねた。
「今日はまだ何も食ってねぇからな」
とドムは言った。
「パンを持たせてもらったから、半分ずつしよう。ハーブ水もあるし」
と俺はパンを半分に切って手渡す。
「お前が食えよ。お前のもんだろ」
とドムは言った。
「じゃあ。俺は半分しか食わないから、もしよかったら食べない?」
と俺は尋ねた。
「そういう事なら食うよ。ありがとな」
とドムはパンにかぶりつく。
パンを食い終わり、話は商売のことになった。
「修理はどうする?」
と俺は尋ねた。
「モノを預けるのも、ちょっと不安かな。ガラクタでも俺にとっては財産だから」
とドムは頭をかいた。
「じゃあ。ここで直そうか」
と俺は答えた。
「そんなのできるのか」
とドムは言った。
「できるよ。貸してみて」
と俺はドムから穴のあいた服を受け取り、裁縫道具で修理しだした。
穴が多かったので、手間取ったが、30分ほどで修理は完成した。
「お前すげぇ器用な男だな」
とドムは言った。
「そっちのおもちゃは材料がないから、修理できないや。
材料が手に入ったら、修理する」
と俺は言った。
「材料ってどんなのを使うんだ?」
とドムは尋ねた。
「木切れとか、だいたいゴミを再利用して作れるよ」
と俺は言った。
「だったら、ついてきてくれ」
とドムは言った。
ドムは歩いて10分ほどの廃墟に俺を案内した。
「ここだ。ここで材料を調達してくれ」
とドムは言った。
そこにはゴミの山があった。
「これなら材料に困らなさそうだね」
と俺は言った。
「あぁゴミの山だけど、俺らにとっては宝の山だ」
とドムは笑った。
俺は材料を調達し、ドムが店を出していたところに戻る。
俺が脇で修理をしドムが店をやる。
すると、先ほどの洋服が高値で売れそうになる。
「あの……、それは俺が修理したやつです。ココと、ココと、ココを修理しました」
と俺は言った。
「本当だな。ボウズ修理上手いな。修理してあるとはいえ、この値段なら安い。貰うよ」
と男は言った。
「ありがとうございます」
と俺は言った。
ドムはお金を受け取り、商品を手渡す。
お客がいなくなった後、ドムは言った。
「あんなもの。言わなければバレないだろ」
「それはダメだ。お客さんに嘘をつくことになるし、俺の腕も売れない。
修理品だということを黙っているなら、俺は手伝わない」
と俺は言った。
「冗談だよ。
もちろん、嘘は良くない。
よし、じゃあ修理品ってことで始めから売ろう」
とドムは言った。
「うん。それが良い。じゃあ看板を作ろう」
と俺は言った。
俺はおもちゃの修理を仕上げ、
廃墟に戻り、看板の材料を手に入れ。
再びドムのところへ戻った。
俺が看板を作っていると、
また商品が売れていた。
「お前すげぇな。過去最高の売上だ。これ取り分だ」
とドムは俺の取り分を手渡してくれた。
俺は今後のやり取りを話しつつ、
親方のもとへ帰ることにする。
「どれくらい修理品が出せるかは、親方の仕事の手伝いの量にもよるけど、がんばるよ」
と俺は言った。
「頼むぜ相棒。冒険しようぜ」
とドムは手を振った。
身分証、親方、相棒、そして技術。
ただのスリで透明人間だった俺が、
こんなにも沢山の宝物に恵まれるなんて。
神様は本当にいるんだな。
そう思った。
遠くで猫が鳴いていた。
END
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この作品は完結していますが、
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